佐賀県唯一の百貨店「佐賀玉屋」、京都市の不動産会社「さくら」に全事業譲渡へ

2023年12月12日 08:22

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 経営不振に陥っている佐賀県の百貨店「佐賀玉屋」(佐賀市中の小路)が、京都市の不動産会社「さくら」(京都市下京区)に全事業を譲渡し、再建を図ることになった。名称を変更せず、百貨店事業を継続する方向で、耐震性に問題が発覚した本館を建て替える。佐賀県が百貨店ゼロとなる事態は避けられそうだが、地方百貨店の苦境があらためて浮き彫りになった。

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 佐賀玉屋は江戸時代後期の1806年、佐賀県小城市で荒物店として創業。昭和初期の1933年から佐賀市呉服町で百貨店業に参入、1965年に現在地へ移転した。店舗は地下1階、地上6階建ての本館と地下1階、地上7階建ての南館で構成され、売り場面積が約1万6,000平方メートル。佐賀県では唯一の百貨店となっている。

 ピーク時の1997年2月期決算では165億円の売り上げがあったが、2023年2月期決算は50億円を下回り、2億7,300万円の純損失を出した。福岡市の百貨店や佐賀市郊外に出店したショッピングセンターとの競争が激化したうえ、インターネット通販の普及で若い世代の百貨店離れに拍車がかかったためだ。

 しかも、佐賀県と佐賀市が本館を耐震診断した結果、震度6以上の大規模地震で倒壊の可能性があると指摘された。50億円近い負債を抱えていることから、さくらに本館の建て直しと経営再建を委ねることにした。パートを含む約140人の従業員は雇用を維持されるが、創業家出身の田中丸雅夫社長は退任する見通し。

 地方百貨店は訪日外国人観光客や富裕層の需要が少なく、人口減少と高齢化の影響が大きい。このため、各地で閉店が相次ぎ、山形県と徳島県が百貨店ゼロになったほか、島根県が2024年1月、岐阜県が7月にゼロ県に加わる。(記事:高田泰・記事一覧を見る

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