QPS研究所、「ワダツミ-Ⅱ」打ち上げ成功 既存の軌道面でSAR衛星網を増強

(I-qps.net)[写真拡大]
福岡市のQPS研究所(iQPS)が開発した小型SAR衛星QPS-SAR20号機「ワダツミ-Ⅱ」が、2026年11月3日午前1時41分(日本時間)、米Rocket LabのElectronロケットで打ち上げられた。10号機「ワダツミ-Ⅰ」と同じ軌道面に加わる衛星で、同社は初交信とアンテナ展開の成功を発表した。
続く19号機「ヤマツミ-Ⅱ」は、11月5日時点で11月14日以降に打ち上げられる予定だ。既存の軌道面への衛星追加を進め、準リアルタイムの地球観測データ提供に向けた衛星網を拡充する。
■「ワダツミ」の軌道面に2機目を投入
20号機はニュージーランド・マヒア半島の発射場Launch Complex 1から打ち上げられた。ミッション名は「The Sea God Surveys(海の神が見渡す)」で、Rocket Labによると、高度575km、軌道傾斜角42度の低軌道へ投入された。
QPS研究所によると、衛星は打ち上げから約50分後にロケットから分離し、その約30分後に初交信に成功した。各機器の動作と良好な健康状態を確認し、同日早朝には収納型アンテナを展開した。今後は調整を続け、初画像の取得を目指す。
同じ軌道面を周回する10号機は、2025年5月17日に打ち上げられた衛星だ。同社は同年6月9日に最初の試験観測画像を公開し、9月から商用運用を開始している。同一軌道面に衛星を追加することで、対象地域を観測できる機会を増やしていく。
QPS-SARの愛称には日本神話の神々の名が使われ、商用機となる3号機以降は軌道ごとに共通の名を付けている。海を守る神にちなむ「ワダツミ」の名は20号機にも引き継がれた。衛星のマークには、海や港湾、街を見守る思いが込められている。
■19号機の打ち上げと観測網の拡張計画
19号機のミッション名は「The Mountain God Rises(山の神が昇る)」だ。同じLaunch Complex 1から打ち上げられ、高度575kmの中傾斜軌道に投入される予定で、11号機「ヤマツミ-Ⅰ」と同じ軌道面の2機目となる。打ち上げ予定日は11月3日の発表で11月14日以降に更新された。
20号機が19号機に先行したのは、衛星番号が打ち上げ契約の締結順に付けられているためだ。QPS研究所は、20号機を16・17・19号機より先に打ち上げると公表していた。番号の順序と実際の打ち上げ順序には、このような違いが生じる。
親会社のQPSホールディングスによると、20号機は商用機として13機目の打ち上げ成功となった。また、2026年10月14日の決算説明資料では、初期運用中の13号機と18号機を含め、軌道上で11機を運用していると説明していた。20号機も初期運用を進め、観測網への参加を目指す。
同社は2028年5月末までに24機、2030年に36機体制を構築する計画を掲げている。従来は12の軌道面に各3機を配置する構想を進めてきたが、現在は独自の傾斜軌道を軸に、36機を超える規模への拡張も計画する。世界中のほぼどこでも、特定地域を平均10分間隔で観測できるサービスが目標だ。
■夜間や悪天候時の観測を支えるSAR
SARは合成開口レーダーの略で、衛星から地表へマイクロ波を照射し、戻ってくる反射波を処理して画像を作る技術だ。反射した太陽光を捉える可視光の光学観測と比べ、夜間や雲に覆われた地域でも観測できる点に強みがある。
高い分解能を生むのは、衛星の移動を利用する合成開口処理である。移動しながら異なる位置で受信した反射波について、位相の違いを補正して組み合わせる。これによって、実際より長いアンテナで観測した場合に相当する効果を得て、衛星の進行方向の分解能を高める。
QPS研究所によると、QPS-SARは100kg台の小型衛星で、高精細なスポットライトモードでは進行方向、直交方向ともに46cmの分解能を実現する。このモードは衛星の姿勢を変えながら同じ地点を観測する方式で、対象を細かく捉えるために用いる。
小型化を支えるのが、軽量で折り畳み可能な大型アンテナだ。同社は、従来型SAR衛星との比較で質量を約20分の1、コストを約100分の1にしたと説明する。小型・低コストの衛星を多数配置し、衛星群全体で観測機会を増やすことが、コンステレーション構想の基盤となっている。
■Rocket Labとの契約と構築資金
今回のミッションは、Rocket LabがQPS研究所向けに実施した10回目のElectron専用打ち上げとなった。同社によると、2023年12月に始まったQPS研究所向けの打ち上げは、10回連続で成功している。
両社は複数回の打ち上げ契約を重ねてきた。2025年2月には、同年に6回、翌年に2回を予定する計8回の専用打ち上げ契約を発表し、2026年7月の追加契約で累計18回となった。Rocket Labの今回の発表では、今後8回の専用打ち上げが契約済みとしている。
Rocket Labによると、QPS研究所向けの全ミッションでは、衛星分離装置「Motorized Lightband」も購入されている。専用打ち上げは、他の衛星と相乗りする方式に比べ、投入軌道や打ち上げ時期などを顧客の計画に合わせやすい点が特徴だ。
QPS研究所の衛星配備には、過去に損失もあった。2022年10月12日には、3号機「アマテル-Ⅰ」と4号機「アマテル-Ⅱ」が、JAXAのイプシロンロケット6号機の打ち上げ失敗で失われた。その後も衛星の製造と打ち上げを継続している。
資金面では、QPSホールディングスが2026年3月23日、スカパーJSAT、ミツウロコグループホールディングス、三井住友海上火災保険の3社を引受先とする第三者割当増資を実施した。払込総額は152億4240万円で、同社は衛星の製造・打ち上げ費用などに充てるとしている。
Rocket Labの創業者兼CEOのピーター・ベック氏は、2025年12月の発表で、2026年にはコンステレーション向けの複数回打ち上げなどを通じてElectronの事業を広げる方針を示していた。QPS研究所との継続的な契約も、その展開を支える案件となっている。
■地上局網とデータ提供体制も整備
衛星による観測から顧客へのデータ提供までの時間を短くするには、地上との通信機会も重要になる。QPS研究所とノルウェーのKongsberg Satellite Services(KSAT)は、2026年6月3日、長期的な提携の拡大を発表した。
KSATによると、QPS研究所は今後の衛星網拡張に向け、小型衛星や大規模コンステレーション向けの自動化された地上局サービス「KSATlite」を選定した。KSATは世界各地の地上局網を通じて、迅速な取得が求められるデータの伝送を支援する。
KSATの地上局網は、高緯度地域に加え、低・中傾斜軌道の衛星との通信に適した各地の拠点で構成されている。衛星の運用や観測データの受信を支える地上設備を確保することも、観測頻度の向上と並行して進める必要がある。
データの提供先には防衛分野も含まれる。QPSホールディングスは2026年2月、防衛省の「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」における画像データ取得業務の委託契約を締結したと発表している。衛星の追加配備と地上側の体制整備を重ね、昼夜や天候の影響を受けにくいSAR観測データの供給力を高めていく。
元記事: Rocket Lab Launches iQPS Radar Satellite Into Already-Occupied Orbit for First Time
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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