JPモルガン、Thunesと提携 140カ国への越境送金網を拡充、Chase約9400万人の顧客にも恩恵

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JPモルガン・ペイメンツは9月22日、シンガポールに本拠を置く決済インフラ企業Thunesとの提携を発表した。越境決済サービス「Xpedite Remit」にThunesの国際決済ネットワークを組み込み、銀行口座やモバイルウォレットへの送金を迅速化する。対象となる送金ルートは100超に及び、Chaseの個人・中小企業顧客約9400万人にも恩恵が見込まれる。
新たな決済機能は、Thunesが140カ国以上に展開するネットワークと、JPモルガンが既に持つ現地の即時決済システムへの接続を組み合わせる。初期展開ではインドやメキシコ、フィリピンなど、国際送金需要の大きい市場を対象とする。
■100超の送金ルートに対応、銀行口座とモバイルウォレットを接続
今回の提携では、Thunesの「Direct Global Network」を活用し、100超の送金ルートを通じて銀行口座やモバイルウォレットへの支払いを可能にする。同ネットワークは140カ国以上、90超の通貨に対応し、世界で計120億の銀行口座やモバイルウォレットなどに接続している。
Xpedite Remitを利用する法人顧客は、単一の口座と接続を通じて、海外の取引先への支払いを実行できる。送金額の保護、送金状況の追跡、迅速な資金の受け渡しに対応し、同一通貨での支払いや外国為替取引を伴う送金にも利用できる。送金先の銀行口座だけでなく、現地のモバイルウォレットにも資金を届けられる。
JPモルガン・ペイメンツの高額決済・外国為替部門グローバル責任者、Gayathri Vasudev氏は、顧客が国境を越えて資金を移動させる際に、受取人の希望する決済手段を使える、より簡単で迅速な方法を求めていると説明した。同社はThunesとの協業によって越境決済機能を拡充し、顧客の新市場への進出を支援する方針だ。
JPモルガン・チェース傘下の個人・地域銀行部門も、新たな決済インフラを活用する。約9400万人の個人・中小企業顧客を抱えるChaseでは、海外向け送金の迅速化に加え、米国へのリアルタイム入金を支える機能の強化が見込まれる。ただし、すべての顧客が直ちに新機能を利用できると発表されたわけではなく、国や送金ルートごとの具体的な提供開始日も明らかにされていない。
■コルレス銀行を介した国際送金と直接接続網の違い
従来の国際送金では、送金元と送金先の銀行が直接取引できない場合、コルレス銀行と呼ばれる中継金融機関を利用する。複数の銀行を経由する取引では、それぞれの金融機関による処理や手数料、現地の決済システムへの接続状況が、送金にかかる時間や費用に影響する。
JPモルガンとThunesの提携は、こうした銀行間ネットワークに加え、送金先の現地決済システムへ接続する手段を拡充するものだ。Thunesは各国の銀行や決済サービス事業者との接続を通じて、受取人が利用する銀行口座やモバイルウォレットへの送金を可能にしている。
例えば、ケニアではモバイルマネーサービス「M-Pesa」、フィリピンでは電子ウォレット「GCash」が送金先となる。銀行口座を持たない受取人でも、対応するモバイルウォレットがあれば資金を受け取れる。Thunesはインドの統合決済インターフェース「UPI」や、ブラジルの即時決済システム「Pix」にも対応している。
直接接続網を利用することで、複数の中継銀行を経由する必要性を減らし、現地の決済手段に資金を届けるまでの処理を効率化できる。一方、実際の送金経路や所要時間は、対象国の金融制度、利用する決済システム、送金元と受取先の条件などによって異なる。
■国際送金コストの削減に向けた取り組み
国際送金の迅速化と費用削減は、金融機関や決済事業者に共通する課題となっている。国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、2030年までに移民送金の平均費用を送金額の3%未満に引き下げる目標を掲げている。世界銀行の「Remittance Prices Worldwide」によると、2025年第3四半期の世界平均送金コストは6.36%で、目標を大きく上回っていた。
