「Nvidia比で電力効率100倍」は実証なるか―欧州Euclyd、2億ユーロ超を調達 Samsungは出資と製造の二役

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AIチップを開発するオランダ・アイントホーフェン拠点のEuclydは、2億ユーロ超のシリーズA資金を調達した。Samsungは共同リード投資家であると同時に、CRAFTWERKの初回シリコンを韓国で製造する。Euclydが掲げるNvidia製品比約100倍のトークン当たり電力効率は、商用規模で独立検証されておらず、初回納入は2027年、フルラックシステムは2028年を目標としている。
■欧州AIチップに大規模な資金
欧州におけるAIチップ主権の取り組みは火曜日、制度的な資本を得る段階へ進んだ。アイントホーフェン拠点のEuclydは、Samsung、Somerset Capital Partners、EQTが運用するEUのScaleup Europe Fund、Innovation Industriesが共同リードした、2億ユーロ超(約2億3100万ドル)のシリーズA調達を発表した。欧州の半導体企業に対する資金調達としては、過去最大級の一つである。
同時に、半導体製造装置大手ASMLを11年間率い、世界の半導体製造で最も戦略的重要性の高い企業へと成長させたPeter Wenninkが、Euclydの取締役会議長に加わった。
Euclydの中核となる賭けは、カスタムAI推論チップシステム「CRAFTWERK」である。同社は、同等の大規模言語モデルのワークロードにおいて、Nvidiaの最新Vera Rubinチップと比べ、生成トークン当たりの電力効率が約100倍になると主張する。ただし、この数値は商用規模で独立検証されていない。実運用で性能を発揮できれば、CRAFTWERKは、現在のGPUベースAIデータセンターで電力の大半を消費するメモリー帯域幅の制約に対する有力な回答となり得る。
■CRAFTWERKのアーキテクチャ
CRAFTWERKを理解する出発点は、GPUで多くの電力が使われる理由にある。2026年に本格生産へ入ったNvidiaのVera Rubinチップは、288GBのHBM4(第4世代の広帯域幅メモリー)を搭載し、GPU当たり約毎秒22TBのメモリー帯域幅を提供する。この帯域幅は、すでに強力なBlackwellの毎秒8TBの2.8倍であり、従来基準では極めて大きい。一方、Vera Rubinを72基収容するNVL72ラックの消費電力は190~230kWに達する。
理由はGPUの基本構造にある。HBMはGPUダイの隣に配置されるが、ダイ上にはない。データはメモリースタックと演算コアの間にある物理的な接続を通過する必要があり、その移動には多くのエネルギーを要する。学習済みモデルを実行し、ユーザーの問い合わせに答える推論では、こうしたメモリー移動がシステムの電力予算の60~80%を占める場合がある。
CRAFTWERKは異なるアーキテクチャを採る。大型の演算ダイと隣接するHBMスタックを組み合わせるのではなく、16,384基のカスタムSIMD(Single Instruction, Multiple Data:単一命令で複数データを処理する方式)プロセッサを、Euclydが「Ultra Bandwidth Memory(UBM)」と呼ぶメモリーと直接統合する。UBMは標準化モジュールを転用したものではなく、このシステム専用に設計されたカスタムメモリーアーキテクチャである。これを、およそ100mm四方の手のひらサイズの単一SiP(System-in-Package)に収める。情報を別のメモリーバンクへ往復させる代わりに、多数の場所で同時にその場で処理することで、チップ内のデータ移動距離と電力コストを抑える狙いだ。
同社が示す32チップ搭載ラックシステム「CRAFTWERK STATION CWS 32」の仕様は、合計毎秒8000TBの帯域幅、1エクサフロップス(1000ペタフロップス)超の演算性能、システム内32TBのメモリー、約125kWの消費電力である。Metaの言語モデル「Llama 4 Maverick」を実行した場合、毎秒768万トークンを生成できるとEuclydは予測している。NvidiaのVera Rubin比で示した100倍の数値は、演算性能そのものではなく、推論ワークロードにおけるトークン当たりの電力効率を指す。
これらの数値はすべてEuclyd自身のモデリングに基づく。TechRadar Proは、2025年9月にサンタクララで開催されたKISACO Infrastructure SummitでCRAFTWERKが発表された際、独立テストは示されていなかったと指摘した。RuntimeWire.comも、Euclydの資金調達プロセスを以前に取り上げた記事で、「チップ企業のタームシートは、出荷済みデバイス、認定済み製造フロー、顧客検証済みベンチマークと同じではない」と端的に記している。
