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ヒトや動物にウイルスが感染するとき、ウイルスの持つ「スパイクタンパク質」が細胞の表面の受容体と結合して、それを足掛かりに細胞に入り込む。新型コロナウイルス(SARS-CoV2)のスパイクタンパク質は、ACE2受容体と結合することがこれまでの研究により明らかになっている。
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名古屋大学などの研究グループは、ACE2とは別のニューロピリン1(NRP1)という第2の受容体を新たに発見した。さらにNRP1が新型コロナウイルスのスパイクタンパク質と結合すると、感染力が強くなることが分かった。新型コロナ感染症の新たな治療薬の開発につながることが期待される。
本研究は名古屋大学大学院招聘准教授および英国ブリストル大学の准教授である山中洋平氏が率いる、ブリストル大学、オーストラリアのクイーンズランド大学、エストニアのタルトゥ大学、スイスのチューリッヒ大学からなる国際研究チームによって行われた。研究結果は13日付の「サイエンス」に掲載された。
研究チームは新型コロナウイルスと、2003年に小さな流行を引き起こしたコロナウイルス(SARS-CoV)の違いを検討した。どちらのウイルスのスパイクタンパク質もACE2受容体と結合して感染することがわかっている。しかし新型コロナウイルスだけが、細胞が持つNRP1という受容体と結合することが判明。さらにNRP1と結合するときに必要なCendRモチーフを作ることができるのも、新型コロナウイルスだけだった。
そこで、新型コロナウイルスの感染にNRP1がどのように影響するかを調べた。培養細胞に遺伝子導入し、ACE2のみ持つ細胞、ACE2とNRP1を持つ細胞、NRP1だけを持つ細胞などを作成。それらに対するウイルスの感染を調べたところ、NRP1だけでは感染できず、ACE2とNRP1両方が存在すると感染力が増大することがわかった。
さらに詳しく調べるために、NRP1とスパイクタンパク質の繋ぎ目となる分子Cend Rモチーフに結合する場所をモノクローナル抗体でブロックした。するとウイルスの感染力は低下することがわかった。またNRP1とスパイクタンパク質の結合部分を塞いでしまう物質を与えると、ウイルスの感染力が低下。これらより、スパイクタンパク質がACE 2と結合し、さらにNRP1とも結合することで感染力が増大することがわかった。
今後このNRP1とスパイクタンパク質の繋ぎ目となるCendRモチーフを阻害する物質を開発していけば、新型コロナウイルスの感染能力を下げられる抗ウイルス薬の候補として期待できる。そしてこの抗ウイルス作用は、新型コロナウイルス感染症だけでなく、他の感染力が強い新規のウイルス感染症に対応できる薬の開発につながることも期待される。(記事:室園美映子・記事一覧を見る)
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