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日銀人事でにじむ緩和継続姿勢 高市首相の意向が市場に波及

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政府が示した日銀審議委員人事を受け、市場では一時的に利上げ観測が後退した。新たに選出された浅田統一郎氏と佐藤綾野氏は、いずれもリフレ派として知られる。金融緩和を通じた景気下支えを重視する立場と受け止められている。
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高市首相はこれまで、需要創出を通じた成長重視の姿勢を明確にしており、財政出動を成長の呼び水とし、金融政策には景気を下支えする役割を求める立場だ。今回の人事は、その戦略と整合的との受け止めが市場で強まっている。
また直近では、高市首相が日銀の植田総裁と会談し、金融政策を巡って意見交換を行っている。報道内容からは、早期の追加利上げに慎重な姿勢を間接的に示したことがうかがえることから、日銀に対し、拙速な正常化を避けるよう求めるメッセージを送ったかたちだ。
■リフレ派の起用が示す方向性
浅田氏と佐藤氏はいずれも、デフレ脱却や需要創出を重視する論調で知られる。物価安定だけでなく、名目成長の押し上げを重視する立場であり、市場では、金融引き締めを急がない構成になるとの見方が強まった。
これにより、利上げ継続による景気減速リスクは低下し、株式市場には安心感が広がり、日本株の下支え要因となっている。
■提示タイミングが示す政権の意思
今回の人事で注目すべきは、人選そのものだけではない。提示されたタイミングも重要である。日銀の審議委員は兼職が認められていないため、現職の大学教授などが就任する場合、辞任や後任調整など事前準備が不可欠となる。
そのため、通常は一定の余裕を持って前倒しで人事を示す必要がある。こうした事情を踏まえると、今回の動きは官僚主導の慣例的人事というより、政権側の意思が強く反映された可能性がある。市場では、金融引き締めを急がず景気回復を優先する姿勢が示されたとの見方が広がった。
■成長率1%未満での利上げの是非とインフレとのせめぎ合い
日本の実質成長率は1%に満たない水準にとどまっている。こうした環境下で積極的に利上げを進めることには、成長面から疑問の声もある。景気回復の芽を摘むリスクが意識されるためだ。
一方で物価上昇圧力が続くなか、インフレ抑制を重視する立場も理解できる。
金融政策は物価安定が本来の使命であり、成長支援と物価抑制のバランスは難しい。また米国とイスラエルによるイランへの攻撃を受けて、ホルムズ海峡が長期閉鎖ともなれば、更なるインフレ加速が懸念されることから、エネルギー価格を通じた輸入インフレが再燃する可能性も否定できない。
そうなれば、国内需要が力強さを欠くなかでも、物価上昇だけが先行する構図となり、金融政策のかじ取りは一段と難しくなる。
成長率が低位にとどまる局面での利上げは、景気回復の芽を摘みかねない。一方で、外的要因によるインフレが強まれば、物価安定を使命とする日銀としては無視できない。
内需の弱さと外部要因の物価上昇という二律背反のなかで、政策判断はより高度なバランス感覚を求められることになる。(記事:Osaka Okay・記事一覧を見る)
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