原油高に輸送費上昇が追い打ち 大型タンカー運賃急騰、IEAはディーゼル逼迫警告

中東情勢の緊迫化に伴うタンカー運賃の高騰が、原油を実際に購入して輸送する際のコストを押し上げている。[写真拡大]
原油市場では、中東情勢の緊迫化に伴うタンカー運賃の高騰が、原油を実際に購入して輸送する際のコストを押し上げている。米国からアジアへ向かう一部の大型原油タンカーでは、輸送費が原油1バレル当たり約38ドルに達する例も報じられている。
■米国から中国、タンカー1隻7600万ドル
米メディアの報道によると、米メキシコ湾岸から中国に向かう大型原油タンカー(VLCC)が10月上旬、7600万ドル(約120億円)で用船された。VLCCは約200万バレルの原油を運べるため、単純計算では輸送費だけで1バレル当たり約38ドル(約6000円)となる。
同様の航海にかかる費用は1年足らず前と比べて大幅に上昇している。CNBCは、米国から韓国に向かう別の大型原油タンカーも7700万ドル(約122億円)で契約されたと報じた。
こうした個別契約は、金融市場に表示される原油先物価格と、実際に原油を購入して目的地まで届けるためのコストとの間に大きな差が生じ得ることを示している。
国際エネルギー機関(IEA)が10月14日に公表した石油市場月報によると、北海ブレント原油先物は9月初めから約13%上昇し、月報執筆時点で1バレル約107ドルとなった。
一方、北海産原油の現物価格指標である「North Sea Dated」は同じ期間に43%上昇し、約134ドルに達した。他の北海産原油には1バレル160ドル近くで取引されたものもあった。
IEAは、中東での戦闘再激化に伴う供給混乱、アジアの製油会社による購入増加、タンカー運賃の急上昇が現物価格を押し上げたとしている。
North Sea Datedの9月平均価格は1バレル116.89ドルで、8月から26.17ドル上昇した。ただし、現物原油と先物価格の差には、輸送費だけでなく、需給、原油の品質、受け渡し条件など複数の要因が含まれる。
■VLCC運賃は最高値から低下、それでも歴史的高水準
一部の主要航路ではタンカー運賃が直近の最高値から低下したものの、依然として極めて高い水準にある。
ロイター通信がバルチック海運取引所のデータとして報じたところによると、オマーン湾から中国へ原油を輸送するVLCCの運賃は、ワールドスケール指数で前週の過去最高841から今週は約776に低下した。
ワールドスケールはタンカー市場で使われる運賃指標であり、1航海当たりの総輸送費をドルで直接示すものではない。
中東で商船への攻撃が再び増えた後、この航路で船舶需要が減少したことなどが運賃低下につながった。西アフリカからアジアへの航路でも運賃は低下した。
それでも、船舶の安全確保への懸念や航路の長距離化、利用可能なタンカー不足を背景に、原油輸送費は戦争前を大きく上回っている。
米エネルギー情報局(EIA)も10月の短期エネルギー見通しで、中東海域を航行するタンカーのリスク上昇が輸送費や保険料を押し上げていると指摘した。紛争地域を避けるために遠回りする船もあり、その結果、追加輸送に使える船舶が減少している。
■ホルムズ海峡の石油輸送は1090万バレルに回復
IEAによると、9月には湾岸産油国が輸出を増やし、オマーン湾での船舶間(STS)積み替えも活発になったことで、ホルムズ海峡を通過する石油の流量は前月から日量370万バレル増え、日量1090万バレルとなった。
湾岸産油国からの原油輸出は日量440万バレル増の1390万バレルとなり、戦争前の75%を超える水準まで回復した。
一方、地域のエネルギーインフラへの攻撃は続いている。
ホルムズ海峡を通過せずに原油を紅海側へ輸送できるサウジアラビアの東西パイプラインは、9月の攻撃で一時停止した。
EIAによると、攻撃前には同パイプラインを通じ、紅海沿岸のヤンブー港から日量500万バレルを超える石油が輸出されていた。
■高騰する輸送費、欧州・アジア製油会社の採算を圧迫
原油輸送費の上昇は、原油からガソリンや軽油、ジェット燃料などを生産する製油会社にも影響している。
IEAは、記録的な輸送費と原油調達費が欧州とアジアの製油会社の利益率を大幅に圧迫したとしている。一方、米国の製油会社は相対的に割安な原油を調達できることで恩恵を受けた。
なかでもディーゼル市場では、中東とロシアからの輸出減少による供給逼迫が深刻である。
9月の世界のディーゼル輸出量は前年同月を日量約70万バレル下回った。中東とロシアからの供給減少を他地域からの輸出増加だけでは補えなかった。
9月中旬にはシンガポールのディーゼル卸売価格が1バレル200ドルを超え、欧州と米国では約220ドルと過去最高を記録した。
その後は下落したものの、IEAによるとディーゼル価格の指標は依然として危機前の約2倍の水準にある。
■IEA加盟国、原油3億3000万バレルを放出
各国政府は供給不足への対応として、緊急石油備蓄の放出を進めている。
IEAは15日、3月に決定した協調行動に基づき、加盟国がこれまでに約3億3000万バレルの石油を放出したと発表した。
未放出分は約1億バレルあり、加盟国は各国の事情に応じて放出を加速する方針である。一部加盟国が当初の約束を上回る量を放出することなどから、最終的な放出量は当初予定の4億バレルを上回る見込みとなっている。
また、需給逼迫が特に深刻なディーゼルについて、2000万バレルを超える量を早期に放出する計画も示した。
世界の確認可能な石油在庫は9月に1000万バレル減少した。IEAによると、9月末時点の在庫は2月末を5億900万バレル下回っている。
IEAは、製油所の操業や生産、国際貿易の混乱が長期化していることから、世界のディーゼルなど中間留分の需給逼迫は2027年に入っても長く続くとみている。失われた在庫が本格的に回復するのは2027年後半以降になる可能性があるとしている。
※この記事はInternational Business Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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