地球温暖化の進行速度、2010年以降ほぼ2倍に 2026年気候報告書

(Frank Schrader/pexels.com)[写真拡大]
査読誌「BioScience」が2026年10月14日に公表した気候報告書によると、世界平均気温の上昇速度は、1970~2010年の10年当たり約0.19℃から、2010~2024年には約0.36℃へ加速したとみられる。報告書が追跡する16の気候指標のうち、7つは記録的な水準にある。現在の上昇ペースが続く場合、産業革命前からの気温上昇が2050年より前に2℃へ達する可能性を著者らは示した。
■温室効果ガス、海洋、氷に表れる変化
報告書「The 2026 State of the Climate Report: Challenges and Opportunities」は、オレゴン州立大学のウィリアム・リップルと、Terrestrial Ecosystems Research Associatesのクリストファー・ウルフが共同で主導した。共著者にはペンシルベニア大学のマイケル・マン、ポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストロームらが名を連ねる。米国生物科学研究所も公表に合わせて発表文を出した。
報告書によると、大気中の二酸化炭素濃度は2026年5月に428ppmを超え、産業革命前より約50%高くなった。メタンと亜酸化窒素も、2026年の年初からの平均濃度が過去最高に達した。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、現在の二酸化炭素濃度を過去少なくとも200万年間で最も高い水準としている。
暫定データでは、海洋熱含量と海面水位も記録的な高さにある。報告書が引用した研究によると、近年の世界平均海面上昇の約56%は、海水が温まって膨張することで説明される。一方、世界の氷河の厚さとグリーンランド氷床の質量は記録的な低水準にある。
グリーンランドについては、バルセロナ大学などの研究者が2026年に「Nature Communications」で極端な夏季融解を分析した。極端な融解時に生じる融水量の増加傾向は、1950~2023年のデータでみた10年当たり127億トンに対し、1990~2023年では824億トンと約6倍だった。研究ではグリーンランド北部も融解が強まる地域として挙げられた。
■温暖化速度が示す時間的な課題
報告書の推計では、世界平均気温の上昇速度は1880~1970年に10年当たり約0.05℃、1970~2010年に約0.19℃、2010~2024年に約0.36℃だった。直近の期間の値は、その前の期間の約1.9倍に当たる。気温がどの水準にあるかに加え、そこへ向かう速さも、排出削減や適応策を計画するうえで重要になる。
著者らは、この速度が続けば、産業革命前比2℃の上昇に2050年より前に達する可能性があると試算した。上昇が速いほど、熱波への備えや沿岸部の対策などに使える時間は短くなる。報告書は、温暖化の加速が気候システムの転換点に達するリスクを高め得るとしている。
加速の一因として報告書が挙げるのは、従来、温室効果ガスによる温暖化の一部を覆い隠していたエアロゾルの減少である。一方、共著者のマンらによる別の分析では、2023~2024年の急な気温上昇は、現在の気候モデルによるシミュレーションの範囲に収まるとされた。著者らは、温暖化の傾向とともに、その影響を見据えた備えが必要だと論じている。
■海洋循環とアマゾンの転換点
大西洋子午面循環(AMOC)は、温かい海水を大西洋の北方へ運び、冷たい海水を深層で南方へ戻す大規模な循環である。ヴァランタン・ポルトマンらが2026年に「Science Advances」で発表した研究は、観測値を使って気候モデルの予測を絞り込んだ。その結果、中程度の排出シナリオでは、今世紀末にAMOCが約51%弱まるとの推計を示した。
報告書は、AMOCの変化が降水パターンや海洋生態系に及ぼす影響を指摘する。北極の海氷やグリーンランド氷床の融解も、AMOCに影響し得る要素として挙げた。こうした相互作用が、気候システムの転換点を考えるうえで重要になる。
アマゾン熱帯雨林について報告書が引用した研究は、温暖化だけを考慮した場合と、森林伐採が重なる場合を比較した。前者では3~5℃の温暖化まで森林の回復力が保たれる可能性がある一方、後者では1.5~1.9℃で森林の広範な衰退につながる閾値に達し得るという。土地利用の変化も、将来のリスクを左右する。
