豪州の暗号資産ライセンス制度、2027年4月施行へ ASICが運用基準案

2026年10月18日 14:07

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記事提供元:Tech Times

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オーストラリア証券投資委員会(ASIC)は2026年10月15日、暗号資産取引所などに適用する資本要件や顧客資産の保管基準に関する協議文書「CP 392」を公表した。資本要件では3つの代替案を示し、一部の事業者に1400万豪ドル(約15億4000万円)以上の純有形資産を求める案を盛り込んだ。

協議は2026年11月27日午後5時(オーストラリア東部夏時間、日本時間同日午後3時)まで受け付ける。新制度の施行は2027年4月8日で、ASICは同年3月に最終的な基準とガイダンスを公表する予定だ。

■顧客資産を預かるプラットフォームを金融規制の対象に

制度の根拠となる「Corporations Amendment (Digital Assets Framework) Act 2026」(DAF法)は、2026年4月1日に議会を通過し、4月8日に裁可を受けた。会社法を改正し、デジタル資産プラットフォーム(DAP)とトークン化カストディプラットフォーム(TCP)という2つの金融商品区分を設ける。

DAPは、顧客に代わってデジタルトークンを保有し、関連サービスを提供する仕組みだ。TCPは、顧客のために保有する原資産に対する権利をデジタルトークンとして記録する仕組みで、証券や商品などのトークン化に関わる。

対象事業者には、必要な認可を付したオーストラリア金融サービス(AFS)ライセンスの取得や変更申請、顧客向け説明文書とプラットフォーム規則の提供を求める。CP 392は、これらの義務に加え、資産保管、取引・決済、財務要件を具体化するものだ。

ASICは、既存のAFSライセンス保有者や、従来のデジタル資産ガイダンス「INFO 225」に対応して認可を申請した事業者が、DAP・TCPの認可を追加する際の手続きを簡素化する方針も示した。事業者は自社の保管方法や取引モデルに応じて、必要な認可を検討することになる。

■資本要件は3つの代替案、保管方法で必要額が変わる

資本要件の中心は、純有形資産(NTA)をどれだけ維持するかという点にある。ASICは、投資家が資産の保管や管理を委ねる既存の金融サービス制度を踏まえ、事業継続の費用、リスク管理、秩序ある事業清算を支える財務基盤を求める。

モデル1では、第三者保管に関する条件を満たさない事業者に、1400万豪ドル(約15億4000万円)と平均収益の10%のうち大きい額以上のNTAを要求する。モデル2では、保管する原資産が常に金融商品に該当しない事業者について、700万豪ドル(約7億7000万円)と平均収益の10%のうち大きい額とする区分を加える。

モデル3は、200万豪ドル(約2億2000万円)、平均保管資産額の0.5%に相当する額(この計算部分は1400万豪ドル(約15億4000万円)が上限)、平均収益の10%のうち最大の額を基本とする。これに、代理執行や取引の場の運営、顧客との相対取引といった活動に応じた額を加算する構成だ。

3案に共通する第三者保管の軽減措置では、20万豪ドル(約2200万円)、平均保管資産額の0.5%に相当する額(この計算部分は700万豪ドル(約7億7000万円)が上限)、平均収益の10%のうち最大の額以上を求める。適用には、原資産のすべてを第三者が保管することに加え、保管先の財務要件の充足に関する書面や監査報告などの条件がある。

ASICは、基準額を消費者物価指数に連動させて毎年調整する案も示している。どのモデルを採用するかにより必要資本や外部保管の利用判断が変わるため、協議では競争への影響や対応費用についても情報を募る。

■小規模事業者の免除と海外制度との比較

DAF法には、小規模なDAPの発行についてライセンス取得を免除する規定がある。同じ関連グループの対象プラットフォーム全体で過去12カ月の取引総額が1000万豪ドル(約11億円)以下であることと、顧客ごとの受入時評価額の合計が5000豪ドル(約55万円)以下であることの両方を満たす必要がある。

さらに、対象プラットフォームで金融商品を保有していないことや、免除を利用する旨をASICに届け出ることも条件となる。小規模事業者にとっては、この免除の適用範囲と、各資本要件案に必要な資金を確認することが重要になる。

ASICのアラン・カークランド委員は、今回の発表で「同じ活動、同じリスク、同じ規制上の結果」という原則を掲げた。消費者擁護団体CHOICEで11年間最高経営責任者を務め、2023年11月にASIC委員に就任した同氏は、イノベーションや投資、成長の促進と、消費者保護の両立を図る方針を示している。

ASICは、EUの暗号資産市場規則(MiCA)やシンガポール、香港などの制度も検討している。MiCAの恒常的な最低資本額はサービス区分に応じて5万、12万5000、15万ユーロで、前年の固定費の4分の1と比較し、大きい額に相当する財務上の備えを求める。自己資本、保険、または両者の組み合わせで要件を満たす仕組みだ。

