太陽系誕生初期の原始惑星コア、その謎を探るNASAプシュケミッション

2021年12月21日 16:15

印刷

小惑星プシュケのイメージ (c) NASA/JPL-Caltech/ASU

小惑星プシュケのイメージ (c) NASA/JPL-Caltech/ASU[写真拡大]

 2022年8月にNASAは、プシュケ宇宙船を小惑星帯に向けて打ち上げる。太陽系誕生初期の原始惑星コアの名残であると考えられている、小惑星プシュケを直接観測するためだ。NASAジェット推進研究所は20日、小惑星プシュケに関する情報を公表。それによれば、プシュケ地上からの観測では、プシュケはジャガイモのような形状で、ぼんやりと捉えられる存在にすぎないという。

【こちらも】ブラックホール誕生につながる2億光年かなたの閃光現象をキャッチか MIT

 これまでの観測で、プシュケは金属に富んだ小惑星であると考えられている。だがごく小さな天体であるため球形を保つことができず、最も幅の大きな位置でも280kmしかない。天体が球形を保つためには、最低でも直径が約400km必要で、直径が約396kmの土星の衛星ミマスが、球形を保てる最小の天体とされている。

 このような理由でプシュケは、ジャガイモのようないびつな形状をしているわけだが、それだけでなく、物質の分布状態を表す指標である密度が、場所によって著しく異なっている可能性が高いという。NASAのミッションでは、2026年に宇宙船をプシュケ周回軌道に導入させる予定だが、安全を期するため、周回軌道半径を約700kmとしている。接近しすぎてしまうとプシュケの密度の不均一性によって、軌道が乱され、コントロールを失う危険性があるからだ。

 最初は軌道かく乱リスクを避けて遠巻きに観測を進め、約20カ月間をかけて重力場の乱れの度合いを正確に測定。そのリスクを明らかにしたうえで徐々に接近を試み、最終的には85kmの上空まで近づき、より正確にプシュケの観測を行う予定である。

 このミッションは、先に示したように未知のリスクを手探りで把握しながら、最適な飛行を目指すという挑戦的なものだ。成功した暁には、太陽系誕生初期にあった原始惑星コアの金属組成の詳細が明らかにされることだろう。宇宙船に搭載できる機器の重量には制約があるため、予めどんな金属が存在しているのか予測を立て、それを正確にキャッチできる機器選定が、現在の科学者の最大の使命である。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事