その進路選択は、自分の幸せにつながる?誰もが自分の基準で人生を築ける社会を目指して(連載第4回)

2021年11月8日 11:43

印刷

記事提供元:biblion

 「住む場所を変えれば、出会う人も変わる。学ぶ場所を変えれば、新しい世界が見える」。生まれ育った都道府県の枠を超えて、地域の魅力的な高校へと進学する「地域みらい留学」という事業があります。この連載では、この事業に取り組まれている「(一財)地域・教育魅力化プラットフォーム」さんから、事業への思いとその背景にある課題についてご紹介いただきます。

その進路選択は、自分の幸せにつながる?誰もが自分の基準で人生を築ける社会を目指して(連載第4回)

 本記事の原稿は、都道府県の枠を越えて地域の高校へ進学する「地域みらい留学」事業に取り組んでいる「(一財)地域・教育魅力化プラットフォーム」(以下、地域・教育未来化プラットホーム)の辻田雄祐さん、丸谷正明さんに寄稿していただきました。
 (グーテンブック編集部)

この記事の話し手:辻田雄祐さん

この記事の話し手:辻田雄祐さん神奈川県出身。地域・教育魅力化プラットフォーム参画と同時に島根県に移住。地域みらい留学事業の統括を担当。学生時代・大学職員時代から「子どもが自立しにくい日本社会」に課題感を感じ、親子がお互い自分らしく生きていくうえで、親以外の大人との出会いや地域全体で子どもを育てることの重要性を人生のテーマとして追いかけている。

この記事の話し手:丸谷正明さん

この記事の話し手:丸谷正明さん石川県出身。「地域みらい留学365(高2留学)」の企画、運営を担当。教育関係の仕事を経て、島根大学の社会人向けオンライン講座『魅力化コーディネーター養成講座』を1年間受講。高校魅力化による地方創生を推進するべく、地域・教育魅力化プラットフォームに参画。

地域みらい留学とは

 地域みらい留学とは、一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォームによる、若者の主体的な学びや地域活性につなげるための取り組みの1つです。

 地域みらい留学とは、「都道府県の枠を越えて、地域の学校に入学し、充実した高校生活をおくること」です。
 その機会を通して意志ある若者を増やし、また地域を元気にすることを目指しています。

 地域みらい留学には現在、2つの仕組みがあります。
 1つ目は「地域みらい留学(高校進学)」。これは中学卒業後、地元ではない地域の特色ある高校で3年間を過ごすという選択肢です。
 2つ目は「地域みらい留学365(高2留学)」。こちらは高校2年生時の1年間、入学した高校に在籍しながら、地域の特色ある高校に1年間国内留学するという選択肢です。
 中学生と高校1年生に向けて、どちらも新しい高校生活の選択肢としてご用意しています。

地域みらい留学

地域みらい留学都道府県の枠を越えて、地域の学校に入学し、充実した高校生活をおくること。北海道から沖縄まで日本の各地域にある魅力的な学校には、そこでしかできない体験と新しいチャレンジが待っています。

地域・教育魅力化プラットフォーム

地域・教育魅力化プラットフォーム地域・教育魅力化プラットフォームは、意志ある若者が育つ魅力ある教育環境を実現し 新たな人の流れを生む かけがえのない一助となる」というミッションを掲げ、地域みらい留学をはじめとした、地域の高校魅力化に関わる様々なプロジェクトに取り組んでいます。

これからの地域みらい留学|越境入学の新たな選択肢「高2留学」とは

 連載第1回からお伝えしてきた通り、私たちは地域みらい留学の活動を通して、次の2つの目的を達成したいと考えています。

 ①意志ある若者の育成
 ②地域・社会づくり

 この地域みらい留学の事業において、私たちが今後力を入れていきたいのが、地域での学ぶ機会の選択肢を広げていくことです。

 そのために、2021年度から新しく始めた取り組みが、「地域みらい留学365(高2留学)」です。

 これは内閣府と(一般)地域・教育魅力化プラットフォームが共同で立ち上げた、日本ではじめての高校2年生の1年間の国内単年留学プログラムです。
 高校と自治体を支援する新しい事業として、地域・教育魅力化プラットフォームは本事業の事務局として内閣府より受託しています。 なお、弊団体では、高校3年間の国内留学事業も運営しております。

高2留学 | 地域みらい留学

高2留学 | 地域みらい留学内閣府と(一財)地域・教育魅力化プラットフォームが共同で立ち上げた「地域みらい留学365(高2留学)」。日本ではじめて、高校2年生の1年間の国内単年留学を実現しました。地元で高校生活を始めてから挑戦したいテーマが明確になった人や、短期間でも新たな環境に入っていくことで挑戦したいと考えている人も、一定数いらっしゃいます。
 この「地域みらい留学365(高2留学)」は、留学時期や期間に選択肢を増やすことで、多様な学び方にチャレンジしやすくなるよう始めた取り組みです。
 (7168)

