中国語のブラッシュアップに最適なTV番組「世紀大講堂」のオススメスピーチ

2021年2月17日 08:00

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王教授の講演風景(画像: Youtubeよりキャプチャ)

王教授の講演風景(画像: Youtubeよりキャプチャ)[写真拡大]

 現地留学や会話教室でせっかく中国語をマスターしても、「じゃあ、ペラペラだね。」と問われると、「いやー、それが…」と、自信のない返事しかできない人は、多いのではないだろうか。語学は習得しても、毎日コンスタンスに使わないと、どんどん忘れてしまう。

【こちらも】CCTVの中国語学習番組「万里海疆快楽行」で、楽しく効率的に中国語を学ぶ方法

 また、必死に勉強して語彙数を1千、2千に増やしても、ネイティブとスムーズな会話を成立させることは難しい。なぜなら、ネイティブは、1万~3万前後の語彙数を持つため、少なくとも5千前後の語彙数がないと聞き取れない単語だらけになってしまうからだ。日常会話レベルに達した後も、意識して様々なジャンルの語彙に触れ、ブラッシュアップを心がけることがとても大事なのだ。

 「世紀大講堂」は、中国語のブラッシュアップに最適な番組だ。香港に拠点を置く鳳凰テレビが毎週放映している番組で、中国社会や文化、経済など、多岐にわたるテーマにおいて、各界の著名人が約30分のスピーチを行う。講演者は高度な話術で、理路整然と説得力のあるスピーチを聞かせてくれる。

 「世紀大講堂」を使った中国語の学習方法及び2019年度に放送されたオススメのスピーチは、下記の記事で詳しく紹介している。

【参考】中国語の勉強に最適なTV番組、「世紀大講堂」のオススメスピーチと学習方法

■「世紀大講堂」2020年放映分でいち押しのスピーチ

 2020年に放送されたスピーチから、中国語ブラッシュアップに最適と思われるスピーチ及び、スピーチの概要やポイント、スピーチで出てきた重要な成語などを紹介する。また、スピーチの達人から学びたい構文やフレーズなども挙げてみた。

 「帝国的颜面ーー“日本人论”的名与实」2020年12月19 日

■講師

 王昇遠。復旦大学外文学院教授。中国日本文学研究会常務理事。日本関連の著書や訳書多数。

■講演のテーマ

 帝国のメンツーー「日本人論」の概念と真実

■講演の概要

 中国人は日本人に対して複雑な感情を抱いている。日本製品の品質は高く、魅力的な観光地がたくさんあるし、アニメやドラマも優れた作品が多い。しかし、侵略戦争の傷跡はまだ癒えず、凶暴で残忍、日本鬼子といったイメージを抱く人も多い。

 1946年にアメリカで出版された「菊と刀」は、日本人や日本文化を知るためのバイブルとして、現在でも世界中で読まれている。同著では、日本人の特徴を「武士道」「大和魂」「恥の文化」などといった言葉で説明し、中国を含め世界中の人々にステレオタイプな日本人観、固定観念を植え付けた。しかし、同著は真実に近い日本人像を描いているのであろうか。

■講演のポイント

 ・日本は明治維新で欧米列強の技術や文化を必死に模倣して富国強兵をはかった。こうした中、当時の知識人や文化人は、大変革時代に国民の心を1つにまとめ、社会を安定させるため、日本人にしかない唯一無二の美徳や道徳観念を意図的に造り上げた。このときに作られた「武士道」「大和魂」「恥の文化」といった美徳や道徳観念が、戦争・海外への勢力拡大の時代を経て喧伝され普遍化。

 ・「菊と刀」は軍人や戦争捕虜からのヒアリングをもとに執筆されたもので、一部の特殊な日本人の特徴しか反映されていない。

 ・戦後、多くの外国人研究者が日本人論を発表したが、海外からの研究者のほとんどは「日本国際交流基金」から研究費を受け取り、論文を発表しているため、出資者の意向を考慮した論説となっている。

 ・ほとんど全ての国は、「自国文化至上主義」「自国民族中心主義」的な傾向があり、その背景には、陶酔的なロマン主義あるいは国家主義の影響が認められる。

 ・日本人を論ずるとき、日本人をひとくくりにせず、立場や年代、地域の相違によるそれぞれの特徴を捉えることが大事。

 ・中国人は日本に対して複雑な感情を抱くが、日本人論を展開するときは、日本を敵視したり美化したりせず、フラットな目で見て論ずる必要がある。

■講演で使われた成語や四字熟語で、日常会話で良く耳にするもの

 ・彬彬有礼bīn bīn yǒu lǐ(礼儀正しく丁寧なさま)
 ・遵规守纪zūn guīshǒu jì (規則に従いルールを守る)
 ・清洁卫生qīng jiéwèi shēng(清潔で衛生的)
 ・团结一致tuán jié yī zhì(一致団結している)
 ・万众一心wàn zhòng yī xīn(全ての人が心を1つにする)
 ・独一无二dú yī wú èr(唯一無二である)
 ・与众不同yǔ zhòng bù tóng(ありふれたものではない)
 ・如火如荼rú huǒ rú tú(勢いが激しいさま)
 ・千丝万缕qiān sī wàn lǚ(物事が錯綜しているさま)

■参考にしたい構文や気の利いたフレーズ

 ・日本人「究竟」是一个什么样的民族,中国人印象中的日本是不是真实的日本。
 「究竟」:いったい・・・
 (日本人とは、いったいどのような民族なのか。中国人がイメージするのは真実の日本人なのだろうか。)

 ・我敢说在这个地球上,「没有」哪个国家「比」日本人「更」愿意讨论自己我们如何特殊。
 「没有A比B更C」:BよりもCというAはない。
 (地球上に、日本人ほど、自分たちが如何に特殊であるかを、言いたがる国はないでしょう。)

 ・强调一个基本的立场,看日本可以选取一个既不仰视它,也不俯视它,而是平视它的。
 「既不A、也不B、而是C」:AでもBでもなく、Cである。
 (私が強調したい基本的な立場は、日本を上に見たり下に見たりせず、フラットに見ることを選ぶということです。)

 ・「非」鬼「非」神回归人的状态。
 「非A非B」:AでもBでもなく
 (鬼でも神でもなく、人という状態に戻す)

 王教授は中国の人々に、日本人論を展開するときは、日本人を敵視するのでも美化するのでもなく、フラットに見ることが大切だと伝えている。日本人も、中国人や韓国人、イスラムの人々を見るときは、同様の姿勢が必要であろう。

 王教授のスピーチを聞いてハッとさせられた。意図的に造り上げられた日本人論に最も強く縛られているのは、日本人自身なのではないだろうか。日本人論に縛られタイトなルールで平均化をはかれば、閉塞感に押しつぶされ、自殺やいじめ・マイノリティ排斥が蔓延る現状を改善することは難しいかもしれない。(記事:薄井由・記事一覧を見る

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