Amazon、MetaのAIエージェント「Muse」を遮断 自社の買い物機能との同意基準に違い

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米Amazonは、Metaの個人向けAIエージェント「Muse(ミューズ)」によるAmazon.comへのアクセスを遮断した。利用者がMuseにAmazonでの買い物を指示すると、利用規約への違反を示す警告が表示され、購入を完了できない状態となっている。
Amazonは、Metaが事前の承認を得ずにAIエージェントを自社サイトへアクセスさせたことなどを問題視している。一方、Amazon自身も外部小売業者の商品を購入するAI機能を展開しており、事業者の参加同意を巡る両社の対応の違いが浮かび上がっている。
■AmazonがMuseのアクセス停止を要求
Amazonは9月20日以降、Museによる自社サイトへのアクセスを制限している。米小売業界メディアRetail Diveが9月22日に報じたところによると、AmazonはMuseが自社の購入手続きにアクセスすることについて、Metaから事前通知を受けておらず、承認もしていなかった。
AmazonはMetaに対し、MuseのサービスからAmazonを除外するよう正式に要請したが、Metaは応じなかったという。Museの利用者がAmazon.comで商品を閲覧・購入しようとすると、承認されていないAIエージェントによる継続的なアクセスは利用規約に違反するとの警告が表示される。
Amazonは、外部企業のAIエージェントが自身をAIと明示せずにサイトを閲覧することや、顧客の認証情報を取得・保存することによるプライバシーとセキュリティ上のリスクを指摘している。
同社はRetail Diveに対し、顧客に代わって他社の商品を購入する第三者のアプリケーションは、透明性を確保し、サービス提供者が参加するかどうかを決める判断を尊重すべきだと説明した。フードデリバリーアプリとレストラン、旅行代理店と航空会社の連携を例に挙げ、事業者間の協調が必要だとの立場を示している。
■自社の「Buy for Me」は事前同意を前提としない仕組み
Amazonは2025年4月、他社の商品をAIが代理購入する機能「Buy for Me」の試験提供を発表した。利用者がAmazonで取り扱っていない商品を検索すると、対象となる外部ブランドの商品が表示され、利用者の指示に基づいて購入手続きを進められる。
Buy for Meは、Amazon Bedrockを基盤とし、Amazon NovaやAnthropicのClaudeなどのAIモデルを利用する。利用者が商品の購入を希望すると、AIエージェントがブランドの公式サイトで注文手続きを実行し、暗号化された氏名、配送先住所、決済情報を安全に提供して購入を完了する仕組みだ。
Amazonは、外部ブランドが新たな顧客を獲得できる機会を提供すると説明している。購入後の配送や返品、交換、顧客対応は、商品を販売するブランド側が担当する。
ただし、Buy for Meへのブランドの参加は、必ずしも事前の個別同意を前提としていない。Retail Diveは2026年初め、Amazonが外部小売業者の商品を事前の許可なく対象に追加し、参加を望まない事業者にはメールによるオプトアウトを求めていると報じた。
Amazonも同メディアに対し、事業者はメールでいつでも参加を取り消すことができ、要請を受けた場合は速やかに対象から除外すると説明している。外部AIエージェントには事業者の参加判断を尊重するよう求める一方、自社のBuy for Meでは参加後の拒否を認める方式を採っていることになる。
■Museは専用の仮想マシンで動作
Metaは9月8日、18歳以上の米国在住者向けに、個人向けAIエージェント「Muse」を発表した。最高AI責任者のアレクサンダー・ワン氏が率いるAI開発の取り組みの一環で、AIモデル「Muse Spark 1.3」を基盤としている。
Museは専用のクラウドベース仮想マシン「Muse Secure VM」で動作し、利用者がアプリを閉じた後も依頼された作業を継続できる。専用アプリまたはWhatsAppを通じて利用でき、電子メールの送信や旅行の予約、買い物など、外部サービスを利用する作業に対応する。
Metaは、安全性とプライバシーに配慮した設計を採用し、利用者が外部サービスへのアクセス権限を管理できるとしている。一方、Reutersはサービス開始時、開発段階の社内テストでセキュリティや動作の信頼性に関する問題が見つかっていたと報じた。
米国では無料プランに加え、月額20ドル(約3180円)と100ドル(約1万5900円)の有料プランが提供されている。アプリの利用状況に応じて選択できる料金体系となっている。
■決済情報の保護とアカウント認証は別の問題
Museの購入機能には、米決済大手Stripeのデジタルウォレット「Link」が採用されている。Stripeは9月8日、米国の利用者が自身のLinkアカウントをMuseに接続することで、AIエージェントに買い物を代行させられるようになったと発表した。
Linkに対応する世界100万社以上の事業者では、利用者が保存済みの決済手段を使って購入できる。Link非対応の事業者についても、承認された購入金額に利用範囲を限定した使い捨ての仮想カードを発行し、決済を行う仕組みだ。
Stripeによると、利用者は購入のたびにチャット画面で最終的な取引金額を承認する。Museがクレジットカード番号などの基礎となる決済情報へ直接アクセスしないよう設計されており、利用者が決済の承認権限を保持する。
Stripeは2026年4月、AIエージェント向けのウォレット機能を発表した。この仕組みでは、使い捨ての仮想カードや、決済情報の代わりに使用するShared Payment Tokenを発行することで、AIエージェントが元の決済情報を取得せずに支払いを進められる。
一方、Amazonが指摘する顧客の認証情報には、決済情報とは別に、Amazonアカウントへログインするための情報も含まれる可能性がある。決済処理におけるカード情報の保護と、外部AIエージェントによる顧客アカウントへのアクセスの安全性は、区別して考える必要がある。
■Perplexity訴訟ではAmazonへの仮差し止め命令を取り消し