Thunesの直接接続網は、中継銀行への依存を減らし、送金先で広く利用されている決済手段に資金を届ける仕組みを提供する。現地の銀行口座やモバイルウォレットを受取先として利用できれば、従来の送金経路では対応が難しかった市場にもサービスを拡大しやすくなる。
ただし、JPモルガンは今回の提携に伴う具体的な送金手数料や、従来サービスと比較した費用削減率を公表していない。利用者が実際に負担する費用は、送金元の金融機関が設定する手数料や適用為替レートなどにも左右される。
■Thunesの決済ネットワークと資金管理技術
Thunesの源流は、2005年に設立されたシンガポールのTransferToにある。同社は携帯電話料金のチャージサービスなどを手掛け、2016年には国際送金プラットフォームを展開した。その後、2019年の事業再編を経て、国際決済ネットワークを担うThunesと、モバイルチャージ事業を担うDT Oneに分かれた。
Thunesは現在、銀行、送金事業者、フィンテック企業などを対象に、各国の決済システムを結ぶインフラを提供している。2026年9月時点の同社公表情報では、ネットワークは140カ国、90通貨、220の決済手段をカバーし、参加事業者は720社を超える。
同社によると、ネットワーク上の取引の85%は即時に決済される。JPモルガンとの提携では、同社が独自に整備した送金ネットワークに加え、流動性や外国為替取引を管理する「SmartX Treasury System」と、制裁対象者の確認などを支援する「Fortress Compliance Platform」も決済基盤を構成する。
SmartXは90通貨に対応する資金管理システムで、外国為替取引や各通貨の流動性管理を支援する。Fortressは規制対応やリスク管理を支える仕組みであり、国や地域ごとに異なる金融規制への対応が求められる国際決済ネットワークの運営を支えている。
■ステーブルコインを活用した流動性管理
Thunesは、国際決済に必要な資金を効率的に確保するため、ステーブルコインを活用した流動性管理にも取り組んでいる。従来の国際送金では、海外の金融機関に保有するノストロ口座などを通じて、決済に必要な外貨資金をあらかじめ確保する場合がある。複数の国や通貨に資金を分散させると、資金管理の負担が増える。
Thunesは2024年10月、米Circleとの協業を発表した。米ドルに連動するステーブルコイン「USDC」を国際決済の資金供給に利用し、ネットワーク参加事業者が銀行の営業時間に左右されず、24時間365日、決済資金を確保できる仕組みの構築を進めている。
さらに2026年4月には、Circle Payments Networkの「Managed Payments」への参加を発表した。これにより、参加事業者が既存の法定通貨ベースの業務手順を維持しながら、ステーブルコインを利用した決済機能にアクセスできるようにする。
こうした仕組みは、従来の事前資金供給に必要な資金を効率化し、国境を越えた決済の迅速化を支える。もっとも、JPモルガンとの今回の提携において、個別の送金にUSDCがどのように利用されるかは明らかにされていない。
■資金調達と金融機関への展開
Thunesは2025年4月、Apis PartnersとVitruvian Partnersが主導するシリーズD資金調達で1億5000万ドルを調達した。同社は調達資金を米国での事業拡大や、中東・中南米でのネットワーク強化などに充てる方針を示している。
同社はその後も銀行や送金事業者との接続を拡充してきた。ネットワーク参加企業には、PayPal、Western Union、Uber、Deliverooなどが含まれる。銀行間の国際決済ネットワークであるSwiftとの接続も進め、既存の銀行システムを通じてThunesの決済機能を利用できる環境を整えている。
2026年3月には、調査会社Juniper Researchが越境決済インフラ企業14社を対象に実施した競争力評価で、Thunesを世界上位3社の一つに位置付けた。同調査は決済処理額や対応する利用用途の幅などを評価基準としており、Thunesのネットワークの広がりや技術面での取り組みを評価した。
