100社以上に違法カルテルの疑いで、損保大手4社が追い込まれる窮地!

2023年10月16日 07:49

印刷

 損保ジャパンがビッグモーターに対して行った、抜け駆けのような行為で批判の矢面に立たされていた頃、損保大手4社が雁首を揃えたカルテル疑惑が発覚していた。

【こちらも】ビッグモーターとの取引で、損保ジャパンが堕ちた闇!

 22年12月、東急グループが実施した火災保険の入札で、4社揃って保険料が異常な値上がりをしていた。不審に思った東急側が調査を始めたことで、事前に4社間で保険料の金額調整が行われていたことが発覚した。

 問題が深刻なのはその後も同様の事例が次々と発覚し、業種を問わず自治体向けにまで対象が広がって、既に100社以上が被害を受けていることが判明したことだ。

 独占禁止法が規定するカルテル行為にはいくつかの種類があるが、今回の想定されるのは「価格カルテル」と呼ばれるケースだ。複数の事業者が商品やサービスの価格を事前に調整するもので、違反した場合に課徴金を課せられたり、刑事罰の対象になったりする重大な犯罪行為だ。

 6月19日、金融庁は東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、あいおいニッセイ同和損害保険、三井住友海上火災保険の4社に報告徴求命令を出している。

 保険料というのはわかりにくい。個人が生命保険・火災保険・自動車保険などに加入する際に、保険の効力の及ぶ範囲については相当神経を使うにしても、保険料率となると追求する人は限られる。業者の窓口担当者でも、料率の算定方法を適切に説明できるだろうか。「本社が・・・・」で煙にまかれるのが関の山だ。

 今回の大問題を見抜いた東急グループですらも、年間30億円程度だった保険料の見積り額が4社揃って40億円程に値上がりしたことに不審を抱いだことが発端で、保険料形成のメカニズムを突いたものではなかった。

 損害保険の引き受けが共同で行われるのは珍しくない。殊に、規模の大きな保険を1社で受けるリスクは計り知れないから、リスク分散の目的により共同で保険を引き受ける。日本の場合は今日までの様々な要因で、企業保険を引き受けられるような大手損害保険会社は、疑惑が集中している僅か4社に集約されているから、談合する場合も話が早い(皮肉)かも知れない。

 ビッグモーターが損保ジャパンという企業の素顔を浮き出させるきっかけを作ったとすれば、共同保険に関わるカルテル問題は、損害保険大手4社の闇を突いたものである。

 業務上は激しい競争を繰り広げている大手4社であっても、下地に談合があれば社内決済は軽いものだったろう。「4社とも同等の保険料に設定しています」と報告されれば、安心して決済印が押せるだろうが、1歩踏み込んで「どういうことだ」と追及する声が上がらなかったという心許ない内情をうかがわせる。

 今日の事態を招来するリスクに思いが至らなかったとすれば、お粗末極まりない話だ。「リスクに疎い損害保険会社」では、笑い話にすらならない。

 過去から引き継がれた悪習が断罪されることは、伏魔殿と化した損保業界にとって必然の事態だ。ビッグモーター絡みの問題を抱える損保ジャパンには、踏んだり蹴ったりの悪夢のような日が続いたとしても、自業自得と見る社会の視線は厳しい。

 損保業界自体が変わるべき節目を迎えている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事