武田薬品の「下方修正も15年ぶり増配」を、どう読むべきか!?

2023年11月25日 08:29

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 武田薬品工業(東証プライム)の今期決算計画・10月26日の下方修正を目の当たりにして、大手医薬品企業の収益の「習性」を改めて痛感した。またクリストフ・ウェーバー社長の「妙な意地」も覚えた。

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 前2023年3月期の「12.8%増収、6.4%営業増益、37.7%最終増益、180円配」に対し、今3月期は「4.7%減収、28.8%営業減益、55.2%最終減益、8円増配188円配」の期初計画で始まった。

 その理由は「米国でのVYVANSF(注意欠陥/多動性障害治療薬)」「日本での高血圧症治療薬(アジルバ)」の特許切れ。加えて「新型コロナ感染症ワクチンの売り上げ減」と説明された。この限りでも大手医薬品の収益が「(大型)新薬の寄与」と、「大型薬の特許切れ」に左右されるかを物語っている。

 では修正後の「1.2%の減収(3兆9800億円)、54.1%の営業減益(2250億円)、70.7%の最終減益(930億円)」の意味するところは・・・

 「クローン病に伴う肛門の病変:複雑痔瘻治療薬アロフィセルが、米国の治験で目標の評価項目を達成できなかった」「2021年にFDAから条件付きながら販売できる“迅速承認”を受けていた肺癌治療薬:エクスキビティが、その後の治験で効果が示せず米国での販売を取りやめることにした」と説明された。

 前者は日本・欧州では既に販売済みだが米国での可能性が遠のいたことで、無形資産に計上していた研究開発費など740億円を損失計上した。後者は米国以外での販売を止める公算が高まったことから、約285億円の損失を計上した。

 会見に応じ記した趣旨の発言をしたウェーバーCEOは「二つの薬の治験失敗は、将来的な売上高への影響は500億円以下に留まる」と弁明したが、ゆえに会見に参加した記者には「とはしても、何故いま増配なのか」という思いが膨らんだとされる。

 武田薬品がアイルランドの製薬大手シャイアーを買収したのは、2019年1月。反対論は今でも聞かれる。が現状で武田薬品は世界トップテン入りの製薬企業と成り、営業利益は買収前の水準に戻っている。

 買収後は有利子負債返済のため国内資産売却を計ってきたが、今年「大阪十三の血しょう分画製剤の製造能力を、1000億円を投じ5倍に高めコア事業に仕立てる」とした。財務の悪化から抜け出した、という宣言と受け取れる。15年ぶりの増配も証しとして・・・ということであろう。

 株価動向をみると9月15日の年初来高値4873円に対し、下方修正後の10月30日には3981円の同安値に下落。時価は4100円台半ば、予想税引き後配当利回り3.6%強。武田薬品の動向についてはIFIS目標平均株価(4794円)の算出者の姿勢に象徴的か・・・。13人中7人は「強気」も6人は「中立」。強気ばかりでは臨めないというところか・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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