【映画で学ぶ英語】『メモリー』、「死」にまつわる英語の表現

2023年6月9日 16:11

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 5月12日に公開された『メモリー』は、2022年に70歳を迎えたベテラン俳優リーアム・ニーソン主演のアクション・サスペンス映画だ。

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 『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)で知られるマーティン・キャンベルが監督を務め、手堅くテンポの良い作品に仕上がっている。

 今回はこの映画から、「死」にまつわる英語の表現をいくつか紹介したい。

■映画『メモリー』のあらすじ

 メキシコに住むプロの殺し屋アレックス・ルイス(リーアム・ニーソン)は、初期のアルツハイマー病を患っている。だが殺し屋に引退はない、ということで、故郷テキサス州エルパソで2人のターゲットの殺しを引き受けた。

 同じ頃、FBIで児童虐待防止の特別捜査班に所属するヴィンセント・セラ(『メメント』主演のガイ・ピアース)は、潜入捜査でメキシコ人の少女を保護した。ヴィンセントは彼女を仮設移民拘束施設から、より人間的なファミリーホームに移すよう手配する。

 一方アレックスは、最初のターゲットを始末したとき、金庫からUSBフラッシュドライブを奪う。そこにはエルパソの有力者たちが深く関与する児童売春組織の情報が収められていた。

 さらにアレックスの次のターゲットは、ヴィンセントが保護した少女ベアトリスだった。アレックスの仕事は、FBIの搜査線上に浮かび上がった売春関係者の口封じだったのである。

 子どもを搾取する犯罪に激しい義憤を感じたアレックスは、逆に人身売買組織の暴露と撲滅を自分の最後の仕事にしようと決意するのだった。

■映画『メモリー』の名言

 地元の有力者でもある売春の首謀者たちを次々に殺したことで、アレックスは警察やFBIからも追われることになる。

 ヴィンセントと対峙したアレックスは、自分が殺しを続ける理由を次の一言にまとめた。

 We all have to die. What’s important is what you do before you go.

 「人は皆死なねばならない。重要なことは、死ぬ前に何をするかだ」

■表現解説

 今回のセリフを理解するポイントは、関係代名詞whatと人称代名詞youの使い方だ。

 関係代名詞whatは、先行詞となる「もの、こと」にあたるthe thing(s)が含まれている。したがってこのセリフのwhat is importantは「重要であるもの、こと」、what you doは「(あなたが)するもの、こと」になる。

 ここで注意すべきことは、人称代名詞youが話し相手をさすばかりでなく、一般的な人びとを表す場合がある、ということである。このセリフはアレックスの信念を表現したものであるから、youは一般的な人びとを指すと考えたほうがよいだろう。

 最後のbefore you goは「行く前に」という意味だが、ここでは「死ぬ前に」という意味で使われている。

 英語でも「死ぬ」ということを直接的にdieと言ってしまうことを嫌うため、この機会にいくつかの表現を覚えておきたい。

 「亡くなる」を表す最も一般的で丁寧な表現はpass (away)で、日常会話ばかりでなく報道でも使われる。

 より劇的な表現としては、perishやmeet one’s makerがあげられる。夭折した場合にはmeet an untimely end、大義に殉じた場合にはmake the ultimate sacrificeという表現もある。

 テレビドラマのタイトルにもなったbe six feet underは、死んで埋葬されている状態を表す。棺桶を地中に埋める深さに由来する表現だ。

 さらにヒューマンドラマ映画『最高の人生の見つけ方』の原題で、日本でも定着しつつある「バケットリスト」もあげておきたい。

 生きている間に自分がやりたいことをまとめたリストがbucket listで、死ぬを表すスラングkick the bucketに由来する。「バケツを蹴る」ことが死を意味する理由には諸説あるが、定説は存在しない。(記事:ベルリン・リポート・記事一覧を見る

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