建設技術研究所は上値試す、22年12月期減益予想だが上振れ余地

2022年7月13日 16:46

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 建設技術研究所<9621>(東証プライム)は総合建設コンサルタント大手である。グローバルインフラソリューショングループとして飛躍することを目指し、グループ協業による事業拡大などの重点施策に取り組んでいる。7月5日には「CTIグループAI倫理指針」を策定・公表した。22年12月期は事業拡大に向けた積極投資で減益予想としているが、保守的な印象が強く上振れ余地がありそうだ。防災・減災対策やインフラ老朽化対策など国土強靭化政策関連で事業環境は良好である。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は水準を切り上げて年初来高値圏だ。そして21年11月の高値に接近している。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■総合建設コンサルタント大手

 総合建設コンサルタントの大手である。河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。20年8月には連結子会社の建設技研インターナショナルの株式を追加取得して完全子会社化した。海外では英国Waterman Group Plc(ロンドン証券取引所上場)を連結子会社としている。

 21年12月期のセグメント別構成比は、売上高が国内建設コンサルティング事業72%、海外建設コンサルティング事業28%、利益(調整前営業利益)が国内建設コンサルティング事業86%、海外建設コンサルティング事業14%だった。収益面では公共事業への依存度が高い。

■グローバルインフラソリューショングループ目指す

 グローバルインフラソリューショングループとして飛躍することを目指し、CTIグループ中長期ビジョン「SPRONG2030」では、目標数値として30年度の売上高1000億円(単体600億円、主要グループ会社400億円)(国内720億円、海外280億円)、営業利益率9%(単体10%、主要グループ会社7%)、社員数5000人を掲げている。

 そして中長期ビジョン目標達成に向けた第1ステップとなる中期経営計画2024では、目標数値として24年12月期の受注高850億円、売上高850億円、営業利益68億円、営業利益率8%、ROE10%以上、および建設技術研究所単体ベースの売上高550億円、営業利益率10%、社員数2300人を掲げている。

 セグメント別には、国内建設コンサルティング事業の受注高が630億円、売上高が630億円、営業利益が60億円、営業利益率が9.5%、海外建設コンサルティング事業の受注高が220億円、売上高が220億円、営業利益が8億円、営業利益率が3.6%の計画としている。

 CTIグループ全体の重点施策として、グループ協業の推進による事業拡大、主要グループ会社の安定経営と収益性の改善、グループガバナンスの強化、グループ全体でのサステナビリティ経営の推進に取り組む。社会の課題に応じた重点事業分野(防災・減災、都市・建築、土壌・地盤・地質、環境マネジメント、エネルギー、PPP事業など)を設定し、その売上高伸長を目指す方針としている。

 21年12月にはサステナビリティ委員会を設置した。さらに、健康経営、ダイバーシティ&インクルージョン、従業員の成長と自律を縫合した「CTIウェルビーイング」に取り組むため、社内宣言ならびにCTIウェルビーイング基本方針を策定した。22年1月には、企業活動を通じて次世代育成に貢献するため一般事業主行動計画を策定した。

 22年6月には「知的財産に関する基本方針」を策定・公表した。また、インフラ整備を通じた「サステナビリティ」の実現に向けて、さまざまな提案に取り組むための方針として「CTIグループ・サステナブルチャレンジ」を策定・公表した。7月5日には、AIを適切に活用していくことを社内外に宣言することを目的として「CTIグループAI倫理指針」を策定・公表した。

■新分野・新事業への展開を加速

 21年9月には、グループ会社の日総建、およびファインコラボレート研究所との3社間で業務提携した。既存業務での連携、新分野の創出、相互の人材交流を行う。

 22年1月には新分野や新事業への展開を加速するため、SBIホールディングス<8473>の子会社SBIインベストメントが運営する「SBI4+5ファンド」に出資した。本ファンドが出資するスタートアップ企業を支援するとともに、スタートアップ企業との連携による技術開発や事業開発に取り組む。また、京成バス、損害保険ジャパン、アイサンテクノロジー<4667>および埼玉工業大学との5者共同で、千葉市未来技術等社会実装促進事業の自動運転車社会実装サポート事業に採択された。22年2月には陸地コンサルタント(広島県東広島市)と業務提携した。

