「餃子の王将」は、1日にして成らず 創業者の足跡を辿る

2022年6月14日 07:31

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 王将フードサービス(プライム市場。以下王将フード)が今3月期、破竹のスタートダッシュを見せている。既存店売上高で4月:前年同期比106.0%、5月:117.6%と、ともに創業以来の過去最高を連続更新している。

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 今期計画「6.2%増収(900億2900万円)、8.0%営業増益(75億1600万円)」に早くも、「上方修正、連続増配」の指摘が聞かれる。5月14日に餃子やチャーハンなどグランドメニュー14品目(全体の約2割)を、20円から30円値上げしたにもかかわらずだ。関西で産声をあげたがいまや北海道から九州、そして海外と計734店舗を運営している。

 王将フードは創業者の故加藤朝雄氏が1967年、京都市四条大宮に「王将」という中華料理店を開業したのが始まり。加藤氏は1924年生まれ。王将を設立したのは43歳の時。生家の小さな魚屋の生計を助けるため9歳の時から、新聞配達を始めあれこれの職で家計を助けた。

 そんな加藤氏が中国・山西省臨汾に渡ったのは、兄が飲食店を経営していたためだった。帰国後、コック見習いをしていたが徴兵。1947年に日本に引き揚げた後、料理店勤務・行商人・進駐軍の食堂コック・薪炭商・小口金融業など様々な職歴を経て王将を開業した。

 僅か10坪の店の家族経営(本人が中華鍋を振るい、奥方が注文取り、長男が出前)でスタート。早々に軌道に乗った。他店では80円が相場だった焼き餃子を50円で商い、目玉商品としたのが引き金だった。

 加藤氏は商売人だった。2号店(山科店)の出店時には「10人前食べたら無料」といったキャンペーンを張っている。開業僅か3年で6店舗まで成長した。が、壁が待ち構えていた。王将フードの社史等にも見られるが、加藤氏はこう語っている。

 「運転手と職人は、腕があるさかい使いづらい。定着しない。ちょっとでも気にいらんことがあると、プイと辞めてしまう」

 だが、加藤氏は禍を福に転じた。

 「これまで以上に儲けた分は、みんなで仲良う分けろ」

 従業員のやる気に火がついた。売上は2倍3倍に・・

 大卒の初任給が9万円弱の75年には15万円に、79年には20万円に。開業資金の1割が用意出来ればFC店を出せるようにした。大卒者も着目するようになった。

 だがここでは詳細は記さないが、1日の労働時間は14時間以上/月の休みはゼロ・・・。働きぶりや顧客の反応如何でスパッと手厳しい対応を。「誰よりも早く一番乗りが大切。仕事は朝が勝負。意欲と活気でやるもんや」という語録も残している。いま労働基準局が耳にしたらどうなるのか・・・。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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