脳動脈瘤の破裂リスクを予測するAIモデルを開発

プレスリリース発表元企業:東京慈恵会医科大学

配信日時: 2025-12-24 10:05:34



―くも膜下出血を未然に防ぐ新たな予防医療の可能性―

 東京慈恵会医科大学 脳神経外科学講座 村山雄一 教授および同 先端医療情報技術研究部、並びに東京理科大学 工学部 機械工学科 藤村宗一郎 助教らの研究グループは共同で、人工知能(AI)を用いて未破裂脳動脈瘤の破裂前データから将来の破裂リスク予測するAIモデル「POLARIS(Potential Aneurysm Rupture Risk)」を開発し、国内外の複数施設による大規模データで有効性を検証しました。
 この成果は米国医学会(AMA)が発行する国際医学誌 JAMA Network Openに2025年12月23日に掲載されました。

【概要】
 脳動脈瘤は、脳血管の一部がこぶ状に膨らむ疾患であり、ひとたび破裂するとくも膜下出血を引き起こします。このくも膜下出血の死亡率は約30~50%に達し、生存者の約半数に重篤な後遺症が残るとされています。一方で、未破裂のまま経過する例も多く、「どの脳動脈瘤を治療すべきか」を見極めることが臨床上の大きな課題でした。

 研究グループは、まず日本・米国・オランダの3か国4機関で2003年から2022年にかけて経過観察・治療が行われた計11,579例の未破裂脳動脈瘤データを統合したビッグデータベースを構築。このうち2,750名・3,321瘤のデータを基に機械学習を行い、個々の未破裂脳動脈瘤が将来的に破裂に至るリスクを予測するAIモデルを開発しました。
 本AIモデルでは、脳動脈瘤のサイズや形状などの形態学的特徴に加えて、患者の年齢・既往歴といった臨床情報を含む多次元データを用いており、これらを統合することで2年以内の破裂リスクを予測しています。

 今回開発したAIモデルの予測性能を、開発段階とは別の医療機関のデータ群を用いて検証した結果、国際的なリスク評価指標であるPHASESスコア(AUROC 0.84)を上回る予測性能(AUROC 0.90)を示し、これまで破裂リスクの推定が困難とされてきた10mm以下の小型の脳動脈瘤においてもAUROC0.88、感度0.86で予測可能であることが示されました。

 従来の類似研究の多くは「破裂した後のデータ」を用いて破裂群と未破裂群を分類しており、実際には“破裂した瘤を識別する”解析に留まっていました。
 今回の研究は、破裂前の形態学的特徴および臨床情報のみを用いて将来の破裂リスクを予測する世界初のAIモデルの開発であり、破裂後データに依存しない「真の破裂予測」を実現した点で画期的と言えます。医師の主観に左右されない客観的な治療判断を支援することで、くも膜下出血を未然に防ぐ新たな予防医療の可能性を開くものです。

 今後は破裂リスク評価の比較検証や臨床研究を進め、実際の診療現場での有用性を検証していきます。さらに、将来的には医療機器プログラム(SaMD)としての承認を視野に入れ、脳ドックなどの健診現場での活用に加え、一般利用者向けのウェブサービスなども含め、社会実装に向けた多様な提供形態について検討を進めています。


本件に関するお問合わせ先
学校法人慈恵大学 広報課 
メール:koho@jikei.ac.jp
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