AI投資を企業利益につなげる条件とは―成果を分けた「業務フロー再設計」

2026年8月27日 19:08

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記事提供元:Tech Times

Photo by Tyler Franta on Unsplash

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マッキンゼー・アンド・カンパニーが2026年8月25日に発表した年次調査「The state of AI in 2026」によると、AIが個人の生産性を高めたとする回答者は80%に上った。一方、AIによる企業レベルのEBIT(利払い前・税引き前利益)への何らかの影響を報告した割合は37%で、前年からほぼ変わらなかった。

調査で「AIハイパフォーマー」に分類された組織は約6%だった。これはAIによってEBITの5%以上がもたらされたと回答し、その影響を重要だと評価した組織を指す。31%は同基準に届かない範囲でEBITへの影響を報告している。

■個人の生産性向上と企業業績の間に残る隔たり

調査は2026年5月4日から6月8日にかけて、世界97カ国の1,719人を対象に実施された。回答者の所属組織ではAIの利用範囲が広がっているものの、企業レベルの財務効果を報告した割合は前年とほぼ同じだった。

AIが個人の生産性を高めたと回答した割合は80%で、より良い意思決定に役立ったとする回答も50%に達した。ただし、メール作成や情報整理などに要する時間が短縮されても、節約した時間が売上増加、処理件数の拡大、開発期間の短縮などの測定可能な成果に振り向けられなければ、その効果を企業業績に結び付けるのは難しい。

マッキンゼーは、チャットボットやコパイロットのように複数の部門で利用できる横断的なツールについて、導入しやすい一方、効果が広く分散して測定しにくいと分析している。個々の作業を支援するだけでなく、AIを組み込むことを前提に業務全体を見直せるかどうかが、企業レベルの成果を左右する。

今回の調査では、AIによるコスト削減が比較的多く報告された分野として、サプライチェーン管理、サービス運用、製造が挙げられた。売上への効果はマーケティング・営業や製品・サービス開発で多く報告された。目的とアウトプットが明確な業務ほど、効果を測定しやすいことがうかがえる。

■約6%のAIハイパフォーマーは業務フローを再設計

AIハイパフォーマーの約4分の3は、AIの利用に伴って業務フローを根本的に再設計したと回答した。前年の55%から上昇しており、その他の回答者では約4分の1にとどまった。

ハイパフォーマーは、今後3年以内にAIを使って事業を根本的に変革する意向を持つ割合も、その他の組織の3.3倍だった。効率化だけでなく、成長やイノベーションをAI導入の目標に据える傾向も強い。

この違いは、特定のAI製品を採用しただけでは説明できない。既存の手順にAIツールを追加するのではなく、どの工程をAIに任せ、どこで人が判断し、成果をどの指標で測るかを含めて業務を組み直している点に特徴がある。

マッキンゼーのQuantumBlackでシニアフェローを務めるマイケル・チュイ氏は、投資から成果が表れるまで時間がかかる状況について、過去の技術導入でも見られた傾向だと説明している。電力や情報技術などの汎用技術では、技術そのものに加え、業務プロセス、組織構造、人材などの補完的な資産が整ってから、生産性への効果が広く表れるとする経済研究がある。

もっとも、今回の結果は企業の財務諸表を直接分析したものではなく、回答者による自己申告を集計した調査である。業務フローの再設計と財務成果の間に関連は見られるが、再設計だけが成果を生んだとする因果関係まで示したものではない。

■大企業を中心にAIエージェントの本格運用が拡大

今回の調査では、年間売上高が10億ドルを超える組織の回答者の40%が、1つ以上の業務機能でAIエージェントを本格展開していると答えた。前年の27%から上昇した一方、それより規模の小さい組織では22%で横ばいだった。

ソフトウェア開発でも変化が表れている。回答者の32%は、エージェント型のコーディングツールを使って社内で開発できることを理由に、少なくとも1つのソフトウェア製品または機能の購入を見送ったと回答した。

これは、すべてのソフトウェア購入がAI利用料に置き換わっていることを意味するものではない。ただ、既製品を購入するか、AI支援によって内製するかという選択が、企業の調達判断に影響し始めている。

■トークンなどの運用コストが利用を制約

回答者の約20%は、トークン費用を含むAI関連の運用コストがAI利用の制約になったと答えた。AIエージェントは、計画の作成、外部ツールの呼び出し、結果の確認、処理のやり直しなどを繰り返すため、単一の質問に回答するチャットボットより処理量が増えやすい。

Gartnerは2026年3月、エージェント型モデルが1件のタスクで必要とするトークン数は、標準的な生成AIチャットボットの5~30倍になるとの分析を公表した。トークン単価が低下しても、高度な推論や複数工程の自動化によって消費量が増えれば、企業が負担する推論コスト全体は増える可能性がある。

