2029年に地球接近の小惑星アポフィス、接近時の挙動は?

2022年3月23日 08:32

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 小惑星アポフィスは2004年に発見され、地球に衝突する可能性がある潜在的に危険な小惑星(PHA: Potentially Hazardous Asteroid)に分類されている。アポフィスのような小さな天体は、ほんのわずかな外的影響でも軌道が変化し、挙動予測が難しいため、研究対象として注目されている存在でもある。

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 また直径300m程度で万が一地球に衝突すれば、人類滅亡の危機にまでは至らないが、数千平方キロメートルにわたって甚大な被害に見舞われる。これは東京都全体が焦土と化する規模で、そのリスクは無視できない。直近では2029年4月13日に地球から3万数千kmのところにまで接近するが、その距離は月までの距離の10分の1以下と非常に近い。

 ブラジルのサンパウロ州立大学、スペインのマドリード・カルロス3世大学などの研究者は、2029年の地球最接近時に起こる事象を数値シミュレーションで推定。その結果が、英国王立天文学会月報で公開された。それによればアポフィスの密度が高い場合、公転軌道傾斜角は2度であるのに対して、密度が低い場合には4度で、その違いは2倍にも達する。

 またアポフィス表面には多くの岩石が存在すると考えられ、地球最接近時には数cm未満の岩石が宇宙空間に投げ出され、5cm程度のものでも、30年程度しかとどまることができない。最終的にアポフィスに押しとどまることができる岩石サイズは15cm以上のもので、その比率は表面全体にある岩石のせいぜい56~59%程度と見積もられている。

 この研究では潮汐効果だけでなく、日射圧も考慮されている。アポフィスの挙動に大きな影響を及ぼすのは密度と表面の岩石サイズ分布で、もしもそれがすべて5cm未満であれば、岩石の90%は地球最接近時に宇宙空間に飛散してしまうとの結論に達している。

 論文では直接言及はないが、そのような状況になれば最接近の前後数日間には流星雨が見られるかもしれない。また気になる2029年以降の地球衝突確率だが、NASAが2021年3月26日に公表した情報によれば、2068年の接近時に地球に衝突する可能性はなく、今後100年間には地球に衝突しないとのことである。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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