『ゴジラ-0.0』の予告編に重ねる科学 チェルノブイリの菌類から再生生物学まで

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9月8日に最新予告が公開された『ゴジラ-0.0』は、前作『ゴジラ-1.0』から2年後の1949年を舞台に、再び現れたゴジラと人々の戦いを描く。予告編に映る放射線、再生、空中へ持ち上がる建造物、画面いっぱいに迫る巨大な姿には、現実の科学と発想を重ねられる要素がある。放射線環境で成長が促進された菌類や動物の組織再生、広視野映像に対する脳の反応を手掛かりにすると、作品の映像と設定を別の角度から読み解ける。
■放射線を「資源」に変える菌類
ゴジラは1954年の第1作以来、核兵器と放射線がもたらす脅威を怪獣の姿に託してきた。『ゴジラ-1.0』でも、戦時中の大戸島に現れた生物がビキニ環礁の核実験を経て巨大化し、放射熱線を放つ存在となる。『ゴジラ-0.0』では、前作の終盤で破壊されたはずのゴジラが生き延びていたことが予告編で示されている。
放射線を浴びた生物が成長するという発想を連想させる研究の一つが、メラニンを持つ菌類を使った2007年の実験である。研究チームは、電離放射線を受けたメラニンの電子的性質が変化し、電子移動能力が高まることを報告した。
実験では、メラニンを持つCryptococcus neoformansとWangiella dermatitidisを通常環境の約500倍の放射線下に置いたところ、放射線を照射しなかった菌やメラニンを作れない変異体よりも成長や代謝活動が増加した。Cladosporium sphaerospermumでも、栄養が限られた条件で放射線による成長促進が確認された。
この成果は、放射線のエネルギーがどのような生化学経路を通じて成長へ結び付くかを完全に解明したものではない。一方で、通常なら生物に損傷を与える電離放射線が、メラニンを持つ菌類の代謝や成長に利用される可能性を示している。放射線を単なる障害ではなく、生物が取り込める資源として描くゴジラの設定に、興味深い生物学的イメージを重ねられる研究である。
■ビキニ環礁の核実験が残した汚染
『ゴジラ-1.0』でゴジラの巨大化に結び付けられたのは、米国が1946年にビキニ環礁で実施したクロスロード作戦である。同作戦では7月1日のエイブル実験と、7月25日のベーカー実験が行われた。
ベーカー実験は約21キロトン級の核爆弾を水深約27メートルで爆発させる水中実験だった。海水と海底の物質を大量に巻き上げ、標的艦を広範囲に放射性物質で汚染した。残存艦の除染は難航し、計画されていた3回目の深水実験は中止された。
現実の生物には、放射線などによるDNA損傷に対処する能力がある。なかでも細菌のDeinococcus radioduransは、損傷したゲノムを効率よく修復する仕組みにより、強い放射線耐性を示すことで知られる。
菌類によるエネルギー利用と細菌のDNA修復は、それぞれ異なる現象である。それでも、放射線の影響を受けながら活動を維持する適応機構という共通点は、ゴジラが核実験を経て巨大化し、活動を続ける設定を考える補助線になる。作品は、こうした個別の生物学的能力を怪獣の規模まで大胆に拡張している。
■細胞から体を組み直す再生の仕組み
『ゴジラ-0.0』の予告編は、『ゴジラ-1.0』終盤で示唆されたゴジラの再生を物語の重要な要素として扱っている。田中泯が演じる生物学者の村上寛治も登場し、ゴジラの組織をめぐる研究が対策の一部になることがうかがえる。
現実の再生研究で代表的な生物がプラナリアである。プラナリアは体内にネオブラストと呼ばれる成体幹細胞を持ち、小さな組織片から失われた頭部や尾部、内臓などを再形成できる。
単一細胞の移植実験では、クローン形成能力を持つネオブラストを、放射線照射によって幹細胞を失った個体へ移植すると、移植細胞がさまざまな細胞型を生み出し、個体の再生能力を回復させることが示された。再生には細胞を増やすだけでなく、頭尾や左右、各器官の位置を正しく決める情報処理が必要となる。
ウーパールーパーも、切断された四肢を骨、筋肉、神経などを含む形で再生する。切断面には芽体と呼ばれる細胞集団が形成されるが、その構成細胞はすべてが同じ万能状態へ戻るわけではない。組織の由来を保った複数の前駆細胞が協調し、位置情報に沿って失われた部分を作り直す。
ゴジラの再生描写とこうした研究に共通するのは、残された細胞から必要な組織を作り、全体の形を再構成する情報処理の構造である。どの細胞を増やし、どこに配置し、いつ成長を止めるかという問題は、作中の科学者がゴジラを理解し、対策を考えるうえでも重要な鍵になりそうだ。
■空へ引き上げられる建造物と物理学
