イオンモール、1Qは増収増益 成長続ける海外モールは数年後に日本の利益水準を超える見込み

2019年7月25日 18:50

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記事提供元:ログミーファイナンス

IFRS第16号の概要

岡本正彦氏:イオンモール株式会社の岡本でございます。4月の決算説明会でも説明申し上げましたが、当社では2019年度第1四半期より国際財務報告基準の新リース会計基準でありますIFRS16号が適用となりました。

海外子会社が適用対象となり、国内のリース取引は日本基準のため従来どおりでございます。ご質問を受ける機会が多いこともあり、本日はまずはじめにIFRS16号について簡単に説明申し上げます。

スライドの3ページはIFRS16号の概要をまとめたものでございます。IFRS16号では、借り手側におけるすべてのリース取引を、資金調達をともなう資産の取得として会計処理します。

リース取引は、本決算の決算短信や有価証券報告書において注記記載しているオペレーティングリース取引であり、今回は海外法人にかかるオペレーティングリースがオンブックされます。

中国においてはマスターリース中心で出店しているため、PL、BS、キャッシュ・フロー計算書に影響が出てまいります。

2019年度財務諸表への影響

財務諸表への影響でございますが、スライド左側にBSの図で記載しているとおり、資産に使用権資産、負債にリース債務を計上いたします。

このため、使用権資産が932億円増加し、リース債務が1,194億円増加となり、表面上はネットDEレシオなどの財務指標に影響が出ますが、キャッシュ・フロー自体に何ら増減はございません。

また、格付機関や金融機関では従来よりオペレーティングリースについても負債として織り込んで分析しているため、資金調達に大きな影響はございません。

スライド中央の図は損益への影響についてですが、実際に支払う賃借料の計上はなくなり、使用権資産の減価償却費とリース債務にかかる支払利息を計上いたします。減価償却は定額償却で均等計上となりますが、リース債務にかかる支払利息はリース債務の残高に対して計算されるため、リース債務残高が減少するにつれて支払利息は減少することとなります。

したがって、2019年度の経常利益へのマイナスインパクトは10億円を見込んでいますが、第1四半期は2億9,400万円のマイナスインパクトとなります。しかし、年度を追うごとに逆に利益改善へつながっていくと見ております。

先ほどお話ししたとおり、キャッシュ・フロー計算書では何ら変更はありませんが、営業キャッシュ・フローと財務キャッシュ・フローの計上区分が変更となります。以上が、IFRS16号についての簡単な説明でございます。

連結業績概要

以上をもとに、6ページから2019年度第1四半期決算について説明申し上げます。営業収益は、国内モール事業が好調に推移したことに加え海外モール事業の売上も前年同期の実績を大きく上回って推移した結果、前年同期比で105.1パーセントとなり、39億円増収して806億円となりました。営業利益は前年同期比で119.6パーセントとなり、24億円増益して151億円でございます。

IFRS16号の適用にともなう従来の賃借料の減少と、新たに発生した減価償却費との差額が13億円あり、これが営業原価で減少した結果大幅な増益となっております。しかし、右側の表を見ていただければおわかりいただけるように、IFRS16号適用を除いたベースでも前年同期比で109.1パーセント、11億円の増益で138億円となりました。

経常利益はIFRS16号適用にともない、営業原価に計上されていた賃借料の一部が支払利息に回るため、前年同期比で105.1パーセント、6億円の増益で128億円となります。IFRS16号の適用影響を除いたベースでは経常利益は前年同期比で107.5パーセント、9億円の増益で131億円となります。

親会社株主に帰属する四半期純利益も増益で、IFRS16号適用前の基準でも過去最高の実績を更新し、2019年度第1四半期決算としては好調なスタートであると認識しております。

なお、IFRS16号の適用により自己資本比率、DE レシオ、ネットDEレシオが悪化したように見えますが、参考のところに記載してますとおり、IFRS16号の影響を除いた部分では自己資本比率は31.7パーセント、DEレシオは1.3倍、ネットDEレシオは1.2倍と、従来の水準を維持しております。

2019年度はこれらの経営指標についてIFRS16号の適用の影響を考慮したかたちで前年同期との比較等の分析を行います。

海外事業がキャッシュ・フローを創出するステージになったこともあり、2020年度を初年度とする新たな中期3ヶ年計画を策定するとともに、新たな経営指標についても検討し、導入を進めていくことを考えておりますので、決定した後にはみなさまにも紹介させていただきたいと思います。