 雲南スペシャルチャレンジ留学(島根県立大東高等学校・三刀屋高等学校)

濃密な留学体験により、自分の成長を強く感じる

 「地域みらい留学365(高2留学)」が「地域みらい留学 高校進学」と決定的に違うのは、1年間の期間限定で留学する、ということです。

 短期間に濃縮されることの魅力として、主に次の2点があげられます。

 ①地元と留学先の2つの地域を知ることで、視野が大きく広がる

 高校2年生の1年間を留学するということは、地域みらい留学をする前後で2回の越境体験をするということです。

 1回目は、地元で過ごした高校生活から、見ず知らずの地域に飛び込むという越境。そして2回目は、留学先の地域で過ごした高校生活から、地元へ戻ってくるという越境。

 高校1年、2年、3年のそれぞれの1年間で、地元と留学先の2つの地域の暮らしを知ることができます。その分出会いや経験も多くなるはずです。大きな変化のなかで高校生活を過ごすことで、自分の成長や考えの変化などをより強く感じることができると考えています。

 ②留学生活が1年間に濃縮され、より負荷の高い挑戦となる

 「地域みらい留学(高校進学)」の場合は、留学期間は3年間です。1年目でまずは地域を知る、2年目で実際に行動を起こしてみる、3年目で活動をさらに深める、など段階を踏んで留学生活をおくることができます。

 しかし、「地域みらい留学365(高2留学)」で与えられる期間はわずか1年間です。その中で、3年間の留学と同じくらい濃い経験をすることを目指しています。
 そのため必然的に、短期間でより強い負荷をかけた挑戦ができるプログラムになっているのです。

 地域生活や新たな人間関係に慣れることと、プロジェクト活動とを同時に進めることになりかなり忙しく感じるかもしれません。その分充実した日々を送ることができることが、魅力の1つといえるでしょう。
 (7169)

 山形県立小国高等学校

子どもたちに、自分で未来を描く力を

 2006年、島根県の隠岐諸島からスタートした地域みらい留学は、年々参画校を拡大し、全国的な取り組みへと発展させてきました。

 この取り組みを通して私が感じていることは、子どもたちが「自分がどういった場所で過ごしたいのか」ということに向き合うプロセスが何よりも重要だということです。
 その結果選択する進路が、必ずしも地域みらい留学でなくて良いと思っています。

 進路を検討するときに、通いやすさや偏差値だけで決めることは、思考を停止させてしまうことではないかと考えています。その進路は、自分の高校3年間の幸せにつながるものなのかどうか、しっかり考えた上で選択してほしいのです。

 地域みらい留学の目的は、「意志ある若者の育成」と「地域・社会づくり」の2つですが、これらの実現を通して、誰もが「自分はどう生きたいのか」「自分にとっての幸せは何なのか」を自分の基準で考え、選択できる社会にしていきたいと考えています。

 進学や就職、転職など、人生において選択を迫られたとき、他人のものさしではなく自分のものさしで向き合い、決断できることが大切なのではないでしょうか。

 また、都心でも地域でも、誰もが暮らしやすい社会を創出していくことで、それぞれの価値観に合った働き方・暮らし方が選べるようになったら、とても素敵なことだと思うのです。

 これまで当たり前とされてきたレールを越えて、子どもたちが自分で未来を切り拓く力を身に付けられるよう、これからも私たちにできることを続けていきたいと考えています。

地域みらい留学 活動へのご支援・ご寄付のお願い

地域みらい留学 活動へのご支援・ご寄付のお願い地域みらい留学は、この活動に共感いただいた皆様からの『ご寄付』によって、運営させていただいております。この活動を一人でも多くの中高生や地域に広げるために、「地域みらい留学 応援委員会」として月1,000円~の寄付で活動のご支援をお願いいたします。

【採用情報】ともに事業を推進するメンバーやパートナーを募集しています

【採用情報】ともに事業を推進するメンバーやパートナーを募集しています「一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォーム」では、ともに事業を推進するメンバーやパートナーも募集しておりますので、ご興味・ご関心のある方は、こちら「採用」ページより、ご連絡をお待ちしております。 元のページを表示 ≫

関連する記事



地域に「通いたい!」と思える学校を。高校の魅力は、地域の魅力につながる(連載第3回)
「自分はどう生きたいか」がわからない子どもたち。社会と関わることが、子どもの意志を育む(連載第2回)
どこで何を学ぶかは、自分で決める。都道府県の枠を越えた新しい進学「地域みらい留学」の取り組み(連載第1回)
障がいはテクノロジーで補完される時代に。障がい者をサポートする役割は、施設内から社会全体へ広がっていく(連載2回目)
障がい者施設で働く全ての職員に、正しい知識とスキルを。その支援は「虐待」かもしれない(連載1回目)

※この記事はbiblionから提供を受けて配信しています。

関連キーワード

関連記事