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「X Money」がプレミアムユーザー向けに本格始動:年利6%、Visaカード提供、銀行口座不要の衝撃
イーロン・マスク氏が長年掲げてきた金融スーパーアプリ構想が、ついに現実のものとなった。2026年6月29日、決済サービス「X Money」が一部のプレミアムユーザー向けに本格的な提供を開始した。年利6%の預金金利やVisaデビットカードの提供など、既存の銀行を脅かす強力なスペックを打ち出しているが、その持続可能性や規制上の課題も浮き彫りになっている。
■構想から4年、ついに始まった一般提供への動き
イーロン・マスク氏がTwitter(現X)の決済ビジネス構想を最初に明かしたのは2022年の投資家向け資料だった。それから4年の歳月を経て、元XのCEOであるリンダ・ヤッカリーノ氏による2024年のVisa提携発表、2026年2月の社内ベータテストなどを経て、ついに実用化の段階に至った。
X Moneyの責任者を務めるドゥルブ・バトゥラ氏が決済専門メディア「PYMNTS」に語ったところによると、2026年6月25日に「Premium+」会員向けに先行リリースされ、フィードバックの収集が開始された。その後、6月29日にはより広範な認証済みユーザーへと対象が拡大されている。ユーザー間で送金を受け取ること自体が利用権限の有効化トリガーになる仕組みも報告されており、公式なウェイトリストなしで急速に普及する可能性がある。
■X Moneyが提供する機能と「1000万ドル」の預金保護スキーム
X Moneyの責任者であるバトゥラ氏や、XおよびxAIのデザイン責任者であるベンジ・テイラー氏が認めた仕様によると、提供される機能は多岐にわたる。ユーザーのXハンドル名がレーザー刻印された黒い金属製のVisaデビットカード、Xアカウント間での個人間(P2P)送金、アプリ内での公共料金支払い、電信送金、小切手の郵送などが可能だ。預金には最低残高の制限なしで年利6%の金利が適用され、買い物時には3%のキャッシュバック、海外取引手数料やATM引き出し手数料も無料とされている。
注目すべきは、連邦預金保険公社(FDIC)の保険を最大1000万ドル(約16億2000万円、1ドル=162円換算)まで適用できるスキームだ。通常の預金はニュージャージー州を拠点とするCross River Bank(FDIC加盟行)に預けられ、上限25万ドル(約4050万円)まで保護される。しかし、特定のPremium+会員が「X Cash Sweep Program」を利用すると、預金が自動的に複数の提携銀行に分散配置され、各行の保険上限以下に抑えることで、実質的に最大1000万ドルまでの保護を実現する。これはフィデリティなどの大手金融機関も採用している高度な技術的仕組みである。
■銀行免許を持たないXが「年利6%」を提供できる理由
X Moneyは自社で銀行免許(バンキング・チャーター)を保有していない。StripeやCoinbaseなども採用している「Banking-as-a-Service(BaaS)」モデルを採用しており、ライセンスを持つCross River Bankが規制対応やインフラを提供し、Xが顧客向けのインターフェースを担う。決済の清算には、リアルタイム決済ネットワークである「Visa Direct」が活用されている。
フィンテックアナリストらによると、現在の米連邦準備制度の政策金利(4.25%〜4.50%)を大きく上回る「年利6%」という破格の金利は、主に「顧客獲得コスト(CAC)」として機能しているという。通常のフィンテック企業は預金獲得のために多額の広告費を投じるが、Xにはすでに約5億7000万人の月間アクティブユーザーが存在する。広告費をかけずに顧客を誘引できるため、その分のコストを金利に上乗せして還元している形だ。ただし、この高金利が恒久的なものか、あるいは残高上限があるのかといった詳細な契約条件(Truth in Savings開示)は、6月29日時点でまだ公表されていない。
■規制当局からの厳しい視線と未解決の課題
この野心的なローンチに対し、ワシントンからの警戒感は強い。上院銀行委員会のエリザベス・ウォーレン議員は、マスク氏に対し書簡を送り、年利6%の原資やデータの収益化、Cross River Bankが過去にFDICから受けた是正措置命令との関連性について疑問を呈した。また、マスク氏が政府効率化部門(DOGE)のシニアアドバイザーを務めていることによる利益相反の懸念も指摘されている。
さらに、ニューヨーク州やマサチューセッツ州など、Xが資金移動業者(マネートランスミッター)のライセンスを取得していない一部の州(現時点で全米41州とコロンビア特別区で取得済み)では、X Moneyは利用できない。ニューヨーク州の議員らは、Xの本人確認(KYC)の脆弱性を理由に、ライセンスの付与を拒否するよう州当局に求めている。
■欧米市場で「スーパーアプリ」は成功するか
マスク氏が目指すのは、中国の「WeChat(微信)」のような、メッセージ、決済、SNS、ECが融合したスーパーアプリだ。しかし、中国とは異なり、米国をはじめとする欧米市場にはすでに強固な銀行インフラや、PayPal、Cash App、Venmo、Apple Payといった競合サービスが乱立している。消費者が「すべてを1つのアプリにまとめる」ことを望むかどうかは不透明だ。
また、Xが抱える「信頼性」の課題も大きい。認証済みアカウントによる詐欺行為や、過去の広告主離れなどの問題が指摘される中、ユーザーが自身の貯蓄をXに預ける決断をするかどうかは、今後の大きな試金石となるだろう。
■注目ポイントQ&A
●X Moneyは安全ですか?本当にFDIC(連邦預金保険公社)の保険は適用されますか?
はい、適用されます。ただし、X自体が銀行なのではなく、提携先であるCross River Bankが預金を保持するため、同行を通じて標準で最大25万ドルまでのFDIC保険が適用されます。さらに、Premium+会員向けの「X Cash Sweep Program」を利用すれば、複数の提携銀行に預金が自動分散され、最大1000万ドルまで保護を拡大できます。
●なぜ一般的な貯蓄口座よりも大幅に高い「年利6%」を提供できるのですか?
この高金利は主に顧客獲得のためのプロモーション費用(顧客獲得コスト)として機能しています。Xにはすでに膨大なユーザーベースがあるため、一般的なフィンテック企業のような多額の広告費をかける必要がなく、その分を高金利としてユーザーに還元できています。ただし、この金利が一時的なものか、あるいは残高制限があるのかといった詳細な規約は現時点で公開されていません。
●日本国内でも利用できますか?
現時点では利用できません。X Moneyは現在、資金移動業者のライセンスを取得している米国の41州およびコロンビア特別区でのみ提供されています。ニューヨーク州やマサチューセッツ州など、ライセンス未取得の米国一部地域でも利用不可となっています。
元記事: X Money Goes Live for Premium Users: 6% APY, Visa Card, and Zero Bank Account Required
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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