関連記事
GoogleのGemini Enterprise Agent Platform、企業向けAIガバナンスを前面に OpenAIはエージェント課金を開始

(Google.com)[写真拡大]
企業のAIエージェント導入は急速に進む一方で、統制基盤を整備できている企業は限られる。こうした状況の中、GoogleはGemini Enterprise Agent Platformでインフラ層のガバナンスを前面に打ち出している。OpenAIは7月6日にWorkspace Agentsをクレジット課金へ移行しており、エージェントを導入する企業は、コスト、セキュリティ、運用をどの基盤で管理するかという判断を迫られている。
■AIエージェント市場は統制と課金の転換点に入った
OutSystemsが2026年にITリーダー1,900人を対象に実施した調査によると、企業の96%はすでにAIエージェントを本番運用している一方、実際にそれらを統制できていると答えたのは12%にとどまった。争点はベンチマークスコアやコンテキストウィンドウ、推論品質ではなく、この統制ギャップである。
Googleが2026年4月22日にラスベガスで開催されたGoogle Cloud Next '26で発表したGemini Enterprise Agent Platformは、この領域での優位性確立を狙った製品だ。発表から3カ月で競争環境は急速に変化しており、OpenAIは7月6日にWorkspace Agentsをクレジットベースの課金へ移行し、ChatGPT Workの無料プレビュー期間も終了した。Anthropicも7月7日にClaude CoworkをデスクトップからWebとモバイルへ拡張している。
企業向けエージェント型AI市場は、価格設定とガバナンスの両面で転換点に達した。自律型エージェントを導入するチームは、実際の運用コストとセキュリティ上のリスクを抱えることになり、どのインフラ層でエージェント群を管理するかを決めなければならない。
Googleはこの新プラットフォームをVertex AIの後継として位置付けている。GoogleはVertex AIの単独製品ラインを終了し、今後のVertex AIのロードマップ上の機能拡張は、すべてGemini Enterprise Agent Platformブランドの下で提供すると明示した。
■導入は進んでもガバナンスは追い付いていない
Googleの狙いを理解するには、市場の実態を詳しく見る必要がある。OutSystemsの2026年調査では、97%の組織がエージェント型AI戦略を検討しており、49%は自社の能力を高度または専門家レベルと評価した。一方で、ガバナンスに一元的なアプローチを採用しているのは36%、AIの無秩序な拡大を統制するために一元管理プラットフォームを使っているのは12%にすぎない。
Gartnerの「2026 Hype Cycle for Agentic AI」は、同じ緊張関係を別の角度から示している。AIエージェントをすでに導入した組織は17%にとどまる一方、今後2年で60%以上が導入を見込んでいるという。Gartnerによると、これは同調査の歴史において、あらゆる新興技術の中で最も急速な導入曲線だ。エージェント型AIは「過度な期待のピーク」に位置付けられているが、ガバナンス、セキュリティ、コスト管理の能力は、導入意欲に比べて成熟が大きく遅れている。
このギャップは主にポリシーの問題ではなく、アイデンティティー設計の問題である。企業データ、メール、カレンダー、CRM、社内APIへ継続的にアクセスするAIエージェントは、機械の速度で動く非人間の内部関係者に等しい。従来のID・アクセス管理は、人間が順番に行動し、その操作をリアルタイムで観察できることを前提として設計されていた。
OWASPの「Top 10 for Agentic Applications 2026」は、目標の乗っ取り、ツールの誤用、ID権限の悪用を、自律システムにおける中核的な脅威として挙げている。また、想定された範囲を逸脱したエージェントは、重大な、場合によっては壊滅的な結果を招き得るとしている。Forrester Researchは、CFOが投資対効果を示す証拠を求め、セキュリティチームが未解決のガバナンス上の問題を指摘することで、2026年に予定されていた企業のAI支出の25%が2027年へ先送りされると予測している。
GoogleがGemini Enterpriseで対処しようとしているのは、アプリケーション層ではなくインフラ層の問題である。
■Gemini Enterpriseは基盤にエージェントIDを組み込む
Googleの戦略を最も明確に示しているのは、プラットフォームで何ができるかではなく、統制機能をどこに配置しているかだ。AnthropicやOpenAIは、主にロールベースのアクセス制御、管理ダッシュボード、組織単位の設定といったアプリケーション層にガバナンスを配置している。一方、Gemini Enterpriseは、アプリケーション層より下に2つの基盤的な仕組みを置く。