Amazonは2025年11月、AIブラウザー「Comet」を提供する米Perplexity AIを、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提訴した。CometのAIアシスタントが利用者に代わってAmazon.comにアクセスする行為について、連邦コンピューター詐欺・不正使用防止法(CFAA)などに違反すると主張した。
2026年3月、地裁はAmazonの主張を認め、Perplexityに対する仮差し止め命令を出した。しかし、連邦第9巡回区控訴裁判所は8月4日、この命令を取り消し、事件を地裁に差し戻した。
控訴裁は、提出された記録に基づき、AmazonのコンピューターにアクセスしているのはPerplexityではなく、Cometのアシスタントを道具として利用する顧客自身だと判断した。このため、AmazonがCFAAおよびカリフォルニア州の関連法に基づく請求で勝訴する可能性は低いとした。
判決は、Amazonが受ける可能性のある損害や、Perplexity側の不利益、公共の利益も検討した。法令違反が認められる可能性の低い行為を差し止めることは、消費者の選択肢を狭め、新しいAI技術の発展を不必要に制限すると判断した。
ただし、この判断は仮差し止め命令に関するものであり、訴訟全体の最終的な結論ではない。控訴裁は、Amazonが利用者との契約に基づいて自社サイトへのアクセスを規制する権限についても、今回の判断によって妨げられるものではないと明示している。
AmazonとMetaの対立についても、利用者の指示で動くAIエージェントのアクセスを、サイト運営者がどのような条件で制限できるかが問題となる。Perplexity訴訟の判断は関連する法的論点を示しているが、Museによるアクセスの適法性を直接判断したものではない。
■ShopifyはMuseとの連携を選択
AmazonがMuseのアクセスを遮断する一方、ECプラットフォームを運営するカナダのShopifyは、Metaとの連携を進めている。9月22日には、Museを通じてShopify加盟店の商品を購入する際に、決済サービス「Shop Pay」を利用できるようにする提携が報じられた。
Shopifyは9月8日、AIエージェントを通じた商品販売に対応する「Agentic Storefronts」において、Metaを新たなAIチャネルとして追加したと発表していた。Shopify Catalogを通じて加盟店の商品情報をMetaに提供し、Museなどのサービスで商品を発見できるようにする仕組みだ。
Shopifyによると、対象となる加盟店では、Metaへの商品情報の提供と対応するAIチャネルでの直接購入が標準で有効になる。加盟店は管理画面の販売チャネル設定から、商品情報へのアクセスや直接購入の可否を個別に変更できる。
Metaの直接購入機能は、米国、カナダ、メキシコの対象利用者向けに提供される。Shop Payは利用可能な決済手段の一つであり、加盟店の設定や取引条件によっては、利用者が加盟店のオンラインストアに移動して購入を完了する場合もある。
ShopifyとGoogleは、AIエージェントと小売事業者のシステムを接続するための共通規格「Universal Commerce Protocol(UCP)」も共同開発している。AIを通じた商品検索や購入手続きを標準化し、事業者が外部のAIサービスと連携しやすくする取り組みだ。
Shopifyの対応は、AIエージェントによる商品発見と購入を、自社の加盟店向けサービスに組み込む方向を示している。Amazonのアクセス制限とは異なり、外部AIとの連携を前提に、商品情報の共有や決済の仕組みを整備している。
■広告事業にも関わるAI経由の買い物
AIエージェントの普及は、オンライン小売事業者が商品を販売し、広告収益を得る仕組みにも影響する可能性がある。利用者が小売サイトを訪れる前にAIが商品の検索や比較、選択を済ませれば、サイト内の広告に接する機会が変わるためだ。
Amazonの2026年第2四半期の広告サービス売上高は198億900万ドル(約3兆1496億円)で、前年同期比26%増加した。広告事業は、同社のECサイトだけでなく、動画配信やAIを活用した買い物支援サービスにも広がっている。
Amazonのアンディ・ジャシーCEOは第2四半期決算説明会で、Alexaの買い物支援機能などに表示される「Sponsored Prompts」をクリックした利用者について説明した。クリックしなかった利用者と比べ、購入につながる割合が48%高く、平均支出額も21%多かったという。
こうした広告は、Amazon自身のサービス内で利用者が商品を発見する機会を収益につなげるものだ。一方、外部AIエージェントが商品選択の入口となる場合には、従来のサイト内広告とは異なる顧客接点や広告の仕組みが求められる可能性がある。
Adobe Analyticsによると、2026年6月23~26日の米国の大型セール期間中、AIサービスから小売サイトに流入した訪問者の購入転換率は、検索広告や電子メール、SNSなどの非AI経由の訪問者より40%高かった。前年の同様の期間にはAI経由の購入転換率が23%低かったことから、購買行動の変化がうかがえる。
ただし、この調査は米国の小売サイト全体を対象としたもので、Amazonだけの購入実績を示すものではない。AI経由の流入量も主要な集客経路と比べれば依然として小さく、外部AIの利用拡大がAmazonの広告収益に与える具体的な影響は明らかになっていない。
AmazonによるMuseの遮断は、AIエージェントが利用者の代わりに商品を探し、購入する時代に、小売事業者が外部サービスへのアクセスをどこまで認めるかという課題を浮き彫りにした。利用者の利便性と安全性、事業者の参加判断、商品発見から決済までの顧客接点を巡り、プラットフォームごとに異なる対応が進んでいる。
元記事: Amazon Blocks Meta Muse Using Standards It Ignores for Its Own Shopping Agent
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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