DeepSeek、Huawei製AIチップ16万基を導入計画―推論基盤の国産化を加速

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Bloombergによると、中国のAI企業DeepSeekは、内モンゴル自治区ウランチャブで整備するデータセンターに、HuaweiのAIアクセラレーター「Ascend 950DT」を少なくとも16万基導入する計画だ。主に学習済みモデルを動かす推論処理に使用し、新しいモデルの学習では引き続きNVIDIA製ハードウェアを利用するという。
計画が実現すれば、中国製AIチップを採用した大規模な計算基盤の一つとなる。ただし、チップの供給量や施設の稼働時期はHuaweiの生産能力に左右され、DeepSeekとHuaweiはいずれも計画について公式にコメントしていない。
■Ascend 950DTを少なくとも16万基導入へ
DeepSeekが整備するのは、北京市から北西に約350km離れたウランチャブのデータセンターだ。施設の計算能力は最終的に1GW規模となる計画で、少なくとも一部を2027年末から2028年初頭までに稼働させることを目指していると報じられている。
導入予定のAscend 950DTは、Huaweiが2025年9月に示したAscendシリーズのロードマップに含まれる次世代AIアクセラレーターである。Huaweiは2026年第4四半期の提供開始を予定しており、AIモデルの推論におけるデコード処理とモデル学習の双方に向けて設計している。
DeepSeekは今回、950DTを新モデルの学習ではなく、学習済みモデルを本番環境で動かす推論に使用する計画だ。推論とは、利用者が入力したプロンプトを基に、モデルが回答などの出力を生成する処理を指す。
一方、モデルの学習ではNVIDIA製アクセラレーターの利用を続ける。DeepSeekは過去にHuaweiのAscendを使ったモデル学習を試みたものの、技術的な問題からNVIDIA製ハードウェアに戻したと報じられている。今回の計画は、推論と学習で異なるハードウェアを使い分ける構成を大規模に展開するものとなる。
■推論のデコード処理を想定した広帯域メモリ
大規模言語モデルの推論は、入力された文章を処理するプリフィルと、それに続いてトークンを順次生成するデコードに大きく分けられる。モデルの規模や処理方法によって性能上の制約は異なるが、デコードではモデルの重みをメモリから繰り返し読み出すため、メモリ容量や帯域幅が重要になる。
Huaweiの公表資料によると、Ascend 950DTは同社独自の高帯域幅メモリ「HiZQ 2.0」を搭載し、容量は144GB、メモリ帯域幅は4TB/s、チップ間の相互接続帯域幅は2TB/sとなる。FP8、MXFP8、MXFP4、Huawei独自のHiF8といった低精度データ形式にも対応する。
同じ950シリーズのAscend 950PRは、プリフィルやレコメンド処理を主な用途とする。これに対して950DTは、より広いメモリ帯域幅を必要とするデコードとモデル学習を想定している。DeepSeekによる950DTの選択は、多数の利用者に対して回答を生成する本番推論基盤の処理能力を重視したものとみられる。
Huaweiは、950DTを最大8192基接続する「Atlas 950 SuperPoD」も計画している。同社によると、最大構成ではFP8演算で8エクサフロップス、FP4演算で16エクサフロップスのピーク性能を備える。これらはHuaweiが公表した設計上の数値であり、実際のアプリケーションにおける処理速度は、モデル構成やソフトウェアの最適化、通信効率などによって変わる。
■供給能力が計画の進度を左右
DeepSeekの計画における大きな不確定要素は、Huaweiが16万基以上の950DTをどの程度の期間で供給できるかである。Bloombergが関係者の話として報じたところでは、高性能メモリなどの部品不足により、2026年の950DT生産量は数十万基程度に制約される可能性がある。
HuaweiはDeepSeek以外の顧客にもAscendシリーズを供給する必要がある。このため、DeepSeekが求める数量をそろえるまでには1年以上かかる可能性があり、データセンターへの設置時期も生産状況に左右される。
DeepSeekは必要なチップの割り当てを増やし、供給を早めるようHuaweiに働きかけるため、中国当局にも支援を求めたと報じられている。現時点では、16万基が正式に納入される時期や、施設全体が完成する時期は明らかになっていない。
■NVIDIA製チップとの単純比較は困難
Huaweiは、個々のチップだけで競争するのではなく、多数のアクセラレーターを高速に接続した大規模システムによって、全体の処理能力を高める戦略を取っている。Atlas 950 SuperPoDでは、独自の相互接続技術「UnifiedBus」を利用して多数の950DTを連携させる。
AIアクセラレーターの実効性能は、単体の演算性能やメモリ帯域幅だけでは決まらない。多数のチップを組み合わせた際の通信速度、処理の安定性、消費電力、利用するモデルへの最適化、ソフトウェア開発環境などが総合的に影響する。
NVIDIAのH200は公称141GBのHBM3eと4.8TB/s級のメモリ帯域幅を、AMD Instinct MI300Xは192GBのHBM3と5.3TB/sの帯域幅を備える。Huaweiが950DTについて示した144GB、4TB/sという数値は、メモリ仕様だけを見れば同じ広帯域メモリ型アクセラレーターの範囲に入るが、精度形式やシステム構成が異なるため、これらの数値だけで実際の推論性能を順位付けすることはできない。