セグメント別営業利益

続いて7ページの表は、セグメント毎に見た営業利益の状況でございます。国内ではモール事業が堅調に推移したことが都市型ショッピングセンターの減益分をカバーし、国内事業全体では増益となっています。

都市型ショッピングセンター事業は、2018年度第4四半期よりリニューアル効果が出始め、既存店の専門店売上は前年同期を越えて推移しております。引き続き活性化を進めており、2019年度下期から利益改善が見込めるものと考えています。

海外では中国事業、アセアン事業がともに好調に推移しており、全体では当初の計画を超過して推移しております。

海外 業績推移

8ページの表は海外事業における利益の進捗状況でございます。中国事業の営業利益は15億円で、IRS16号の適用による影響を除いても黒字化を達成しております。グラフに薄い青と濃い青等で分けて表現してあります。

同様にアセアン事業もカンボジア・ベトナム・インドネシアの3国すべてで黒字化を達成し、好調に推移しております。営業利益は7億円で、中国事業と同様にIFRS16号の適用による影響を除いても黒字化を達成しております。

海外事業においてはモール数の増加にともない営業キャッシュ・フローが拡大しており、当社の成長を牽引するドライバーとして2019年度より本格的に利益に貢献するステージに入っていると考えています。

海外 既存モール専門店売上前期比

9ページからは海外事業についてより詳しく説明いたします。中国では米国との貿易摩擦による先行き不透明な状況が続いておりますが、専門店売上は引き続き高い伸びを示しており、当社のモールではスライドの表のとおり二桁水準の伸び率を維持し、国全体のマクロトレンドを上回る成長を続けております。社会行事に対応したセール展開や、モールの活性化などにより、売上の成長が加速しております。

ベトナムでは1号店の「タンフーセラドン」において増床等が完了し、2019年6月28日のグランドオープンを前に一部のゾーンを先行してオープンしたこともあって、中国同様に売上の成長率が大きくなっています。

カンボジアの数値は1号店のみの数値で、2号店「センソック・シティ」のオープンにより売上の伸びが一時的に減少しておりました。

1号店はプノンペンの中心への出店で、物販メインでございます。2号店は郊外立地でアミューズメントや飲食等を中心としたレジャー施設を拡充した構成であり、お客さまにはそれぞれのモールを使い分けていただいていると認識しております。2号店がオープンして1年が経過したこともあり、1号店のプノンペンの売上も増加基調となっています。

海外 2019年度既存モールリニューアル

中国ではオープンしてから3~4年経過し、賃料改定や旬のテナントへの入替を行うリニューアルのタイミングを迎えるモールが増えてきています。日本では専門店との契約は6年で満了することが一般的ですが、中国では3年で満了しております。

スライドの写真のとおり、2019年度第1四半期連結累計期間では4月30日に蘇州新区、5月1日に武漢経開、広州番禺広場、5月24日に杭州良渚新城のイオンモールをリニューアルオープンしました。

中国全体では経済成長率がやや鈍化しておりますが、マーケット及びお客さまの変化に機敏に対応し、モールを絶えず進化させていくことで、国全体のマクロトレンドを上回る成長を持続してまいります。

海外 新たな需要創出に向けた取り組み

新たな需要創出に向けた取り組みとしては、社会行事に対応したセールスの実施等により、売上拡大を図ってまいります。

例えば中国では働く女性のみなさまは2019年3月8日の国際婦人デーに半日のお休みがあったわけですが、その女性のみなさまをターゲットとしたセールス企画やイベント等を開催し、専門店売上はプラス20パーセントとなりました。

日本 既存79モール専門店売上前期比

国内事業について説明申し上げます。2019年度第1四半期は3月と4月の2ヶ月間で春先の天候不順及び大型ゴールデンウィーク前に当社で計画していた増床活性化の促進などから少なからず営業機会ロスが発生しており、その影響もあって専門店売上は2018年度を上回っているものの、大きな伸びには至っておりません。ただし、ゴールデンウィークの大型連休期間における専門店の売上は116パーセントと大きく伸びております。

結果、5月度においてはスライドの表のとおり前年同期比で105.3パーセントになりました。結果として2019年度第1四半期計では前年同期比で102.5パーセントとなっています。

日本 既存79モール専門店売上前期比(業界比較)

13ページのグラフにあるとおり、当社の既存モールの専門店売上はSC業界や他の業態の伸び率を上回って推移しております。

とくに今期の5月度においては、当社のモールが物販に加えて飲食やアミューズメントなどのレジャー機能をあわせもっているといった強みによってゴールデンウィークの行楽需要を取り込み、競合他社と比較しても突出して伸びたがおわかりいただけると思います。