1つ目のAgent Identityは、デプロイされた各エージェントに一意の暗号学的識別子を割り当てる仕組みだ。エージェントが行うすべてのAPI呼び出し、データアクセス要求、ファイル操作は、そのIDによって署名・記録され、追跡可能になる。これは、Microsoft Entra IDのようなIDプロバイダーを通じて人間の従業員に適用してきた考え方を、機械の速度で動く非人間の主体に適用したものだ。
2つ目のAgent Gatewayは、ツールやデータソースとのすべてのやり取りを統制する中央ポリシー適用点として機能する。エージェントとツール間の呼び出しにおける認証を管理し、Googleのコンテンツ保護システム「Model Armor」との連携を通じてセキュリティ上のガードレールを適用する。
3つ目の仕組みであるAgent Registryは、組織内のすべてのエージェント、ツール、MCPサーバーを検出、追跡、管理するための一元的なカタログである。異なる事業部門の複数のチームが何百ものエージェントを展開する環境では、このレジストリが、IT部門から見えないままエージェントが動く「シャドーAI」の問題を、セキュリティ監査上の不備へ発展させないための役割を担う。
Google Cloudのプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントであるMichael Gerstenhaber氏は、プラットフォーム発表時にこの設計判断を次のように説明した。「当初のVertex AIは、生成AIの初期における複雑性に対応するために設計された。しかし現在、私たちは、エージェントが複数のシステムをまたいで相互作用し、しかもしばしばセキュリティやガバナンスのガードレールなしに動作するという、異なる次元の複雑性を管理している」
この基盤の上に構築されたコンプライアンス層も充実している。Google Cloud IAMとのネイティブ統合により、エージェントが照会または変更できるデータに対して、きめ細かな最小権限のアクセス制御を適用できる。組み込みのData Loss Preventionログは、モデルへの入力と出力を継続的に可視化する。Enterpriseティアで利用できる地域別のデータレジデンシー制御により、組織は個別のシステム開発を行わずに、GDPR、HIPAA、NIS2、EU AI Act第10条のデータガバナンス要件へ対応できる。
さらに同プラットフォームは、AIマネジメントシステムの国際規格であるISO 42001の認証を取得している。つまり、Googleのガバナンスに関する主張は、単なる自己申告ではなく独立した監査を受けているということだ。あらゆる主要ベンダーが企業向けのセキュリティとコンプライアンスを掲げる市場では、この監査に基づく第三者認証は、競合企業が宣伝文句を書き換えるだけでは追随できない差別化要素となる。
■ADK 2.0はグラフ型アーキテクチャを採用
Gemini Enterprise上で開発するための技術基盤は、2026年5月のGoogle I/Oでの更新を経て安定版2.0となったAgent Development Kit(ADK)である。ADK 2.0はエージェントのオーケストレーションをグラフとして表現し、エージェントをノード、判断をエッジ、サブエージェントを組み合わせ可能な関数として扱う。グラフを構成するための主要なパターンは3つある。
SequentialAgentは、固定されたパイプラインで手順を順番に実行し、あるエージェントの出力を次のエージェントの入力として、決められた順序で処理する。ParallelAgentは、セッション状態を共有する複数のサブエージェントへ作業を並列に振り分け、親エージェントはすべてのサブタスクの結果を受け取ってから処理を続ける。LoopAgentは、定義された条件を満たすまでサブエージェントを反復実行し、知的労働のタスクで一般的に求められる改善サイクルを実現する。
3つのパターンはいずれも、互いを直接呼び出すのではなく、共有状態オブジェクトへ出力を書き込む。この設計によって状態の境界が明示され、従来のコールバック型フレームワークよりも、実行経路を観測し、デバッグしやすくなる。
これは企業の本番運用において重要な違いとなる。エージェントチェーンが失敗した場合、グラフモデルなら、どのノードが、なぜ失敗し、その時点でどのような状態を保持していたかを示す、追跡可能な実行記録を生成できる。コールバックの連鎖を通じて障害が表面化しないまま波及し、明確な監査点が存在しない設計に比べると、大きな改善である。
ADK 2.0では、OpenTelemetryへのネイティブ出力も追加された。これにより、エージェントの実行トレースを、個別の統合作業なしで既存の企業向けオブザーバビリティープラットフォームへ直接送信できる。対応言語はPython、TypeScript、Go、Java、Kotlinで、企業の開発チームが実際に使用する幅広い言語をカバーする。Apache 2.0ライセンスのオープンソースとして公開されており、組織はフレームワーク自体を検査、変更、監査できる。
