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近畿大学の研究グループは、医療機関における新型コロナウイルス感染症の感染リスクを計算するシミュレーションモデルを構築した。このモデルで検討したところ、医療者がサージカルマスクとフェイスシールドを併用することで、感染リスクを99.9%削減されることがわかった。また感染者がサージカルマスクをつけた上で、換気を行うと感染リスクを99.99%下げることがわかった。
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このような感染リスクを測定できるモデルは、今後医療機関のみでなく、飲食業や介護などのように、人と人の距離が近い業種においても感染リスクを減らしていくために活用していけるだろう。
今回の研究は、近畿大学医学部の東賢一准教授らのグループによって行われ、国際雑誌「Environmental International」に3日、掲載された。
このモデルは、感染者(新型コロナウイルス患者)と非感染者(医療者)が60センチの距離で対応しているという状況を想定して作られている。感染経路としては、まず患者の咳や会話で生じた飛沫を吸い込む、直接粘膜に付着するなどの「飛沫感染」、飛沫がついたところを触った手で粘膜を触る、手に直接ついた飛沫を粘膜につけてしまうなどの「接触感染」、患者と同室時に咳や会話で生じた飛沫核(小さな飛沫)を吸い込んでしまう「空気感染」の3つを想定した。
それぞれの経路についてのリスクを計算すると、唾飛沫感染によるリスクが60~86%と高いことが明らかになった。続いて接触感染が9~32%だった。ただし患者の唾液中のウイルス濃度が高い場合には接触感染のリスクが上昇。接触感染については、手洗いの頻度が低いと感染リスクが上がることがわかった。
続いて、防御によってどのくらい感染リスクが下がるかを検討。医療者がサージカルマスクを装着することで63~64%低下、フェイスシールドを装着すると97~98%低下した。さらに、サージカルマスクとフェイスシールドを併用すると99.9%リスクを下げることができた。
逆に患者側からの防御はどの程度効果があるのだろうか。感染者がサージカルマスクを使用すると99.99%感染リスクを下げることができ、感染者がマスクをすることが重要だということが明らかになった。その時、室内の換気を1時間2回から1時間6回に増やすと、さらに感染リスクは半分になったという。
以上のシミュレーションにより、新型コロナウイルスの感染リスクを下げるためには、医療者も患者もしっかりとサージカルマスクを使用することや、医療者はフェイスシールドを装着することに効果があることが明らかになった。加えて、頻繁な換気が感染リスクを下げることも明らかになった。今後院内感染への対策などをはじめ、さまざまな感染対策において役立つことが期待できるだろう。(記事:室園美映子・記事一覧を見る)
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