丸井が勝ち残りを賭けた、「業態転換」の実際と成果

2022年8月19日 07:51

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 丸井グループ(東証プライム、以下丸井)の3代目社長:青井浩氏は、「2007年から7年間は経営危機に陥っており・・・」と振り返っている。どういうことか。

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 青井氏が社長に就任したのは、2005年。丸井はそれまで「若者向けのファッション」を主軸とする好立地の百貨店事業と、「クレジットカード(割賦販売用カード+小口金融)」で右肩上がりの成長階段を昇っていた。だが青井氏は、「大成功した期間はバブル前の5~6年。自分が社長に就任したころには、そのビジネスモデルは賞味期限が切れていた」としている。どういうことか!?

 青井氏はそのことを「損益分岐点」で説明している。損益分岐点とは改めるもないだろうが「売上高と費用が等しくなる」点。つまり売上高が損益分岐点以下に留まれば損失が生じ、それ以上になれば利益が生じる。青井氏はこんな風に説明している。

 「かつての丸井の損益分岐点は9割近くと、物凄く高かった。が、それでも急角度の利益が出ていた。現に1等地の店でも、家賃の何倍もの利益が出ていた。(売り上げが)右肩上がりの時代には、いいビジネスモデルだった」

 「だがバブル崩壊後は、売り上げが家賃を割り込んでいる店が出てきた。調べて見ると全店の6割の区画で、収入が家賃を下回っていた」

 そこで青井氏は社長就任後、どう舵を切ったのか。一口で言えば丸井を仕入れ販売型の「脱百貨店」のレールに乗せ7年余りをかけ、テナント誘致による賃貸借型ショッピングセンターへとビジネスモデルを変えていったのである。社員の間には戸惑いが強かった。「丸井を潰す気か」という声も高かった。「紆余曲折はあったが、遣り遂げた」(青井氏)。

 手元に2014年第1集号(新春号)の四季報がある。【転換】という見出しで材料欄に、こう記されている。『従来の消化仕入れから、定期借家契約でテナント入居拡大に本腰。順次改装進め、顧客ニーズ強い生活雑貨の導入急ぐ。16年春、九州初の博多駅前に出店決定』。

 転換なった丸井の足元の収益動向は堅調。前2022年3月期の「1.5%増収、141.6%営業増益、1円増配の52円配」に続き今期も、「6.1%増収(2220億円)、11.5%営業増益(410億円)、6円増配58円配」計画。前期決算については「フィンテックのカードクレジットの取扱高が全体を牽引したことに加え、小売りの客数回復で初の3兆円を上回り・・・」と説明されている。

 株価も「転換」を反映している。青井氏が「経営危機」と称した終盤の2013年1月の始値に対し時価は、修正値ベースで4倍近いパフォーマンスを残している。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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