最新予告には、建造物やがれきが空中へ持ち上げられ、黄金色の光が降り注ぐ場面がある。公式発表はポスターと予告編に「謎の青いエネルギー」と「上空から降り注ぐ金色の光」が描かれていると説明しているが、それを発生させている存在や具体的な原理は明らかにしていない。
物体を浮かせる技術には、磁気浮上や音響浮揚、空気中のイオン移動を利用する電気流体力学的な推力などがある。いずれも重力そのものを消すのではなく、重力と反対向きの力を別の方法で加えている。
磁気浮上では、磁場と電流の相互作用を使って物体を支える。音響浮揚では、音波が作る圧力場によって小さな物体を空中に保持する。こうした技術は、力を制御して物体の位置を変えるという点で、予告編の浮揚表現を読み解く手掛かりになる。
反物質が重力に反発するという考えも長く検討されてきたが、CERNのALPHA共同研究チームは、磁気トラップから解放された反水素原子が地球方向へ落下することを観測した。物体が上方へ移動する予告編の表現を考える場合、反物質による重力反発よりも、未知の装置やエネルギー場が物体へ上向きの力を加えているという映像的なイメージの方が、現実の物理学と発想を重ねやすい。
■広い視野が生むIMAXの没入感
『ゴジラ-0.0』は、邦画として初めて「Filmed For IMAX」の認定を受けた作品である。IMAX認証デジタルカメラで撮影され、IMAX上映向けに映像と音響が最適化された。最新予告には、一部の場面で画面が上下に広がり、1.43対1のアスペクト比になる映像も含まれている。
広い視野が人間の視覚系にどのような反応を生むかを調べた研究では、最大175度の映像を湾曲スクリーンへ投影し、機能的磁気共鳴画像法で脳活動を測定した。その結果、中心部だけに画像を提示した場合に比べ、視野の遠い周辺まで映像を広げると、周辺視野を好む内側皮質の領域が強く反応した。
この研究はIMAX上映を直接調べたものではなく、特定の映画形式が臨場感を生むと証明したものでもない。それでも、視野の広い範囲へ映像を提示すると、中心視野だけを使う映像とは異なる脳領域が動員されることを示している。
上下方向を含めてゴジラの全身や破壊される都市を大きく映す1.43対1の画面は、観客の周辺視野へ働きかけやすい。巨大さを数字として理解させるだけでなく、ゴジラと同じ空間にいるような感覚を映像によって構築するうえで、IMAXの広い画面が重要な役割を担う。
■1949年という歴史的な転換点
『ゴジラ-0.0』の舞台は1949年である。日本は連合国軍の占領下にあり、戦後復興を進める一方、米国とソ連を中心とする冷戦が急速に形を現し始めていた。
同年8月29日にはソ連が初の核実験に成功し、米国による核兵器の独占が終わった。核兵器の脅威が世界規模へ広がる転換点と、核実験によって変貌したゴジラの再出現が重なる構成となる。
長澤まさみが演じる青山真琴は、災害対策局に所属する天才気象予報士である。1949年当時の気象予報は地上観測や高層気象観測、天気図の解析が中心で、コンピューターによる数値予報はまだ実用化されていなかった。翌1950年にはENIACを使った初期の数値天気予報実験が行われ、気象学は計算科学を取り入れる新たな段階へ入っていく。
観測情報からゴジラの移動や気象との関係を読み解く青山の役割は、経験と観測に基づく従来の予報と、計算による将来予測が交差し始めた時代を象徴する。放射線生物学や再生研究と同様に、当時の科学者が限られた情報から未知の脅威を理解しようとする過程が、物語を動かす要素になりそうだ。
■11月3日に日本公開
『ゴジラ-0.0』は9月26日、第64回ニューヨーク映画祭のスポットライト・ガラ作品としてワールドプレミアを迎える。日本では11月3日、北米では11月6日に劇場公開される。
公式に明らかにされているのは、ゴジラが完全には倒されていなかったこと、新たな怪獣討伐作戦が始動すること、そして青色のエネルギーと上空からの金色の光が新たな脅威を示していることまでである。その正体や現象の仕組みは、公開前の段階では伏せられている。
チェルノブイリに由来する菌類研究は、放射線が生物にとって資源にもなり得るという発想を示す。プラナリアとウーパールーパーの研究は、細胞が位置情報に従って失われた形を作り直す仕組みを明らかにしてきた。広視野映像の神経画像研究は、大きな画面が中心視野だけでは捉えきれない空間を脳へ届ける過程を探っている。これらの研究は、ゴジラの生命力と巨大さを読み解き、作品を楽しむための科学的な補助線になる。
元記事: Godzilla Minus Zero: Chernobyl Fungi Proved Its Monster Biology Before Toho Did
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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