日本酒で上場を標榜するクリアの百光(びゃっこう)の味

2020年11月10日 11:54

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「百光」(画像: Clearの発表資料より)

「百光」(画像: Clearの発表資料より)[写真拡大]

 昨今、ネットメディアの広告で「百光(びゃっこう)」という日本酒に出会う。日本酒単体のネット広告は珍しい。確かに百光は世界で認められた銘酒である。

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 2019年にロンドンで開催された世界的なワインの品評会「IWC」の「SAKE部門」で、1500銘柄の中から「ゴールドメダル」を受賞している。また同じ年にフランスで行われたトップソムリエや飲酒メディア関係者100名による審査会でも、「プラチナ賞」を受賞している。

 私が百光を知っているのは、日本酒ベンチャーのClear(クリア)を取材する機会を得たからである。創業者で社長の生駒龍史氏は、「日本酒で唯一の上場企業を目指す」と言い切っていると聞いた。かつクリアが、日経が選定するいわゆるNEXTユニコーンの1社だったことが取材の契機だった。

 生駒氏は「ネット通販を生業で」と歩み始めた25歳の折、大学時代の同級生で、酒蔵でもある酒屋の跡継ぎから「うちの酒もネットで売ってくれ」と懇願された。「日本酒は年寄りの酒」位にしか考えていなかったが、押し切られて一口喉を通した。生駒氏は「人生を変えた1盃」と振り返っている。

 2013年起業。まず「SAKETIMES(サケタイムズ:日本酒専門のwebメディア)」を立ち上げた。蔵元・杜氏を訪ね歩き取材。「注目銘柄」「当該酒のドラマ」「酒器や酒肴との楽しみ方」を配信した。

 私が取材した今春時点で累計3500銘柄超の情報が掲載され、月々50万人の閲覧者が訪れていた。こうした段階を経て16年に「SAKE100」を前面に押し出し「100年先に誇れる1本」をコンセプトに、独自開拓をベースにした高級日本酒ブランドサイトの運営に乗り出したのである。

 「1年から1年半に1本の割合で市場に送り出していく」とし、百光は既に当該銘柄(4本)の1本になっていた。山形県酒田市で200年近い歴史を持つ酒造元の逸品である。他は、「深豊(しんほう):石川県数馬酒造」「天彩(あまいろ):奈良県美吉酒造」「現外(げんがい):兵庫県沢の鶴酒造」。

 現外にはサケタイムズを介して知己を得ていた沢の鶴からの、「是非、飲んで欲しい酒があるから来て欲しい」という連絡を受けて出会った。聞くと、阪神淡路大震災で壊滅状態になった灘の酒造で奇跡的に残ったタンクの酒だという。20数年という歳月を費やして醸成された逸品。口に含んだ。甘味・辛み・酸味・旨味が絡み合った「完成度が高すぎる、よくぞ生き残っていてくれた。人智を超えた酒だった」と、生駒氏は振り返った。大震災から25年目となる今年1月17日に発売された。

 日本酒で上場を標榜するクリアをフォローし続けたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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