それでも、回答者の60%は今後1年間に所属組織のAI投資が増えると予想している。投資を拡大する企業には、利用量だけでなく、業務単位の費用と成果を継続的に測定する仕組みが求められる。

■AIによる人員減少、予測が実績を上回る

今後1年間にAIによって所属組織の総雇用が減少すると予想した回答者は39%で、前年調査の32%から増加した。一方、前年に示された予測ほど、実際の人員減少は進んでいない。

今回の調査で、過去1年間にAIが組織全体の人員減少に影響したと回答した割合は14%だった。前年に人員減少を予想していた32%の半分未満で、回答者の約3分の2は、AIによる総雇用への変化がほとんどないか、まったくなかったと報告した。

ただし、前年に予測を回答した組織と、今回実績を回答した組織を個別に追跡した結果とは限らない。このため、32%と14%の比較は、企業経営者の予測と翌年の回答傾向の差を示すものとして読む必要がある。

米国、英国、ドイツ、オーストラリアの企業幹部約6,000人を対象とした2026年の別の調査でも、過去3年間にAIが自社の雇用または生産性へ影響しなかったとの回答が約9割を占めた。一方、今後3年間には生産性向上や雇用減少が進むとの予測が示されており、現在までの実績と将来への期待には隔たりがある。

■マッキンゼー自身もAIエージェントを大規模導入

マッキンゼーも社内でAIエージェントの導入を進めている。ボブ・スターンフェルズCEOは2026年1月、同社が約4万人の従業員と並行して約2万5,000のAIエージェントを運用していると説明した。この数字は、人間の従業員が同数置き換えられたことを表すものではなく、社内で稼働するエージェントの数である。

スターンフェルズ氏は、約1年半前には数千だったエージェントが急速に増えたとし、今後は各従業員が少なくとも1つのエージェントを利用できる状態を目指すとしている。

マッキンゼーによる業務フロー再設計の提言は、同社自身のAI導入方針とも重なる。一方、同社はAIを含む企業変革のコンサルティングサービスを提供する立場でもある。調査結果を利用する際には、自己申告に基づく調査であることや、提言を行う組織の事業上の立場も踏まえる必要がある。

■企業がAIの財務効果を高めるための条件

今回の調査でAIハイパフォーマーに多く見られたのは、業務フローの根本的な再設計、経営幹部による明確な関与、効果測定プロセスの整備、成長とイノベーションを含む目標設定だった。

ハイパフォーマーは、AI施策への経営幹部の関与を報告する割合がその他の組織の2倍を超え、AIの影響を測定するプロセスを持つ割合も約2倍だった。IT予算の15%超をAIに振り向ける割合も2倍以上だった。

ただし、投資額を増やせばハイパフォーマーになれるわけではない。導入前の基準値を設定し、処理時間、コスト、売上、品質などの指標を使って、特定の業務プロセスへの効果を切り分けて測定することが重要になる。

AIの利用範囲は広がり、従業員個人が感じる利便性も高まっている。しかし、個人単位の時間短縮を企業全体の利益へ転換するには、業務の流れ、役割分担、評価指標まで含めた組織的な変更が必要になる。2026年の調査は、企業のAI活用が導入数を競う段階から、費用と成果を具体的に管理する段階へ移りつつあることを示している。

■注目ポイントQ&A

●AIから一定の財務効果を得ている企業はどのくらいありますか?

AIによるEBITへの何らかの影響を報告した回答者は37%です。そのうち、EBITの5%以上をAIに帰属させ、影響を重要だと評価した「AIハイパフォーマー」は約6%でした。

●従業員の80%が生産性向上を感じているのに、なぜ企業の利益に表れにくいのですか?

個人の作業時間が短縮されても、その時間が売上や処理件数などの測定可能な成果に振り向けられるとは限らないためです。企業レベルの効果につなげるには、AIツールの追加だけでなく、業務プロセスや役割分担、成果指標の再設計が必要になります。

●AIによる大規模な人員削減は実際に起きていますか?

将来の人員減少を予想する回答は増えていますが、過去1年間にAIが組織全体の人員減少に影響したとの回答は14%でした。前年調査で減少を予想した割合より低く、現時点では予測が実績を上回っています。

●成果を出している企業に共通する取り組みは何ですか?

AIを既存業務に付け加えるだけでなく、業務フローを根本的に再設計する傾向があります。経営幹部の関与、導入前の基準値設定、財務効果を測定するプロセス、成長やイノベーションを含む目標設定も共通点として挙げられます。

元記事: Record AI Spending Can’t Move Earnings Needle for 94% of Enterprises, McKinsey Finds

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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