Thunesの共同創業者兼CEO、Peter De Caluwe氏は、JPモルガンとの提携について、安全かつ迅速な世界規模の資金移動に必要なコンプライアンス、セキュリティ、耐障害性を提供すると説明した。従来の銀行インフラと各国で利用される現地決済手段を接続することで、国際商取引を円滑にする考えを示している。
■初期展開はインド、メキシコ、フィリピンなど11市場
JPモルガンとThunesの提携による新機能は、サプライヤーへの即時決済、請求書支払い、個人向け送金などに対応する。初期展開で重点を置く市場として、インド、メキシコ、バングラデシュ、ブラジル、中国、コロンビア、インドネシア、ケニア、ナイジェリア、パキスタン、フィリピンの11市場が挙げられている。
これらの市場では、銀行口座に加え、各国で普及するモバイルウォレットなどを送金先として利用できる。例えば、フィリピン向けの送金では、Thunesのネットワークが対応するGCashなどの電子ウォレットが受取手段となり得る。海外の取引先や家族への送金において、受取人が利用しやすい決済手段を選べることが利点となる。
法人顧客にとっては、複数の国・地域への支払いを単一の接続で処理できる点も重要だ。海外のサプライヤーへの代金支払いや請求書の決済などについて、個別の現地金融機関との接続を整備する負担を軽減できる。
Chaseのバンキング・ペイメンツ責任者、Ashish Ajmera氏は、今回の機能強化を越境決済の近代化に向けた重要な一歩と位置付けた。同社は、海外送金の迅速性、透明性、信頼性を高めることで、顧客の国際的な資金移動を支援する方針だ。
■Swiftとの連携も進めるJPモルガン
JPモルガンはThunesとの提携に加え、Swiftが進める個人・中小企業向け越境決済の新たな枠組みにも参加している。同枠組みは、送金にかかる費用を事前に明示し、受取額の予測可能性や送金状況の追跡機能を高めることを目的としている。
Swiftの仕組みでは、送金額が途中で予期せず差し引かれることを防ぎ、現地の決済システムが対応する場合には即時の資金受け渡しを目指す。JPモルガンは2026年8月時点で、米国における受取側の参加金融機関として同枠組みに加わっている。
一方、Thunesとの提携は、JPモルガンの顧客が利用できる海外の送金先や現地決済手段を拡充するものだ。銀行口座に加え、モバイルウォレットなどへの送金にも対応することで、受取人の利用環境に応じた支払いを可能にする。
両社は今回の提携により、既存の銀行間決済インフラと現地の決済ネットワークを組み合わせ、国際送金の迅速化と対応市場の拡大を進める。
■Thunesは中東6市場にも送金網を拡大
ThunesはJPモルガンとの提携発表に先立つ9月14日、中東の6市場で新たな越境送金サービスを開始すると発表した。対象はバーレーン、レバノン、オマーン、南イエメン、シリア、アラブ首長国連邦(UAE)で、現地の銀行口座、モバイルウォレット、現金受取拠点への送金に対応する。
具体的には、バーレーン、オマーン、UAEで銀行口座への送金に対応し、レバノンではモバイルウォレットへの送金を提供する。南イエメンでは銀行口座への送金と現金受け取り、シリアでは現金受け取りに対応する。利用可能な受取手段は市場によって異なる。
ネットワーク参加事業者は、ThunesとのAPI接続または既存のSwift接続を通じて、これらの送金サービスを利用できる。Thunesは各国の金融機関や決済事業者との接続を広げることで、銀行間送金だけでは対応が難しい受取手段にも国際決済の対象を拡大している。
JPモルガンとの提携も、こうしたネットワーク拡充の一環となる。既存の銀行インフラと各国の決済手段を結び付けることで、法人や個人が利用できる国際送金サービスの範囲を広げていく。
元記事: J.P. Morgan Backs Thunes to Fix Cross-Border Payments for 94 Million Chase Accounts
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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