オーストラリアの提案は、既存の金融サービス規制との整合性を重視する。ASICは、海外制度との比較に当たり、最低額に加えて算定方法や規制の目的、継続的な監督の仕組みを考慮している。

■ウォレット情報の四半期報告、海外保管の緊急対応も論点に

保管基準案は、顧客資産と事業者自身の資産の分別、正確な記録、残高の照合、外部保管先の監督などを求める。顧客資産は信託などの法的な仕組みで保有し、破綻時の保護や顧客の権利を確保する設計だ。

ウォレットについては、その役割や相互関係、アドレス、保有するトークンの種類と数量などを記録する。関連記録は少なくとも7年間保存し、四半期末から10営業日以内に、ウォレットの構成やアドレスなどをASICへ報告する案となっている。

秘密鍵は、デジタル資産の移転を承認するための重要な情報であり、保管場所やアクセス管理は顧客資産の安全性に関わる。ASICへ提出するウォレット報告は構成やアドレスなどを対象とし、秘密鍵やシードフレーズは提出対象から除外される。

ASICは、資産をオーストラリア国内で保管することを義務付けず、保管方法や所在地、国境をまたぐリスク管理を重要な開示事項とする方針だ。海外の親会社や関連会社が破綻した場合などに、国内事業者が秘密鍵へ緊急アクセスできる仕組みについても意見を募る。

緊急アクセスには顧客保護上の利点がある一方、運用の複雑化や国内の管理責任者が負うリスクも伴うとASICは説明する。外部保管を利用する場合も、プラットフォーム運営者が保管先を評価し、継続的に監督する責任を負う設計となっている。

■自己勘定取引の制限で利益相反に対応

取引・決済基準案では、注文を照合するDAPの運営者とその関係会社が、自社や関係会社のプラットフォームを通じて自己勘定で売買する行為を制限する。取引の場を運営する立場と、自ら売買する立場の間に生じる利益相反に対応するものだ。

顧客の代理として注文を執行する場合や、顧客が運営者を取引相手に指定する場合などには例外を設ける。取引の場の提供、顧客注文の代理執行、相対取引という事業モデルの違いに応じて、規律を適用する考え方だ。

暗号資産事業者の破綻は、オーストラリアでも顧客保護を巡る課題となってきた。ASICによると、FTX Australiaと子会社FTX Expressは2022年11月11日に任意管理手続きに入り、ASICは同月16日にFTX AustraliaのAFSライセンスを停止した。

規制の影響は個人投資家や年金資産にも及ぶ。Financial Standardが2026年7月に報じたInvestment Trendsの調査では、オーストラリアの暗号資産保有者は推計237万人だった。また、監査会社Superannuation Audit Servicesが豪国税庁の統計をまとめた資料によると、自己管理年金基金(SMSF)の暗号資産保有額は2026年6月時点で約50億1000万豪ドル(約5510億円)となっている。

■既存制度への対応と2027年の移行期間

既存法への対応では、ASICは2025年10月29日から、一定条件の下で無認可営業に関する措置を見送るノーアクション方針を設けていた。2026年9月30日は、この方針を利用するためにライセンス申請や所定の手続きなどを済ませる期限だった。

期限までに申請し、対象サービスや営業開始時期、個人顧客向けの苦情処理機関への加入などの条件を満たす事業者には、審査中も方針が適用される。ASICによると、デジタル資産関連の金融サービスを提供するための申請は140件を超え、このうち110件超を2025年10月から2026年9月30日までの間に受け付けた。

DAF法による新制度では、2027年4月8日に対象プラットフォームを運営している既存事業者に、同年10月7日までの申請期間を設ける。期限までにAFSライセンスの取得または変更を申請すれば、ASICが審査する間も営業を継続できる。

必要なライセンスを取得せず、適用可能な免除や移行措置もないまま金融サービスを提供すれば、会社法上の制裁対象となる。法人の民事制裁金上限は、5万罰則単位、得た利益と回避した損失の合計の3倍、年間売上高の10%のうち最大の額で、売上高基準には250万罰則単位の上限がある。2026年10月時点の1単位364豪ドル(約4万円)では、それぞれ1820万豪ドル(約20億円)、9億1000万豪ドル(約1000億円)に相当し、違反内容によっては個人への刑事罰もある。

CP 392の提案は意見募集を経て最終化される。政府は決済制度改革の一環として一部のステーブルコインを別途規制する作業も進めており、ASICは政府側の制度設計と並行して基準を整える予定だ。

元記事: ASIC Sets A$14M Crypto Capital Bar, Flags Offshore Private Key Risk Unresolved

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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