ローコードの入り口としてはAgent Studioが用意されており、コードを書かずにエージェントを構築する必要があるプロダクトマネージャーや業務アナリスト向けの役割を担う。ロジックが複雑になり、コードによる開発が必要になった場合は、Studioから直接ADKへ書き出せるため、ノーコードからフルコードへ移行する際にエージェントをゼロから作り直す必要がない。
大規模運用向けには、Agent Runtimeが1秒未満のコールドスタートをうたい、数日間にわたるワークフローをサポートする。長期間アクティブな状態を保ち、推論を続け、文脈を失わずに外部イベントへ応答するエージェントを想定した設計だ。Memory Bankはランタイムと組み合わせて長期記憶を生成・提供し、永続的なセッションIDをCRMや社内データベースのレコードへ対応付けられる。
■専用推論シリコンがハードウェア性能の基準を引き上げる
Gemini Enterpriseのガバナンスとオーケストレーションの背後には、競合プラットフォームが提供できないハードウェア上の利点がある。推論ワークロード専用に設計されたシリコンだ。
GoogleがCloud Next '26で同時発表した第8世代TPU 8iは、288GBの広帯域メモリーと384MBのオンチップSRAMを搭載し、オンチップSRAMを前世代の3倍に増やした。Mixture of Expertsモデル向けのインターコネクト帯域を19.2Tbpsへ倍増し、新しいCollectives Acceleration Engineによってオンチップのレイテンシーを最大5分の1に低減するとしている。1つのポッドで1,152基のチップを直接接続でき、Googleは推論ワークロードにおける性能対価格比が前世代より80%向上したと主張している。ただし、この数値はGoogle自身のベンチマークに基づくもので、第三者の監査機関による独立検証は行われていない。
重要なのは、これが単なるチップ発表ではない点だ。Googleは、訓練用シリコンのTPU 8tと推論用シリコンのTPU 8iを意図的に分離した。TPU 8tは最大9,600基のチップで構成されるスーパーポッドを使用する、計算負荷の高いモデル訓練向けであり、TPU 8iは低レイテンシーが求められる稼働中のエージェント向けである。訓練と推論では、必要なメモリーフットプリント、インターコネクトのトポロジー、許容可能なレイテンシーが根本的に異なるため、片方に最適化したチップがもう片方にも最適とは限らない。
何百ものエージェントセッションが同時に処理される高並列のエージェント型ワークフローでは、推論のレイテンシーが、ユーザーが体感する応答時間とエージェントのスループットに直接影響する。Microsoft Azure AI FoundryやAWS Bedrock AgentCoreはNVIDIA GPU上で動作し、顧客のワークロードは、関連性のない幅広いコンピューティング需要とリソースを共有する。これに対し、GoogleのTPU基盤は同社のAI研究およびGeminiモデルの開発と垂直統合されており、最適化対象となるモデルアーキテクチャを自社で把握できる。
実務上のトレードオフとなるのは、CUDAエコシステムへの既存の依存である。すでにNVIDIA GPU向けのツールチェーンを大規模に構築している企業では、GoogleのTPU基盤を採用するために、運用環境の再構築が必要になる可能性がある。
■競合各社の強みはそれぞれ異なる
2026年半ばまでに、企業向けエージェント型AIプラットフォームの競争は、4つの異なる戦略に分かれた。重要なのは、すべての用途に共通する最良のプラットフォームを決めることではなく、各社がどの領域で優位に立つかを理解することだ。
Microsoft Azure AI Foundryは、2025年11月に投入されたAgent 365と組み合わせることで、すでにMicrosoft 365とEntra IDを運用する約1万社以上の企業に対して、ID管理面の優位性を持つ。Azure AI Foundry上のエージェントは、Entra IDから既存のID、コンプライアンス、データ損失防止ポリシーを初日から継承でき、新たな基盤の導入や移行作業を必要としない。価格モデルは1ユーザー当たり約30ドルにAgent 365の15ドルを加える形で、合計すると月額約45ドル(約7,290円、1ドル=162円換算)となり、従量課金よりも予算上の負担を予測しやすい。Microsoft中心の組織でEntra IDが十分に展開されていれば、これはGemini Enterpriseが、2つのID基盤の併用を求めずに再現することはできない、構造的に大きな利点となる。
AWS Bedrock AgentCoreは、単一のAPIからAnthropicのClaude、MetaのLlama、Mistral、Cohere、Amazon Novaを扱えるモデルの幅広さで競う。統制は、統一されたエージェント制御プレーンではなく、AWS IAMのサービス単位の制御が担う。AWS中心の開発文化を持ち、複数のフレームワークやモデルを柔軟に利用したいチームには自然に適合する。一方、統一された制御プレーンがないため、ガバナンスは独立した主要製品として提供されるのではなく、AWSの既存ツールを組み合わせて構築することになる。
