10億光年規模の宇宙の大規模構造「銀河の泡」を発見 ハワイ大ら

2023年9月13日 08:16

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今回発見され、Hoʻoleilanaと名付けられた宇宙の大規模構造のイメージ図(画像: ハワイ大学の発表資料より)

今回発見され、Hoʻoleilanaと名付けられた宇宙の大規模構造のイメージ図(画像: ハワイ大学の発表資料より)[写真拡大]

 電磁波観測により宇宙を遡れる最も古い年代は、ビッグバンから38万年後までだ。これは宇宙の最初の38万年間は電磁波(つまり光子)が自由に動き回ることができない、超高温のプラズマで満たされた世界だったからだ。だがプラズマの世界でも、バリオン音響振動と呼ばれる音響密度波が存在し、それが現在の宇宙の大規模構造を作り出す原因となったとされる。

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 バリオン音響振動は、電磁波が自由に動き回れるようになったビッグバンから38万年後に凍結された。だがこの38万年間に音響密度波が伝わった最大距離が、宇宙の大規模構造を観測することで測定可能と考えられ、その距離は約4億9千万光年と見積もられている(この距離を宇宙の標準定規と呼ぶ)。

 ハワイ大学の科学者らを中心とする国際研究チームは、直径約10億光年(つまり宇宙の標準定規の約2倍に相当)にも及ぶ宇宙の大規模構造である「銀河の泡」発見したと発表した。研究論文は米国のアストロフィジカルジャーナルで公開されている。

 この「銀河の泡」は巨大すぎて肉眼で捉えることは不可能だが、地球から8億2千万年光年離れたところにある巨大な空洞で、その規模は天の川銀河の1万倍にも及び、その中心部に牛飼い座超銀河団を内包しているという。

 宇宙の標準定規にほぼ対応する規模の大規模構造が発見されたのは、今回が初めてだが、今後このような「銀河の泡」が、宇宙のいたるところで発見される可能性がある。なぜならばバリオン音響振動の起点は、1カ所とは限らないからだ。また複数の波紋が重なり合えば「銀河の泡」は球体ばかりではなく、複雑な形状のものが発見されても不思議はないだろう。

 地球上では、音は大気中を秒速340m程度で伝わるが、バリオン音響振動は光速の半分をやや上回る超高速で、プラズマの海を伝播していたと考えられている。最初に示した通り、宇宙最初の38万年間を電磁波で捉えることはできないが、プラズマを伝わる波が138億年後の現在の宇宙にその爪痕を残し、それを人類が今発見できたことは驚きだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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