配偶者控除を活かした相続は、2次相続の税負担まで考慮を

2021年10月18日 07:37

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 資産運用に成功し、まとまった財産を築き上げたとしよう。自身の老後資金として有意義に使う人もいるが、将来不安の多い現代社会では、少しでも家族に残したいと節約に努める人も多いだろう。

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 そこで、1つ留意してほしいのが遺産相続の税対策である。平成27年度の法改正で、相続税の基礎控除が大幅に引き下げられた。それまで『5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)』の控除枠が、『3,000万円+(600万円×法定相続人の数)』と4割近く上限額が圧縮されている。

 たとえば、配偶者と子2人が相続する場合、基礎控除額は4800万円まで非課税となる。税改正以前は8000万円だったのだから、改正により納税対象になったケースは相当増えているのだ。

 そこで相続財産が5000万円を超える場合、よく利用されるのが配偶者控除だが、実はこの配偶者控除による遺産相続には落とし穴がある。配偶者控除では、最高1億6000万円か法定相続割合のいずれか大きい額の方まで非課税となる。そこで、とりあえず配偶者に全額を非課税で相続させるケースが目立つのだ。

 だが、相続した配偶者が亡くなった後の2次相続が問題となる。この相続では配偶者控除が使えない上に、相続人が1人減ってしまうため、基礎控除額が大幅に低くなるのだ。

 たとえば、母と2人の子が2億円の相続をするとしよう。まず、配偶者控除の上限まで利用する相続ならば、母が1億6000万円・子がそれぞれ2000万円で、相続税は540万円で済む。しかし、その後母が亡くなって1億6000万円の相続となった場合、子が8000万円ずつ相続するため、相続税は2140万円。つまり1次と2次の相続で2680万円の相続税が発生する。

 一方、法定相続通りに分与すると、母が1億万円・子がそれぞれ5000万円の相続で、1次相続の納税額は1350万円。その後母からの相続(2次)では770万円の相続税で計2120万円。法定相続の方が560万円も減税となる。

 *ただし、1次相続後に母(子との同居など)の生活費で財産を消費すれば、2次の納税額は軽減する

 もう1つ、違う相続法を考慮しよう。それは1次相続で母と子の3人が約6650万円ずつ均等に相続すると、納税額は1809万円。2次は260万円で計2069万円となる。法定相続の場合よりもさらに51万円の減税となる点も覚えておいてほしい。

 このように、相続とは世代をまたいだ財産分与である以上、先の相続も考慮した相続方法を熟慮すべきだろう。

 最後に、配偶者控除のメリットを最大限に活かすのであれば、1次相続で受け継いだ配偶者の財産を、相続させたい身内(恩人でも構わない)全員に毎年110万円までの非課税贈与すると良い。贈与対象者が多ければ多いほど節税効果が上がる。同時に、配偶者が長生きをすればするほど節税効果が上がるため、老後の幸せにも貢献することだろう。

 昔は、親子3代で家の財産は国へ還元されるといったが、現在はやりくりによって個々の財産を家族内で有効利用する道筋があるということだ。(記事:TO・記事一覧を見る

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