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イギリス英語には、平穏な場をかき乱す行動を示す比喩が多い。その中でも、今回紹介する「to put a cat among the pigeons(鳩の群れの中に猫を放つ)」は、最も視覚的で皮肉な表現の一つである。
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■To Put a Cat Among the Pigeons
この表現が英語で確認できる最古の用例は、19世紀半ばである。その起源は、「dovecote(鳩舎)」に猫を放つという発想だ。
鳩の集団に猫を放てば何が起こるかは、想像に難くないだろう。当然ながら大混乱になるわけだが、そこから転じて、平穏な集団を混乱させる行為を象徴するイディオムとして根付いていった。
ちなみにこの比喩に近い発想は、1706年にイギリスの翻訳家・辞書編纂者であるJohn Stevens (c.1662-1726) が編んだ『A New Spanish and English Dictionary』にも見られる。
そこでは、スペイン語の諺として「Anda la gáta en el palomár(猫が鳩舎にいる)」が紹介されており、女性の集団に男が紛れ込み、騒ぎになるような状況という注釈がある。
比喩構造の共通性から、こうしたイベリア系の諺が「to put a cat among the pigeons」の成立に間接的な影響を及ぼした可能性も、指摘されている。
■イディオムが普及した背景
このイディオムが広く普及したのは、イギリス植民地時代のインドにおける賭け事も関係していると言われている。
当時、野生の猫を鳩の囲いに放ち、どれだけの鳥を仕留めるかに金を賭ける風習があったという。この残酷な娯楽の光景が「突然の混乱を引き起こす」という比喩として転用され、19世紀以降、英語圏に定着した。
今日では、政治やビジネスの文脈で、波紋を呼ぶ発言や行動に対して使われることが多い。たとえば、機密情報の暴露や、組織の不正を内部告発する行為などがそれにあたる。
なおこのイディオムの動詞部分は、「put」だけでなく、「set」や「throw」などのバリエーションも生まれたが、意味はいずれも同じだ。「場をかき乱す」「波紋を呼ぶ」といったニュアンスに違いはない。
例文
・His unexpected resignation really put the cat among the pigeons at the company.
(彼の突然の辞任は、社内に大きな波紋を呼んだ)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)
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