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風邪に感染で新型コロナに交差免疫か 仕組みの一端を解明 理研
交差反応性T細胞の新型コロナウイルス感染に対する役割(画像:理化学研究所報道発表資料より)[写真拡大]
理化学研究所は8日、新型コロナウイルスと季節性コロナウイルス(いわゆる風邪を発症させるウイルス)の間にある交差免疫について、その仕組の一端を解明したと発表した。研究グループによれば、今回の研究成果は新型コロナについて重症度診断、ワクチン効果診断、治療薬の開発などへの貢献が期待できるという。
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■交差免疫とは?
人の体は、ウイルスなどに1度感染すると、再び同じウイルスには感染しなくなったり、仮に感染しても重症化しなくなったりする。これは人の体がそのウイルスの一部を記憶していて素早く対応するためだ。
ヒトコロナウイルスには、新型コロナウイルスの他にも、いわゆる風邪を発症させる季節性コロナウイルスがある。もし両者のウイルスの一部が類似していれば、季節性コロナウイルスに感染することで、新型コロナウイルスについて、免疫を獲得できる可能性がある。いわゆる交差免疫である。
研究グループはこのような視点から、日本人に多い免疫の型(HLA-A*24:02)について、新型コロナウイルスと季節性コロナウイルスの交差免疫性を詳しく調べた。
■記憶免疫キラーT細胞を介しての交差免疫
人の免疫の中核を担うキラーT細胞は、ウイルスに感染した細胞が細胞外に提示したウイルスの一部に反応し、その感染細胞もろともウイルスを攻撃する。この提示されるウイルスの一部をエピトープという。
まず研究グループは、新型コロナウイルスの表面に存在するスパイクタンパク質の中から、エピトープとしてQYIペプチドを同定した。そしてこのQYIペプチドが、HLA-A*24:02を持つ健常人の末梢血から80%以上という高い確率で、キラーT細胞を誘導することを確認。さらにこのキラーT細胞について、サイトカインの産出や細胞障害活性を有することも確認されたという。
研究グループによれば、このQYIペプチドは、他の季節性コロナウイルスにおいて相当するペプチドと類似性が高い。そのため記憶免疫キラーT細胞を介して、季節性コロナウイルスへの感染により新型コロナウイルスへの交差免疫が得られる可能性があるという。
今回の研究成果は今後、ワクチン接種者や既感染者について詳しく調べることで、ブレークスルー感染や重症化の予防の指標になると考えられるという。また、新しいワクチンの開発につながる可能性もあるという。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
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