【分析】SHEIN香港IPO、最大17.7億ドル調達へ―既存株主の6カ月ロックアップで初期流動性に注目

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ファストファッション大手のSHEIN(シーイン)は、香港市場での新規株式公開(IPO)により最大138億6,000万香港ドル(17億7,000万ドル、約2,814億円)を調達する計画だ。既存投資家の一部が、IPOで割り当てられる新株について6カ月間売却しない自主的なロックアップに合意したと報じられており、上場直後に市場で流通する株式の規模と値動きが注目される。
同社は最終的な公開価格を8月31日までに発表し、9月1日に香港証券取引所へ上場する予定だ。株式コードは00625となる。売上高の伸びが鈍化するなか、米国の関税政策や各国当局による調査への対応も投資判断を左右する要素となる。
■最大17.7億ドルを調達、既存株主も新株を取得へ
SHEINは約2億8,000万株のクラスB株式を、1株47.60~49.50香港ドルで売り出す。仮条件の上限で計算すると調達額は約138億6,000万香港ドル、企業評価額は約270億ドルとなる。
IPOでは約3億8,300万ドル相当がコーナーストーン投資家に割り当てられ、香港での公開募集には発行株式の10%が充てられる。コーナーストーン投資家とは、一定額の株式をあらかじめ取得する代わりに割り当てを保証される投資家で、原則として取得株式を上場後6カ月間売却できない。
コーナーストーン投資家には、博裕資本、タイガー・グローバル、ゼネラル・アトランティック、テンセント・ホールディングスなど、SHEINの既存株主が含まれる。Bloombergによると、既存投資家はコーナーストーン枠以外で新たに割り当てられるIPO株についても、自主的に6カ月間のロックアップを受け入れる見通しだ。
こうした既存投資家への割り当てを考慮すると、既存株主以外の機関投資家に残る枠は5億~6億ドル程度になると報じられている。ただし、この金額は既存株主以外の機関投資家向けの割当余地を示すものであり、上場初日に売買可能な株式全体の金額と同一ではない。実際の流通規模は、機関投資家と個人投資家への最終的な配分によって決まる。
■上場初期は株式の流通量が焦点に
既存株主が追加取得する新株にも売却制限が設けられれば、上場直後に市場で流通する株式は、IPOの調達総額から受ける印象より少なくなる可能性がある。
流通株式が限られる市場では、通常より小さな売買注文でも株価が動きやすくなる。また、空売りやマーケットメーカーのヘッジに使われる貸株の供給が少なければ、株式を借りるコストが上昇する可能性もある。一方、公開募集で取得した個人投資家や、ロックアップの対象外となる機関投資家の株式は上場後に売買できるため、流動性の程度は最終配分を確認する必要がある。
既存投資家による自主的なロックアップは、上場後も株式を保有する意思を示す措置となる。ただし、既存株主の参加比率が高いことだけをもって、外部の機関投資家需要が不足していると断定することはできない。投資家の需要は、最終価格や応募状況、割当結果を含めて判断する必要がある。
■評価額は2022年のピークから大幅に低下
仮条件の上限に基づく約270億ドルの企業評価額は、2022年の資金調達時に付いた982億ドルから72%余り低い。2023年と2024年4月時点の評価額も約640億ドルだった。
評価額の低下には、売上高の伸びの鈍化、関税や物流費などのコスト増、競争激化、各国での規制対応を巡る不確実性が反映されている。約270億ドルの評価額は予想売上高の約0.7倍に相当し、欧州のファッション企業と比べても、投資家がSHEINを高成長のテクノロジープラットフォームとして評価するか、物流や在庫、貿易政策の影響を受ける小売企業として評価するかが価格形成の焦点となる。
SHEINはこれまで米国と英国での上場を検討したが、いずれも実現しなかった。米国ではサプライチェーンやデータ管理などを巡り政治的、規制上の監視が強まり、英国での上場計画も中国当局の承認を得られないまま進展しなかった。中国証券監督管理委員会は2026年7月、同社の香港上場に必要な域外上場手続きを認めた。
■売上高の伸びが鈍化、第1四半期は赤字
SHEINの売上高成長率は、2023年の41.1%から2024年には20.7%、2025年には8.0%へ低下した。2026年第1四半期の売上高は前年同期比1.1%増の90億5,000万ドルにとどまった。
第1四半期の最終損益は9,900万ドルの赤字となり、前年同期の3億9,500万ドルの黒字から悪化した。赤字には転換償還優先株式の公正価値変動に伴う一時的な会計上の損失も影響した。
米国での売上高は、前年同期の23億8,000万ドルから20億4,000万ドルへ14.3%減少した。米国が2025年5月、中国および香港から輸入される800ドル以下の商品について少額輸入品の免税措置を撤廃したことで、SHEINが成長に活用してきた中国から消費者へ直接発送するモデルに追加コストが生じた。
SHEINは、値上げや在庫の現地化、配送方法の調整などを進めている。目論見書では、2026年上半期の増収率が第1四半期とほぼ同水準になり、欧州での輸入コスト、価格競争、中東での需要低下などにより営業利益率が第1四半期をやや下回るとの見通しを示している。
■米国ではFTC調査とCFIUS審査
SHEINは香港上場に向けた開示書類で、米国事業が米連邦取引委員会(FTC)の消費者保護調査を受けていることを明らかにした。具体的な調査対象は公表していない。
同社はFTCの調査に協力しており、和解その他の結果によって多額の支払いが必要となり、財務状態や業績に重大な影響が及ぶ可能性があると説明している。現時点では調査の結論や支払額、終了時期は決まっていない。
米当局は、SHEINによる米衣料品小売企業エバーレーンの買収についても、対米外国投資委員会(CFIUS)を通じて国家安全保障上の審査を進めていると報じられた。8,000万ドルの買収は2026年5月に完了し、SHEINがその後に自主的に審査を申請したという。
審査では、米国の消費者データを扱う企業をSHEINが所有することによる安全保障上のリスクが検討されている。CFIUSは、取引を承認するほか、条件を課したり、取引の解消を求めたりする権限を持つ。審査内容は非公開であり、結論は明らかになっていない。
このほか、テキサス州司法長官は2026年2月、商品安全や消費者データに関する表示が虚偽または誤解を招くものだとしてSHEINを提訴した。SHEINは訴状の主張に強く反対し、裁判で自社の立場を示すとしている。
欧州委員会も同月、違法商品の流通防止策、利用を促す設計、商品の推薦システムの透明性を巡り、デジタルサービス法に基づく正式調査を開始した。いずれも申し立てや調査の段階であり、違反が確定したことを意味しない。
■6カ月後にはロックアップ解除
コーナーストーン投資家のロックアップと、既存投資家が新規割当株について受け入れる自主的なロックアップは、上場から約6カ月後に解除される見通しだ。9月1日に上場した場合、解除時期は2027年3月ごろとなる。
ロックアップの解除時には、それまで売却できなかった株式が取引可能になるため、潜在的な株式供給が増える。実際に売却される株式数や株価への影響は、その時点の業績、株価水準、市場環境、各投資家の判断によって異なる。
SHEINはIPOによる調達資金の約40%を技術力の強化に、約40%をブランド認知度の向上と世界展開の強化に配分する計画だ。上場後は、これらの投資によって成長率と収益性を改善できるかが重要になる。
最大17.7億ドルという調達額に加え、上場直後の流通株式の配分、既存投資家への依存度、成長鈍化への対応、米欧の規制手続きが、SHEINの香港市場での評価を左右することになる。
元記事: Shein IPO’s $1.77 Billion Headline Leaves Under $600M Freely Tradable Float
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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