■Samsungが担う投資家と製造者の二役
今回の投資家リスト自体も注目に値するが、SamsungはEuclydのシリーズAの共同リード投資家であると同時に、CRAFTWERKの初回シリコンを韓国で製造する企業でもある。
半導体業界では、製造パートナーと金融投資家が同一企業となる例は多くない。製造企業は、スタートアップの知的財産、生産日程、製品単位の採算に大きな影響力を持つためである。Samsungが二つの役割を担うことは、Euclydチームに対する単なる財務上の信頼以上のものを示す。Samsungは、SK Hynix、Micronと並び、NvidiaのVera Rubinプラットフォーム向けHBM4の製造を認定された3社のうちの1社である。
自社資本と製造能力によって非HBM型の推論アーキテクチャを同時に支援することは、AI推論市場がNvidiaのGPUとHBMの組み合わせへ収れんしない可能性に備える動きでもある。EuclydのUBMアーキテクチャが大規模に機能すれば、Samsungは本格的なNvidia代替製品に必要なメモリー技術と製造プロセスの唯一の供給者となる位置に立つ。
Euclydの創業者兼CEOであるBernardo Kastrupは、以前のCNBCの取材で、資金面を超えたSamsungの重要性を認めている。「Samsungは世界最大級のメモリーメーカーの一つだ。多くのエンジニアリングを手掛け、システムを深く理解し、サプライチェーンを把握している。巨大なネットワークも持っている」とKastrupは記者に語った。
Kastrupの経歴は、異色の創業者を多く生むこの分野でも珍しい。コンピューター工学(再構成可能コンピューティングとAIを専攻)と哲学(存在論と心の哲学)の2つの博士号を持ち、意識こそが物質ではなく現実の根本的基盤であるとする哲学的立場「分析的観念論」に関する著書を11冊執筆している。Euclyd創業前には、Intelが2011年に買収した並列プロセッサ企業Silicon Hiveを共同創業し、ASMLではテクノロジー戦略担当として働いた。CRAFTWERKのアーキテクチャの開発は、日中の仕事を終えた夜に、アイントホーフェンにある自宅の屋根裏部屋で始めたという。
KastrupはシリーズAの発表で、「AIは経済成長、科学的発見、国家競争力の基盤になりつつある。しかし、その下にあるインフラを根本的に変えない限り、その可能性は制約されたままだ」と述べた。
■EU基金にとって2件目の大型投資
今回の調達で注目すべきもう一つの点は、Scaleup Europe Fundの参加である。同基金は欧州委員会が2026年8月4日に正式設立し、目標総資本50億ユーロ(約57億8000万ドル)を掲げる。翌日にはフィンランドの衛星インテリジェンス企業ICEYEへ最初の大型投資を実施した。Euclydへの投資は、立ち上げから数週間で行う2件目の大型コミットメントであり、AIシリコン分野では初となる。
基金を運用するスウェーデンのプライベートエクイティ企業EQTは、適格な運用会社27社が参加した競争プロセスを経て選定された。AI、量子、クリーンエネルギー、宇宙、バイオテクノロジー分野の欧州ディープテック・スケールアップを支援することが基金の使命で、通常の投資額は1億~5億ユーロ(約1億1550万~5億7750万ドル)としている。EQTのパートナーで、Scaleup Europe Fund助言チームの共同責任者を務めるTed PerssonはシリーズAの発表で、Euclydは「深い半導体の専門知識と、AIインフラにおける最も難しい制約のいくつかに取り組むという使命を兼ね備えている」と述べた。
■Wenninkの参加が示すもの
Peter Wenninkの取締役会議長就任は、個別の技術的主張を超えて、Euclydの信頼性に厚みを加える。ASMLの社長兼CEOを2013年から2024年まで務めたWenninkは、7nm未満のチップ製造を物理的に可能にする極端紫外線(EUV)リソグラフィの商用展開を監督した。7nmは約0.00028インチに相当する。EUVがなければ、Nvidia H100もAppleのMシリーズチップも、最先端AIアクセラレーションも存在しない。
ASMLはEUV装置の世界唯一の供給企業であり、Wenninkは10年以上にわたりその地位を守り、拡大した。欧州は半導体の将来を確保するうえで、困難かつ重大な選択に直面していると、Wenninkは一貫して公の場で主張してきた。