また、速報ベースですが、増床活性化効果等もあって、今期の6月度は前年同期比で105.7パーセントと伸長しております。

日本 モール事業 2019年度既存モールリニューアル①

続いて、15ページをご覧ください。地域ナンバーワン施策である増床リニューアルについて少し説明させていただきます。

「イオンモール東浦」「イオンモール名取」「イオンモール沖縄ライカム」の3モールにおいて、2019年度第1四半期に増床を実施いたしました。

まず東浦につきましては、2001年のオープン以来初となる大規模なリニューアルとして増床棟を新設しております。エリア最大級のキッズ・ベビーゾーンを形成するとともに、飲食ゾーンにつきましては面積を従来の1.8倍に拡大する等、全体の約70パーセントをリニューアルしました。

名取におきましては、今回の増床により専門店数が50店舗増加して240店舗となり、総賃貸面積は1万3,000平方メートル増加して8万平方メートルとなって、東北最大級のモールへと生まれ変わりました。

増床棟の2階は、お客さまに快適にご利用いただけるように屋根付デッキを新設し、最寄の鉄道駅と直結するかたちで設定しております。また、子育て支援施設や生涯学習施設を導入する等、地域との連携をより強化する取り組みも実施しております。

日本 モール事業 2019年度既存モールリニューアル②

「沖縄ライカム」はピロティ駐車場を一部店舗化する増床を行いました。新規8店舗を誘致するとともに、既存棟においても10店舗の入替を行い、沖縄県最大級のモールとなりました。3モールとも、売上は賃貸面積の増加率を大きく上回って伸長しています。

また、増床した3モールに加え、ゾーニングの見直しや、大幅なテナントの入れ替えなどをともなう大型リニューアルを8モールで実施しました。

2018年度に増床リニューアルした8モールを加えた既存19モールの専門店売上は、前年同期比で107.4パーセントと大変堅調に推移しており、リニューアルを行っていないモールと比較してプラス7パーセントの押し上げ効果が出ています。

損益計算書(要約)

続いて17ページから19ページに詳細の財務諸表を記載しております。IFRS16号の適用による影響額も記載しておりますので、ご確認いただければと思います。

海外事業 成⻑モデル

今後の取り組みについて説明いたします。海外は2018年度末で27モール体制となりました。既存モールは、中国で13、アセアンで6、計19モールでございます。

2018年度の既存モールの営業収益は25億円の増収で、営業利益は26億円の増益でございます。これを1モールあたりの平均で考えると、増収額は1億3,500万円、増益額は1億3,900万円となります。

IFRS16号適用前の数値での単純計算にはなりますが、現状のまま海外の売上成長トレンドが推移すると仮定した場合、2019年度では既存モールは24となります。

この既存モール24に対して、2018年度までの利益改善額が見込めると計算しますと、2019年度の既存モールの雑益額は32億円と試算できます。こうした試算からも、中国を中心に海外においてモール数が増加することにより、さらなる利益改善が見込めると考えています。

スライド下段には、2016年1月にオープンしました蘇州新区の収益の実績と今後の見込みの推移を記載しておりますが、ご覧のとおり、オープンから順調に利益が改善しております。

また2019年4月30日には3年目の専門店との契約満了のタイミングを迎えたため、活性化が行われ、さらなる利益改善が見込まれます。このように順調にいけば、数年後には日本のモールの利益水準を超える勢いでの成長を見込むことができると考えています。

海外事業 既存モールリニューアル

中国、アセアンともにオープンしてから3~4年経過するモールが増えております。これは、賃料改定や旬のテナントへ入れ替えを行う活性化のタイミングを迎えることを意味します。それにともない、既存モールの増床リニューアル計画も進めてまいります。

2019年6月には、アセアン1号店の「タンフーセラドン」を増床オープンしましたが、他にも大型リニューアルを控えており、活性化を通じてモールの鮮度アップを図ってまいります。

詳細については省略させていただきますが、日本で培ってきた活性化のノウハウや、日本品質とでもいうべきモールのオペレーションなどを通じて、さらにモールを進化させていくことで集客力を向上させ、利益拡大を図ってまいります。

国内事業 既存モール活性化

次に国内事業についてです。日本の専門店契約は6年で満了すると先ほど申し上げました。そのタイミングで旬の専門店や地域のお客様が要望する専門店に入替をすることで、モールの鮮度、魅力を継続的に維持、向上させていくことが可能です。