永久凍土、湿地、淡水域、山火事からの温室効果ガス排出にも、温暖化を増幅する働きがある。報告書が引用した推計では、こうした自然由来の排出は、2100年までに2020年以降の人為的な温暖化を約20~30%上乗せし得る。陸上の炭素吸収源が想定より弱い可能性も指摘されており、高温による植物や土壌からの二酸化炭素放出の増加が研究されている。
■猛暑や豪雨がもたらした被害
米海洋大気局(NOAA)によると、米国本土48州の2026年7月の平均気温は華氏76.9度(約24.9℃)で、1895年以降の観測史上、月間でも最も高かった。48州すべてで同月の気温が20世紀平均を少なくとも華氏1度上回った。夜間の最低気温の全域平均も過去最高となり、従来の記録を華氏0.7度上回った。
報告書によると、2026年6月の欧州の熱波では、暫定推計で約1万4000人の超過死亡が生じた。同年6~7月には米国東部とカナダ南部の熱波が約5000万人に影響した。これらの数値は、それぞれの被害や影響の規模を示す推計である。
2025年10月にはカテゴリー5のハリケーン「メリッサ」がカリブ海地域を襲い、ジャマイカとハイチを中心に95人が死亡、被害額は120億ドル(約1兆9000億円)を超えた。翌11月にはインドネシアのスマトラ島で熱帯低気圧とモンスーンによる雨が重なり、708人が死亡した。報告書は、こうした災害の背景を検討するため、ClimaMeterなどの事象別分析も参照している。
■再生可能エネルギーの拡大と残る資金不足
報告書によると、2025年の世界の化石燃料消費量は前年比0.9%増え、石油、石炭、天然ガスはいずれも過去最高となった。エネルギー関連の年間二酸化炭素排出量も初めて410億トンを超えた。同じ年、太陽光と風力のエネルギー消費量は約18%増加した。
2025年には、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーによる世界の発電量が石炭を上回った。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、2024年に新たに運転を始めた大規模再生可能エネルギー設備の91%は、最も安価な新設の化石燃料発電設備より低い発電コストだった。新車販売に占める電気自動車の割合も、2025年に過去最高となった。
エネルギー需要も伸びたため、再生可能エネルギーの拡大と化石燃料消費の増加は並行して起きている。森林では、2025年の熱帯原生林の消失面積が2024年より36%減ったと報告書は記す。ブラジルのアマゾンでの森林伐採率も4年連続で低下した。
化石燃料からの移行を議論する初の国際会議は、2026年4月24~29日にコロンビアのサンタマルタで開かれ、57カ国が参加した。前年の国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)では、24カ国が化石燃料からの移行に関する「ベレン宣言」に署名している。Carbon Briefによると、サンタマルタの会議には米国、中国、インド、ロシア、サウジアラビアは参加しなかった。
適応策への資金も課題だ。報告書は、2024年の世界全体の適応資金を約640億ドル(約10兆1000億円)としている。国連環境計画(UNEP)の2025年版報告書は、途上国の適応に2035年時点で年間3100億~3650億ドル(約49兆円~57兆7000億円)が必要と推計した。UNEPが把握した途上国向けの国際公的資金は2023年に260億ドル(約4兆1100億円)で、必要額とは大きな開きがある。
著者らは、過去の排出への寄与が小さい小島嶼国やグローバルサウスの地域ほど、気候災害への対応力に制約があると指摘する。適応資金は国の政府を経由することが多く、被害の最前線にいる地域社会へ届きにくいという。排出削減とともに、地域の実情に合った適応策へ資金を届けることが、今後の被害を抑える鍵になるといえる。
元記事: Warming Rate Doubled Since 2010, Seven Climate Records Broken: 2026 State of the Climate Report
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
スポンサードリンク
関連キーワード