AnthropicのClaude Coworkは2026年4月9日に一般提供へ移行し、7月7日にデスクトップからWebとモバイルへ拡張した。Anthropicによると、匿名化された120万件のCoworkセッションを分析したところ、90%以上がソフトウェア開発とは無関係だったことが、この拡張の背景にある。企業向けティアは1ユーザー当たり月額100ドル(約1万6,200円、1ドル=162円換算)で、SOC 2への準拠とカスタムVM構成を含む。強みは、個々の知識労働者向けのタスク実行であり、Google Workspace、Salesforce、DocuSign、法務系プラットフォームとの組み込み連携を備える。ガバナンスとオブザーバビリティーは主に第三者へ委ねられているため、コンプライアンスを重視するIT部門への訴求力は限られるが、迅速な導入を求めるチームにとっては実装上の負担が小さい。
OpenAIは7月6日、Workspace Agentsを無料プレビューからクレジットベースの課金へ移行し、方針を大きく転換した。OpenAIが公開した料金表によると、各エージェントの実行は、入力トークン、キャッシュ済み入力トークン、出力トークンによって計測され、一般的なGPT-5.5の実行では5〜25クレジット程度になる。ChatGPT Workは7月9日、これらの機能をより広くまとめたパッケージとして提供を開始した。春の間にWorkspace Agentsを日常業務へ組み込んだチームは、それまで存在しなかった変動運用コストを負担することになり、エージェントの利用はエンジニアリングだけでなくFinOpsの問題にもなった。OpenAIのガバナンスは引き続きアプリケーション層が中心であり、ロールベース制御や管理ダッシュボードは備えるが、インフラ層のエージェントIDや専用のポリシー適用ゲートウェイは持たない。
Gemini Enterpriseが現在の競合よりも深いレベルで提供しているのは、インフラ層のガバナンス、マルチモデルの柔軟性、専用推論ハードウェアの組み合わせである。この組み合わせが企業顧客の獲得につながるかどうかは、Googleの想定どおり、CISOが購買判断において決定的な役割を果たすかに左右される。
■プラットフォーム選定前に企業が確認すべき点
96%が導入し、12%しか統制できていないというギャップは、多くの組織が予算化できている以上の速さで縮まりつつある。Gartnerは、2026年末までに企業アプリケーションの40%がタスク特化型AIエージェントを組み込むと予測しており、2025年の5%未満から大きく増える見通しだ。現時点でガバナンスの深さを基準にプラットフォームの評価を始めるチームは、機微データへ継続的にアクセスするエージェントが本番稼働した際に生じるコンプライアンスとセキュリティ上の問題に先回りできる。
問うべきなのは、「どのモデルがベンチマークで最も高いスコアを出すか」ではない。すべてのエージェント操作に追跡可能な暗号学的IDを割り当てるか。エージェントとデータソースの間で、アプリケーション層だけでなくインフラ層において最小権限のアクセスを強制できるか。クラウド、オンプレミス、エッジをまたぐエージェントからツールへの呼び出しをすべてカバーする、単一のポリシー適用点を持つか。自己申告のコンプライアンスチェックリストを設定できるだけでなく、独立した監査を受けられるか。確認すべきなのは、こうした点である。
Gemini Enterpriseは、この4項目すべてに「はい」と答える。Azure AI FoundryはID管理については「はい」だが、その優位性は、すでにMicrosoftエコシステムを利用している組織に限られる。AWS Bedrock AgentCoreのガバナンスはサービス単位のIAM制御に分散しており、統一されたエージェント制御プレーンはない。AnthropicのCoworkとOpenAIのChatGPT Workは、依然として主にアプリケーション層にとどまる。
7月17日に発表された、Gemini Enterprise Agent Platform上でのGrok 4.1モデル群の廃止は、現在それらのモデルIDを呼び出しているチームにとって、プラットフォームの本番運用上の信頼性を測る、直近の実践的な試金石となる。停止期限は8月20日で、Grok 4.2、Grok 4.3、またはModel Gardenで提供される別のモデルへ移行する必要がある。移行自体は単純なAPI変更で済むものの、モデルを取り巻く環境が変化し続ける中では、どのマルチモデルプラットフォームにも継続的な運用負荷が伴うことを示している。