 22年2月には、東京都豊島区が実施するPPP事業(公民連携事業)である旧第十中学校跡地への野外スポーツ施設整備・管理運営事業において、地域企業を含むコンソーシアムの代表企業として事業を実施すると発表した。

 22年3月には、22年1月に公表した「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画」について、よりスピード感をもって達成するために、計画期間を従来の「22年1月1日~24年12月31日の3カ年」から「22年1月1日~23年12月31日の2カ年」に短縮した。また、大分県由布市と「地域自治を大切にした住み良さ日本一のまち・由布市」の実現に向けて、交通・都市・地域活性・防災をテーマに地域の課題解決を推進することを目的に包括連携協定を締結した。

■22年12月期減益予想だが保守的

 22年12月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非記載、環境総合リサーチを新規連結)は売上高が780億円、営業利益が64億円、経常利益が65億円、親会社株主帰属当期純利益が43億円としている。収益認識会計基準適用前の21年12月期実績との単純比較、売上高は4.8%増収、営業利益は8.5%減益、経常利益は8.7%減益、親会社株主帰属当期純利益は3.8%減益の形となる。配当予想は21年12月期と同額の60円(期末一括)としている。

 セグメント別には、国内建設コンサルティング事業の受注高が3.9%減の564億円、売上高が3.9%増の558億円、営業利益が3.9%減の58億円、海外建設コンサルティング事業の受注高が12.4%減の226億円、売上高が7.2%増の222億円、営業利益が37.0%減の6億円の計画としている。

 グループ合計の受注高は6.5%減の790億円の計画としている。22年12月期の受注環境としては、海外におけるコロナ禍を含む不安定な情勢が継続し、事業の中断・遅延や新規業務発注の見送り・延期などの不透明感があり、さらにグループ全体としてのエネルギー分野など新事業・分野への展開の注力、労働時間削減などを考慮して、受注を抑制する方針としている。

 なお22年3月にはグループ会社の建設技研インターナショナルが、クボタ建設、神鋼環境ソリューション、北九州ウォーターサービス、TECインターナショナルと構成するコンソーシアムで、カンボジア王国カンダール州タクマウ市におけるタクウマ上水道拡張計画を受注した。

 売上高については増収を見込んでいる。収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法(完成基準)に比べて第1四半期(1~3月)の売上構成比が高まる見込みとしている。営業利益については、事業拡大に向けた積極投資で研究開発費や人件費が増加するため減益予想としている。

 第1四半期は売上高が235億38百万円、営業利益が34億90百万円、経常利益が35億31百万円、親会社株主帰属四半期純利益が24億44百万円だった。グループ合計の受注高は前年同期比18.9%増の246億47百万円だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が127億24百万円増加、売上原価が85億19百万円増加、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ42億04百万円増加している。なお収益認識会計基準適用前の前年同期実績は売上高が127億41百万円、営業利益が4億41百万円、経常利益が5億01百万円、親会社株主帰属四半期純利益が3億26百万円だった。

 通期予想は据え置いている。事業拡大に向けた積極投資で減益予想としているが保守的だろう。第1四半期の進捗率は売上高が30.2%、営業利益が54.5%、経常利益が54.3%、親会社株主帰属当期純利益が56.8%だった。公共事業への依存度が高く、業務の進捗が年度末に集中するため売上高・利益とも第1四半期に偏重する特性があるが、この点を考慮しても概ね順調であり、通期予想に上振れ余地がありそうだ。防災・減災対策やインフラ老朽化対策など国土強靭化政策関連で事業環境は良好である。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は順調に水準を切り上げて年初来高値圏だ。そして21年11月の高値に接近している。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。7月12日の終値は2621円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS304円11銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の60円で算出)は約2.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2734円99銭で算出)は約1.0倍、そして時価総額は約371億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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