950DTは提供開始前の製品であり、公開されている主要な仕様やシステム性能はHuaweiの発表に基づく。DeepSeekのモデルを使った大規模な本番環境で、どの程度の処理能力や運用効率を示すかが今後の焦点となる。
■CANNへのソフトウェア対応も必要
Huawei製アクセラレーターの導入には、ハードウェアの確保だけでなく、同社のソフトウェア基盤への対応が必要になる。Huaweiは、Ascend向けの開発・実行環境として「CANN(Compute Architecture for Neural Networks)」を提供している。
NVIDIA製GPU向けに開発されたAIシステムの多くは、CUDAを中心とするソフトウェア環境に最適化されている。Ascend上でモデルを効率的に動かすには、演算処理やメモリ利用、複数チップ間の通信などをCANNに合わせて調整する作業が求められる。
Huaweiは2025年の講演で、同年1月から4月末にかけてDeepSeekと共同作業を行い、Ascend 910Bおよび910Cによる推論能力を利用需要に対応させたと説明している。DeepSeekが950DTを大規模に導入する場合も、モデルとハードウェア、ソフトウェアを一体で最適化する取り組みが重要になる。
推論基盤をHuawei製チップへ移す一方で、学習をNVIDIA製ハードウェアに残す構成は、DeepSeekが現在利用できる技術を用途ごとに使い分ける現実的な選択といえる。今後、Ascendの学習環境がどこまで安定し、開発ツールやライブラリが整備されるかは、中国製AI基盤の自立性を左右する要素となる。
■中国で進むAI計算基盤の国産化
米国は2022年以降、中国向けの先端AI半導体と半導体製造装置に対する輸出規制を段階的に強化してきた。これに対し、中国ではHuaweiをはじめとする国内企業が、AIアクセラレーター、メモリ、相互接続技術、ソフトウェアを含む独自の計算基盤を整備している。
DeepSeekによる16万基規模の導入計画は、少なくとも推論分野で中国製アクセラレーターを大規模に採用しようとする動きを示す。一方で、モデル学習が引き続きNVIDIA製ハードウェアに依存することから、AI基盤全体が国産技術へ移行したことを意味するものではない。
米国の輸出規制は、中国企業による最先端チップの入手を難しくする一方、中国国内で代替製品と独自ソフトウェアを開発する動機も強めている。DeepSeekの計画が予定通り進むかどうかは、Huaweiの量産能力だけでなく、大規模な実運用環境における性能や安定性にも左右される。
■API利用ではデータの保存場所と処理条件を確認
ウランチャブの施設は、DeepSeekのモデルを動かす推論基盤として計画されている。ただし、将来すべてのAPIクエリーが同施設で処理されると発表されたわけではなく、どの利用者やサービスの処理が同施設へ割り当てられるかは明らかになっていない。
DeepSeekのプライバシーポリシーでは、同社のサービスが中国で設立されたHangzhou DeepSeek Artificial Intelligenceによって提供・管理されることや、利用者が入力したプロンプト、アップロードしたファイル、IPアドレス、端末情報などを収集することが説明されている。同社のサービスに直接入力されたデータは、中国国内のサーバーで処理・保存される場合がある。
中国国家情報法第7条は、組織および国民に対し、法に基づいて国家情報活動を支持、協力するよう求めている。一方、同法には情報活動を法に従って実施し、人権や個人・組織の合法的権益を尊重、保障するとの規定もある。企業が機密情報や個人データを扱う場合は、法律の条文だけで一律に結論付けるのではなく、実際のサービス契約、データの保存場所、処理主体、アクセス管理、保持期間を確認する必要がある。
また、DeepSeekの現行プライバシーポリシーは、同社のオープンプラットフォームを利用して第三者が開発したアプリケーションにおけるエンドユーザー情報の処理には適用されないとしている。その場合、アプリケーション運営者がデータ管理者として、独自の個人情報保護方針を利用者に示す必要がある。
DeepSeekのAPIを利用する企業は、個人情報、顧客データ、未公開の技術情報、認証情報などを安易にプロンプトへ含めず、自社が利用する契約形態とデータ処理条件を確認することが重要になる。これはウランチャブ施設の完成を待たず、現在のサービス利用でも必要な対応である。
■焦点は推論基盤の運用実績
DeepSeekは独自のAI推論チップも開発していると報じられている。開発が進めば、将来的にHuaweiやNVIDIAとは異なる選択肢を持つ可能性があるが、設計、製造、ソフトウェア対応、量産体制について公式な詳細は明らかになっていない。
当面の焦点は、DeepSeekがHuaweiから必要な数量の950DTを確保し、ウランチャブの施設を計画通り稼働させられるかどうかである。さらに、16万基規模のアクセラレーターを安定して連携させ、利用者向けサービスの速度や運用コストをどこまで改善できるかが問われる。
今回の計画は、中国製AIチップによる大規模な推論基盤が構築段階に入ったことを示している。同時に、最先端モデルの学習ではNVIDIA製ハードウェアへの依存が残る。推論の国産化が進む一方、学習基盤の移行にはなお技術面と供給面の課題があるという、現在の中国AIインフラの分業構造を映し出している。
元記事: DeepSeek’s 160,000-Chip Huawei Order Puts PRC Law Over Every API Query
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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