最低賃金の引上げ決定! コロナで苦境の飲食業も、懸案抱えるコンビニも・・

2021年7月16日 07:43

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 厚労相の諮問機関である中央最低賃金審議会は、14日の小委員会で21年度の最低賃金の目安を3.1%増の時給930円にすることを決めた。時間単価では全国平均で28円の引き上げとなる。

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 6月22日に始まった最低賃金を巡る議論は、コロナ過の経営悪化に苦しむ飲食業などに与える影響が大きいと懸念され、4月中旬には日本商工会議所などの3団体が、「現行水準の維持」を求める要望書をまとめていただけに、難航するものと見られていた。

 反面、新型コロナウイルスの感染が始まった20年度には、公益委員が目安の代わりに出した「現行水準の維持が適当」という見解に基づき、0.1%(1円)の引き上げに止まっていた。政府が18日に閣議で決定した「骨太の方針」にも、最低賃金を「より早期に全国平均1000円を目指す」と明記されていたことや、以前から欧米諸国と比較して見劣りが指摘されていたことなど、複雑な背景があった。

 最低賃金は、企業が労働者に支払う時給の下限という性格を有しているため、引き上げは所得格差の拡大を抑制する手法として、世界で重視され始めている。成長が見込めなくなった企業や業界の淘汰と再編を促進し、労働力の適正な配分を促す面を有していることも否めない。

 労働組合は大幅な引き上げを求め、現状維持を主張する経営側との歩み寄りは難しく、コロナ過の先行きに対する見通しを共有すること自体が困難だったが、流石に2年連続して「現行水準の維持」とする選択肢はなかった。

 今後は、今回決定された目安を基に都道府県の審議会が当該地域の最低賃金を決定し、10月を目途に地域別の最低賃金が適用される。現在1013円で最高額となっている東京は、1041円が目途になる。

 コロナ過が発生する以前に、人件費の負担問題で注目を集めていたのがコンビニだ。コンビニのフランチャイズ契約では、営業に欠かせないアルバイトやパートの賃金はオーナー負担となるため、今回の最低賃金の影響を計算すると(28円×24時間×365日)年間雇用で、1人当たり24万円程の負担増になる。雇用人数がストレートに負担金額のアップとして跳ね返るから、オーナーが頭を痛めていた問題は、より一層深刻になる。

 たまたま同時期に韓国でも最低賃金の見直しが行われ、1時間当たり5.1%増の9160ウォン(約881円)に決まった。労働側の要求が14.6%で、雇用者側の提案が1.5%だった。

 既に韓国でもコンビニオーナーは困難な事態を迎えており、アルバイトの労働時間を削減するために奮闘せざるを得ないオーナーが珍しくない状況だった。時間当たりで計算するとオーナーとアルバイトの所得が逆転してしまったケースもあるというから、コンビニオーナーに日韓格差はなさそうだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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