FTXの破綻が炙り出した、暗号資産交換業者が抱える問題

2022年11月17日 07:59

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 膨大な負債を抱えた暗号資産(仮想通貨)交換業者、FTXトレーディングがアッと言う間に行き詰まり、11日に米連邦破産法(11条)の適用を申請して以降、暗号資産業界では過去最大の経営破綻に至った余波が今も続いている。

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 当初伝えられたところでは、債権者が10万人以上で、資産や負債はどちらも100億ドルから500億ドル(約1兆4000億円~7兆円)の範囲と言うから、概要そのものでしかなかった。

 19年に設立されたFTXは、21年7月には100万人を超える個人客を抱えていたようだから、直前の顧客数は更に膨らんでいるはずだ。そこから類推するだけで、債権者は慌てて伝えられた10万人を遥かに凌駕していることは間違いない。

 当時CEO(経営最高責任者)だったサム・バンクマンフリード氏が今年5月に明らかにした、「FTXは1日約150億ドル(約2兆1000億円)に上る取引を処理して、シェアは全世界の暗号資産取引の10%にもなっていた」という言葉もそれを裏付ける。

 余波の中には、FTXの日本法人で12日にかけて行われた取引の際に、為替レートが1ドル98円というのもあった。米本社で取引が停止された煽りを受けて、僅かに開いていた日本法人の窓口に取引が殺到した。ところが、日本法人の取引が円貨だけに限られていたため、為替でロスを出してもFTXから出金しようとして、パニックになった人が少なくなかったことを物語る。

 FTXの破綻による影響は、FTX以外の交換所からも現金が引き出されるという形で大きく拡大しているようだ。もともと実態がないことが不安視されていた暗号資産。大手の交換所でさえも杜撰に扱われていたことが明るみに出たから、不安に駆られた投資家が保守的な姿勢を強めるのは当然の行為だ。懸念されるのは、資金の流出に耐えられなくなった交換所から新たな破綻先が名前を連ねる事態だ。

 FTX破綻のトリガー役に擬せられている業界最大手のバイナンスですらも、7日間で10%以上も残高を減らした。当局の監督と高い信用で担保されている銀行ですら、「取り付け騒ぎ」にさらされると案外脆い。ましてや指導や監督という言葉の対局にいたかのような交換所であれば、なおさらである。

 規制強化派だったと伝えられるバンクマンフリード氏が主宰していたFTXが破綻したことは、今後の暗号資産交換所の在り方を暗示させる事態と言える。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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