小売等の世界でも店舗年齢という言葉をよく聞きますが、それをキープしていくことは重要なことで、とくに増床の効果は大きく、2019年度第1四半期は3モールで増床を行いましたが、いずれのモールでも床面積の増加率以上に売上を伸ばしているため、その効果はご理解いただけると思います。

2019年度の消費税増税前には「イオンモール高岡」で増床を計画しており、それも収益拡大につなげてまいります。

国内事業 消費税増税への対応

24ページからは、当社の政策方針のなかでもとくに2019年度におけるトピックスを3点ご紹介させていただきます。まず1点目が、10月1日に実施予定の消費税増税への対応でございます。

2014年4月における前回の消費税増税の時に、どの商品がどのタイミングで売れていったかというトラックレコードを詳細に分析し、対応を検討しております。

具体的な施策を申し上げることは控えさせていただきますが、デベロッパーならではの視点を加え、イオングループ全体としてセールスを展開してまいります。

さらにイオンカードやWAONのポイント還元など、キャッシュレスインフラを活用した取り組みもグループで進めています。増税後の反動減が訪れるタイミングが売上指数が高くなる年末商戦の時期と重なることも見据えて、しっかりとした計画を立て、売上確保に努めてまいります。

国内事業 インバウンドマーケットへの対応①

2点目はインバウンドについてでございます。観光庁の発表では2018年度の訪日外国人が3,000万人を突破し、2020年には4,000万人が見込まれていることは、みなさまもご承知のことかと思います。

また、2018年の訪日外国人の64.6パーセントが中国、東アジアからであり、日本のインバウンド市場において重要な役割を担っているのはアジアからのお客さまであるといえます。さらに訪日外国人の滞在先は都市部中心から地方都市にも拡大しています。

国内事業 インバウンドマーケットへの対応②

以上を踏まえつつ、中国、アセアンでの当社の知名度が向上していることから、当社では空港や観光地に近いモールをインバウンド強化モールとして設定し、インバウンド需要の取り込みを図っていまして、今後の対応は一層強化してまいります。

具体的には「イオンモール成田」をインバウンド対応の新たなモデル店舗として定め、来店時の受け入れ体制の整備、多言語表示、環境整備、新規サービスの導入、訪日外国人向けフォトスポットの設置、コンテンツの配信など、訪日外国人のお客さまがストレスなく滞在していただける機能を付加しております。

この取り組みを、今後インバウンド需要の増加が見込まれる他のモールでも展開するとともに、行政との連携、旅行会社とのタイアップ、PR強化にも取り組み、インバンド需要の取り込み拡大を図ってまいります。

国内事業 デジタリゼーションの推進

3点目は当社のデジタリゼーションへの取り組みについてですが、モールのデジタル化は基本的にモール内での待ち時間や決済等にかかる手間などを減らし、お客様にお買い物やイベントなどショッピングモール本来の楽しい時間をより長いあいだ楽しんでいただくことが目的でございます。

ご来店、ご案内、ショッピング、飲食、休憩、館内移動等それぞれの場面においてお客さまの利便性を高めてまいります。2019年6月に中国江蘇省にオープンした「イオンモール常熟新区」では、スマートフォンアプリを通じてお客さまにとって利便性の高いサービスを提供いたします。

また、広報業務の効率化に結びつくシステムも構築していき、専門店スタッフの方々が営業に専念できる労働環境を提供していくことで、生産性の向上に役立てられるかたちでデジタリゼ-ションを進めてまいりたいと思います。

国内事業 地域コミュニティ機能の強化

当社ではESGを核とした成長施策の取り組みを進めております。その1つとして、リアルモールならではの強みを活かし、リアルを体験、体感できる場として、また人が集う地域コミュニティの場として、心と体の健康を提供するハピネスモールの取り組みを進めています。

このたび社会福祉法人恩賜財団済生会と当社は、双方が拠点を持つ地域のまちづくりに貢献するということを目的として、相互連携協力のための協定を締結いたしました。第一弾としては、イオンモールウォーキングをはじめとする健康をテーマとした取り組みを高岡で実施してまいります。

ESG経営への取り組み

ESG情報の発信を強化していくため、アニュアルレポートにかえて、総合報告書2019を発行いたしました。また、この統合報告書の内容をお客さまや専門店の従業員の方々に平易にお伝えするため、従来までのCSRレポートの編集方針を変更し、CSR/ESGレポート2019として発行しております。

ぜひ、ご一読いただければと思います。また、中長期の取り組みにつきましても、具体的政策の状況、ESGの取り組みなどを更新してIRサイトに掲載しておりますので参考にしていただければと存じます。説明は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

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