伊藤園、AI画像解析で茶葉の摘採時期を判断 富士通と共同で技術開発

2022年5月11日 07:32

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AI画像解析による茶葉摘採時期判断技術のイメージ(画像:伊藤園の発表資料より)

AI画像解析による茶葉摘採時期判断技術のイメージ(画像:伊藤園の発表資料より)[写真拡大]

 伊藤園は10日、AIの画像解析を用いて、茶葉を摘む時期の判断ができる技術を開発したと発表した。開発は富士通と共同で実施。伊藤園の栽培ノウハウなどを基に、富士通のAI・画像解析技術を活用した。2022年よりトライアル運用を始め、技術検証などを行う予定。23年には伊藤園が契約している茶産地での本格展開を目指すという。

【こちらも】伊藤園はAI画像解析を活用した荒茶の品質推定技術を開発

 画像解析には、利用者がスマートフォンで撮影した茶摘み前の茶葉画像を用いる。クラウドに実装されたAIが画像を解析し、判断基準となるアミノ酸量や繊維量を推定して可視化する。AIの解析結果もスマートフォンで確認できる。

 AIの画像認識アルゴリズムの開発には、富士通のAI技術と、富士通のグループ会社である富士通鹿児島インフォネットの画像解析技術を活用。AIの機械学習は、伊藤園の契約産地で撮影した画像をベースに、加工画像を含む約8,500枚の画像で実施したという。トライアルでは撮影を行う地域などを拡げる予定だ。

 開発の背景には、摘採時期の良し悪しが茶葉の収穫量と品質に直結するという難しさがある。茶葉は新芽が育つ過程で摘採されるため、時期を逃すと葉が硬化し繊維質が増えるなどで品質が低下する。一方で収穫量は摘採時期が早すぎると十分に確保できない。そのため、品質維持と収穫量の確保ができる、適切な時期の見極めが必要となる。さらに言えば摘採時期には地域差も生じる。

 これまで摘採時期の判断は一般的に、長年の経験や、専用機器での茶葉分析などに基づいて行われており、若年生産者や新規参入者にはハードルが高かった。今回の技術はそうした課題の解消に寄与する。

 伊藤園は1976年から茶産地育成事業を開始。76年から契約栽培の制度を導入し、契約した茶農家の茶葉全てを買い取っている。栽培指導や情報提供を通じ品質面でも支援している。2000年からは新産地事業として、耕作放棄地などを活用した茶園造りや運営を支援。実運営は該当地域の自治体や事業者などが担うが、伊藤園が実現に向けた技術提供などを行い、また全茶葉を買い取る。今回の技術開発もこうした茶産地支援の1つと言える。

 同社は22年2月、摘採後の一次加工を行った荒茶をAIの画像解析で品質推定する技術を開発。これまで技術習得に時間を要していた品質検査の業務支援にも着手している。開発には、農業のDX支援などを手がけるマクタアメニティのAI技術を活用。スマートフォンで撮影した農作物の画像を専用クラウドへ送信するとAIが解析を行い、甘味や塩味、酸味、旨味などの味覚測定結果を可視化する。こちらも22年春から一部契約産地でトライアル運用を開始している。(記事:三部朗・記事一覧を見る

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