M&A軸に巨大な外食業となった:ゼンショーHDの創業からの足跡

2023年7月21日 08:29

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 ゼンショーホールディングス(東証プライム。以下、ゼンショーHD)。【賃上】という見出しの材料欄を読み、こんな思いが頭を過ぎった。

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 『11年連続で正社員のベア実施(平均9.5%昇給)、引き上げ額過去最高で定着率向上を狙う』。一昔前に店舗従業員の過酷な働き方から、「ブラック企業」のレッテルを貼られたことがある。パート・アルバイトの勤務体系も改善され、賃金も上昇傾向なのだろうか!?と。『5月に独で持ち帰りすし(2021年末221店舗)等展開の企業買収』。ゼンショーHDのビジネス展開はM&Aが駆使されているのだな、と。

 ゼンショーHDは1982年、現CEOの小川賢太郎氏により設立された。巷間伝えられる設立に至る経緯は、興味深い。全共闘運動に関わり、東大を中退。港湾労働者を経て、ベトナム戦争を目の当たりにし「資本主義のもとで貧困をなくす」と痛感。1978年に吉野家に入社も会社更生法申請(80年)を契機に、82年ゼンショー(すき家1号店)を設立。

 2011年3月期に売上高で日本マグドナルドを上回り、外食最大手にのし上がった。外食No1の道程は、M&Aの足跡と重ねることができる。

 ★2000年:ココスジャパン(ファミレス)を譲受。★01年:ぎゅあん(焼肉・しゃぶしゃぶ)を譲受。★02年:ココスジャパンがビッグボーイ(肉料理レストラン)を譲受。★05年:なか卯を譲受。★06年:米国でココスレストランを展開する企業を譲受。★07年:ジョリーパスタを譲受。★08年:華屋与兵衛(和食レストラン)を譲受etc・・・

 そんなゼンショーHDもコロナの影響は避けきれなかった。2021年3月期は42%、22年3月期は24%の営業減益に晒された。が影響緩和期入り後、早々に大幅増に転じている。

 前23年3月期は「18.4%増収、135.4%営業増益、2円増配24円配」。そして今3月期は「15.2%の増収(8984億6600万円)、84.5%の営業増益(400億9000万円)、16円増配40円配」計画。

 小売業の状況を示す既存店売上高の推移は前期が前年度比108.95%。今期入り後も4-6月で119.0%。勢いを増している。至25年3月期の中計も「売上高9376億円(22年3月期比42.38%増)、営業利益568億円(6.17倍)、純益355億円(2.57倍)」予定。

 本稿策定中の時価は6000円台半ば、年初来高値ゾーン。IFIS目標平均株価の算出者は時価を割高とし5333円。過去9年半余の修正済み株価パフォーマンスは5.8倍強。押し目買い中長期構えが基本の銘柄となったと捉えるが・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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