トルコリラ相場がトレンド転換か 金利下げでもリラ保有がメリットになる場合も

2021年8月29日 16:31

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 対日本円のスワップポイントが高い外貨として、FXトレードでポートフォリオ要因に検討される通貨にトルコ・リラがある。トルコのエルドアン大統領による『7~8月に利下げを要求』するとの強い姿勢を受け、いよいよトルコ・リラ安が加速した6月だが、ここ3カ月は、1リラ/12.229円を底値に下げ止まりの相場展開を見せている。

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 トルコ・リラはこの7年ほど一貫した下降トレンドの相場展開で、明らかにインフレ経済を継続してきた。リラ/円の相場は2013年の1リラ56円台から、2020年の12円台まで一直線で下落している。つまり、7年間で5分の1近くまで下落している超インフレ通貨である。

 もちろん、トルコ中央銀行も金利を挙げてインフレ対策を進めてきた。2014年度には4.5%から10.0%へ大幅利上げを実施し、2018年度には8.0%から段階的に24.0%へと通常ではあり得ないほどの利上げを敢行した。

 だがこのトルコ中央銀行の乱暴な利上げ・利下げが、トルコリラの長期下落トレンドの要因となっている点が問題だ。トルコ中央銀行のリーマンショック対策による出過ぎた介入が、トルコの外貨準備高を大幅に目減りさせ、価値が下落するトルコリラを買い支えることが困難になっていた。

 エルドアン大統領の金融緩和要求は、中央銀行への不満をあらわにしたもので、利下げの意図は企業や消費者への資金支援である。つまり内需拡大で経済を安定化させる狙いだ。しかし経済アナリストは、インフレには利上げのセオリーを主張する。金融政策を担当する中央銀行もそのセオリーを全うする姿勢だ。新しいトルコ中央銀行総裁カブジオール氏は、この4カ月間を金利19.0%の高値で据え置きしている。

 このように、政府と中央銀行との金融政策のズレが不安材料ではあるが、ここにきてトルコリラは下げ止まりの相場展開を見せている。その要因はトルコ経済の底堅さ(GDPの成長率など)にあるだろう。トルコの国内総生産(GDP)はこの数年好調だ。2017年度は8511憶ドルとなり、1992年度の1585億ドルから5倍も経済成長をしている計算だ。この成長率は世界19位と目覚ましい。これは製造業の発展が主な要因で、かつて高度成長期で経済力を挙げていった当時の日本同様に、今後の経済成長が大いに期待できるのだ。

 つまり、トルコ経済は金融政策の調整次第で安定する公算が高いのだ。エルドアン大統領の要求が通るにせよ、中央銀行の金利維持が継続するにせよ、トルコリラの高金利は世界的に見ても目立つところ。各先進国の金利がゼロ%あたりで低迷している中、他国通貨との金利差は投資対象としては大いに旨味のある部分だ。日本の個人投資家でさえスワップポイント狙いのトルコリラ保有に意欲を示していることでも明らかだろう。

 ここでFXトレードの面から確認しておきたいのは、今後トルコ・リラの金利はどのポジションに設定されるかである。このまま通貨が横ばいか上昇トレンドに移行するなら、金利のポジション次第で、これまで同様に高いスワップポイント益が期待できる。

 これまでは高い金利で得たスワップポイント益に対し、保有するトルコ・リラの価値が目減りする傾向にあったため、両者は相殺されて実質的利益は目減りしてきた。しかし通貨価値が下げ止まれば、トルコ・リラ保持で得られる利益は安定的になり、仮に金利が下がっても長期的利益は大きなものになるだろう。

 例えば金利が10%まで下がったとしても、為替相場が横ばい、あるいは上昇トレンドならばスワップポイント狙いのリラ保有は大きなメリットだと言える。

 これまで通り、トルコリラ保有のスワップポイント狙いの投資方法は有効だろう。仮に25倍のハイレバレッジを効かせるなら、投資額600円で1万リラを購入できる。それで毎日40円台(2021年8月時点)のスワップポイントが付く。月額1200円と非常にハイリターンだ。

 ただし長期的な資産運用では、ハイリスク要因であるレバレッジを利用しないことが鉄則だ。13万円ほど資金を用意し、毎月1200円前後のスワップポイントを取りに行くのが得策だろう。これで予定利回り10%以上となり、ローリスク投資においては十分な利回りが期待できるだろう。もちろん投資は自己責任であるため、実際に投資する際には、慎重に検討をして欲しい。(記事:TO・記事一覧を見る

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