エージェントの用途が文書作成、調査、日程調整といった生産性向上中心である企業では、AnthropicのCoworkとGoogleのGemini Enterpriseアプリのどちらを選ぶかは、主に許容できる予算と既存のクラウド利用状況によって決まる。顧客記録、財務データ、規制対象の医療情報へ継続的にアクセスするエージェントを想定する企業では、ガバナンス基盤の検討は任意ではない。プラットフォームの選択は、個々のモデルの品質差よりも重大な判断となる。
■注目ポイントQ&A
●Gemini Enterprise Agent PlatformはAzure AI Foundryと何が違いますか
中核的な違いは、ガバナンスをどこに置くかです。Gemini Enterpriseは、すべてのエージェント操作に暗号学的識別子を付与するAgent Identityと、統一されたポリシー適用点であるAgent Gatewayを、アプリケーション層の下にあるインフラの基本要素として配置します。そのため、誰がどのような方法で構築したエージェントであっても、ガバナンスを適用できます。一方、Azure AI Foundryの強みはIDポリシーの継承です。すでにMicrosoft 365とEntra IDを使用している企業は、追加の統合作業なしで、既存のIDポリシーから派生したガバナンスをエージェントへ適用できます。Microsoftエコシステムへ深く投資しているチームは、Azure AI Foundryの初日から利用できるID管理基盤を立ち上げやすいでしょう。Google Cloud上で新規に構築するチームにとっては、Gemini Enterpriseの専用ガバナンス基盤の方が、アーキテクチャとして包括的です。
●ガバナンスがインフラ層にあるか、アプリケーション層にあるかはなぜ重要ですか
エージェントが読み取る文書に埋め込まれたプロンプトインジェクション攻撃、誤って設定されたツール接続、オーケストレーションロジックの不具合などによってアプリケーション層の制御が回避された場合、アプリケーションより下にポリシー適用の仕組みがなければ、本来アクセスすべきでないデータへ到達できてしまうからです。インフラ層のガバナンスは、アプリケーションコードが実行される前にアクセス制御を強制できるため、アプリケーション層の制御が見逃す問題を捕捉できます。OWASPの2026年のエージェントセキュリティに関するガイダンスでも、過剰な権限付与による権限昇格は、企業向けAIエージェントが抱える中核的かつ構造的なリスクの1つとされています。インフラ層に配置されたAgent IdentityとAgent Gatewayは、この脅威に対するアーキテクチャ上の対応策です。
●Gemini Enterprise Agent PlatformではGemini以外のモデルも使えますか
使えます。これは意図的な設計上の選択であり、重要な差別化要素です。Model Gardenでは200を超えるモデルを提供し、AnthropicのClaude Opus 4.8、xAIのGrokモデル、Llama、Mistral、Qwen、DeepSeekのオープンウェイトモデルに加え、Google自身のGemini 3.1 Pro、Gemini 3.5 Flash、Gemma 4、音声向けのLyria 3などを扱います。1つのエージェントがサブタスクごとに異なるモデルを呼び出しながら、ID、ポリシー、監査証跡を統一した状態に保つことができます。直近の制約として、Grok 4.1モデル群は2026年7月17日付で廃止が発表され、8月20日に停止される予定です。該当するモデルIDを使用しているチームは、それまでにGrok 4.2またはGrok 4.3へ移行する必要があります。
●AIエージェントのセキュリティを重視する企業にはどのプラットフォームが向いていますか
既存のインフラによって異なります。すでにMicrosoft 365とEntra IDを運用しているチームは、既存のIAMとDLPポリシーを追加設定なしでエージェントへ拡張できるため、Azure AI Foundryによって最も短期間でセキュリティの基準を整えられます。新規に環境を構築するチームや、独立した監査の証拠を必要とする規制産業の組織にとっては、ISO 42001認証と暗号学的なAgent Identityアーキテクチャを備えたGemini Enterpriseが、最も説明しやすいガバナンス体制となります。セキュリティの深さより導入速度を優先し、エージェントの用途が規制対象データへのアクセスを伴わない知識労働の生産性向上に限られる場合は、AnthropicのCoworkやOpenAIのChatGPT Workをより迅速に導入できます。ただし、導入規模の拡大に応じて、ガバナンスを追加する必要があります。
元記事: Gemini Enterprise Agent Platform Leads Enterprise AI Governance as OpenAI Starts Billing for Agents
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
スポンサードリンク
