障害者の就労に関する一考察:上

2021年3月9日 10:38

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 昨年9月30日付けの企業・産業欄に、『世に有益な企業には株式市場も「エール」を送る!』と題する記事を投稿した。具体的には2017年3月に東証マザーズに上場した、ウェルビーを取り上げた記事だった。

【こちらも】 世に有益な企業には株式市場も「エール」を送る!

 ウェルビーは18歳以上65歳未満の、障害や難病を持つ人に対する就労支援を行っている。履歴書の書き方に始まり就労のための知識、職業訓練、求職活動支援を主業としている。改めてその収益動向・株価動向は読者諸氏にご確認いただくとして、有益性や需要の高さが反映されている。

 障害者雇用促進法では、一定割合の障害者の雇用率を定めている。その雇用率が今年3月1日から「民間企業2.3%、国や自治体2.6%」と、各0.1ポイントずつ引き上げられた。そんなタイミングに合わせるように、5日の読売新聞オンラインが『LCCのピーチ「ほなやろ課」の挑戦・・・障害持つ社員が特性生かして業務』と題する記事を配信した。

 「ほなやろ課」は18年9月に障害者雇用の受け皿として設立された。5日時点で課員総数は29人、うち障害者は24人。関西空港を拠点とする格安航空会社:ピーチ・アビエーションの障害者雇用率は既に、新基準2.3%を大きく上回る約3%に達している。その活動範囲は、「名刺の作成や給与・勤怠関連業務」「給油量の管理」「航空機の整備記録管理」と運航業務まで担う広範囲。

 妙に感動した。失礼ながら関空を拠点とするLCCの収益動向が、コロナウイルス禍を受け芳しいはずがない。だが障害者雇用で確たる実績を残している。改めて深堀した記事を書いてみたい。

 はなやろ課の課長は、黒木均氏。若干35歳。兄が重度障害者で就職の選択肢が限られていた。「兄」の存在があってか、自らは特別支援学校(学校教育法第72条で視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体障害者、または病弱者に対して、幼稚園・小学校・中学校または高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上または生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的としている、と定められている)で約10年間教諭を務めている。

 黒木氏は障害者のキャリア教育に関し講師役を委ねられることが多い。そんな時は客室乗務員が行う機内清掃にも参加するようになっていることなどを実例に、「掃除だけでなく、不審物の有無もチェックする。何かがあれば運航できず、責任問題になる」とまで言及するという。

 そして、こう発信している。「障害を理由に簡単な仕事しか任せないなどの行き過ぎた配慮は不要。障害者も必要なサポートは遠慮せず求め、苦手を克服する工夫も大事だ」。

 「ほなやろ課」の取り組みは、正直言って現状ではレアケース。が、障害者雇用を積極的に進めることは不可欠。「下」では取り組みを促すことを生業とする企業について記す。(記事:千葉明・記事一覧を見る

続きは: 障害者の就業に関する一考察:下

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