PPIHの成長の礎は創業者:安田氏の真逆の発想

2021年10月1日 08:03

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 パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(旧ドン・キホーテHD。PPIH、以下、パン・パシフィック)の過去10年間の平均営業増益率は13.7%。2021年6月期も「1.6%増収、7.8%営業増益、1円増配16円配」。今期も「9.4%の増収(1兆8700億円)、4.5%の営業増益(850億円)、0.5円増配16.5円配」で立ち上がった。

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 「コロナウイルス・インバウンド需要消失・天候不順」の影響に晒され(主力:ディスカウント事業は前期の既存店売上高9.7%減)という状況下でも、踏ん張りを見せている。前期の新規出店(13店)効果や新規参入の食品等の貢献もあるが、今後を展望する上で海外事業の軌道化が要因として指摘できる。創業以来の安田イズムが今日のパン・パシフィックを築いたと言って過言ではない。

 創業者:安田隆夫氏(現、創業者会長兼最高顧問)と、1度だけ取材をする機会を得たのは30年近く前。こんな遣り取りをした記憶が残っている。

Q: 何故、深夜営業のディスカウントショップを始めたのか。
A: コンビニは夜11時ごろまでやっていた。私がやっていた18坪程度の雑貨店(泥棒市場)も12時まで店を開けていた。ある時、12時をとうに過ぎていたのに客が入ってきた。「終わりです」と伝えると、「明かりがついていたので、やっているのかと思って」と。

 電気をつけて荷棚に翌日の商品を並べていた。だがハッと直感した。夜中でも客は来るのだ、と。そこでドン・キホーテの1号店は深夜営業にした。新聞の社会面で「うるさい」「近所迷惑」と叩かれた。が、その結果、ドン・キホーテの名が知れ渡ったことは事実。<<笑いながら正直に話してくれた>>

Q: ドン・キホーテが成功した要因をどう捉えているか。
A: 既に小売業は、群雄割拠の時代。先達と同じことをやっていたので勝てない。本部は、ある程度の方向性は打ち出す。だが実際の店舗運営は店長とスタッフの「肌感覚経営」に任せる。本部は現場の運営情報を「参考」として店舗にフィールドバックするだけ。うちは早い時期からPB商品と積極的に向き合ってきた。PB商品も現場感覚と仕入れ業者のアイディアで生まれるケースが多かった。結果的に仕入れ業者を味方につけられた。プラス要因になった。

<<ちなみに現在パン・パシフィックは約3900アイテムの商品を扱っているが、自社完結のPB商品でなく、顧客と一緒に作る「ピープルブランド(PB)」を標榜している>>

Q: 仕入れ業者への対応策は。
A: 若い起業家から、現金決済の導入を提言された。「中小零細業者には3カ月先の100万円より今日の90万円」に惹かれて導入した。仕入れ業者との絆が太くなった。ドン・キホーテの伸長には大きな要因になった。

 そんな安田氏が先頭に立つ、海外事業(ドン ドン ドンキ)が本格化し始めた。前期は台湾・マレーシア・シンガポール・香港に5店舗を開設している。同じ1949年生まれの老獪経営者のお手並みを、改めて確認させていただく。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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