WenninkはシリーズAの発表で、「欧州は半導体、先端製造、システムエンジニアリングの全領域において世界水準の能力を持つ。Euclydは、これらの強みを世界で競争力のあるAIインフラプラットフォームへ変えられる」と述べた。
Wenninkが、商用シリコンをまだ持たない創業2年のスタートアップを、より確立された企業ではなく選んだことは、推論シリコン市場の行き先に対する判断を反映する。そして、Kastrupが公の発言でハードウェアインフラの制御と切り離せないものとして位置付けてきたAIチップ主権の問題を、欧州のエンジニアリング界がどれほど深刻に受け止めているかを示している。
■競争できるかは、まだ分からない
2026年9月時点で率直な答えは、誰にも分からない、である。Euclydの根拠は、初回シリコンの製造前に同社が策定した仕様に置かれている。導入済み顧客はなく、見込みのある企業顧客2社への初回納入は2027年、CWS 32のフルラックシステムは2028年を目標とする。AIチップ市場の変化は非常に速く、競争という観点では2028年は10年先にも等しい。
この分野には、両方の結果を示す先例がある。ストリーミング型Language Processing Unit(LPU)を設計し、AI推論で文書化された性能向上を実現したGroqは、十分な市場の信認を集め、Nvidiaが2025年後半にその技術資産を200億ドルで買収した。専用設計の推論シリコンに本物の価値があることの裏付けとなる一方、市場で最も商業的な実証が進んだ独立系競合企業が競争から消えたことも意味する。
演算機能とオンチップSRAMを単一のウエハー上に統合するウエハースケールチップを開発するCerebrasは、現在、独立系のNvidia代替企業として先頭に立つ。2026年初めに評価額230億ドルで資金を調達した後、株式公開を申請しており、Mayo Clinicとの提携を含む実際の企業導入もある。
Euclydにとって最も大きな構造的課題は、技術的な主張や投資家リストでは直接解決できないCUDAソフトウェアエコシステムである。NvidiaのCUDAプログラミングモデルは、2007年以降、AIコンピューティングの業界標準インタフェースとなっている。企業のAIチームには、CUDA向けに最適化したコード、ワークフロー、組織内の知識が長年にわたり蓄積されている。トークン当たりの電力効率が100倍高いチップであっても、導入にソフトウェアスタックの書き換えを伴うなら、自動的に採用されるわけではない。
CRAFTWERKアーキテクチャを自社チップ構築を望む企業へ販売する、Euclydの知的財産ライセンスモデルは、この問題に対する一つの解答になり得る。しかし同社は、CUDA互換性にどう対応するかを公表していない。
欧州でこの市場を狙う企業はEuclydだけではない。同じくアイントホーフェン拠点のAxelera AIは、エッジ推論チップ向けに2026年2月、2億5000万ドル(約2億1600万ユーロ)を調達し、累計調達額を約4億5400万ドルへ拡大した。ただしAxeleraは、データセンターラックではなく、デバイスやオンプレミスの「エッジ」導入を対象とする。欧州のAIチップスタートアップは2026年前半に合計で相当額の資金を集めたが、同時期の米国企業に比べればなお一部にとどまる。Nvidiaの研究開発費は年間約180億ドルと広く報じられている。
新たな資金は、Euclydのエンジニアリングチーム拡大、シリコンおよびシステムのロードマップ加速、企業、ソブリン、ハイパースケールのAI市場に向けた商用展開準備に充てられる。同社が以前の報道で潜在顧客として挙げたのは、ASML、Airbus、Rheinmetall、Thalesである。いずれも、安全な自社ホスト型AI推論を必要とし、実証前の第1世代シリコンを採用するリスク許容度を持ち得る欧州の大規模組織だ。
Samsung Electronicsのシニアバイスプレジデントで、Semiconductor Innovation Center責任者のDede Goldschmidtは、「AIの次の段階は、モデルのイノベーションだけでなく、インフラの効率性と拡張性によっても決まる」と述べた。
この見方に異論はない。CRAFTWERKがその形成に参加できるかどうかは、シリコン、規模、そして料金を支払う顧客のもとで、今後証明される必要がある。
元記事: Euclyd Raises €200M; Samsung Funds and Builds Its Rival Chip for Nvidia Inference
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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