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川崎重工・C-1は、C-46などの老朽化と国内カーゴシステムの確立のため設計された。その外観を「ユーモラス」とMotor-Fan.jpは評しているが、きわめて合理的に考えられた結果である。荷物の積み下ろしが優先課題であるこの機体が、脚の取り付けが胴体の脇にバルジになっているのは、荷室がフラットになるように考えられているからであり、空気抵抗の面で不利になるのだが、ああいう形状になったのだ。
【前回は】国産初カーゴシステム、川崎重工・C-1ジェット輸送機 (3) 日本防衛の基礎「カーゴシステム」
またバランスを考えて、主翼は胴体の前部に肩を怒らせたような高翼配置になっており、荷室天井を下げないように付いている。これは旅客機と決定的に違う配置だ。輸送機は完全装備の兵士を乗せることはあるが、貨物輸送がやはり主であり、万が一着水した時には荷室が水没せずに浮いていられる時間は限られるが、兵士であれば対応時間が旅客とは違うため、その他の利便性を考慮して高翼配置となっている。
つまり、荷室の床面の高さをトラックの荷台に合わせ、荷物の取り扱いの容易さを優先しているのだ。さらに、空挺部隊の空中降下、装備の落下傘投下などが考慮されている。そのため、軍用輸送機へと旅客機を改装することは現代では考えにくいことだ。
アメリカ軍のC-5を開発したロッキード社は旅客機型を開発しようとしたが、C-5輸送機受注に失敗したボーイング社が急遽開発した低翼配置のB747に搭載量では勝っていても、高翼配置では旅客機型を諦めざるを得なかった。また、B747カーゴでは民間機用に整備され、フォークリフトなどの配備が進んでいる飛行場での使用であり、必ずしも後部扉の配置も必要がないのだった。
C-1は、当時のアメリカ軍のカーゴシステムに沿って開発されていた。その外観を見る時、日本人らしい繊細な線を感じることだろう。エンジンポッドの外形は単純な円筒ではなく、微妙なカーブを描いている。当時設計に関わった技術者からは、「空力(空気抵抗)」を考えて風洞実験を繰り返し、胴体などとの干渉を少なくするように形状を決めたと筆者は聞いている。
1970年に初飛行がニュースとなったC-1だが、その時の映像で印象に残っていることがある。日本国内の短距離戦術輸送であるため、当然に地方空港や整備されていない飛行場などの使用を考えて「STOL(短距離離着陸)」能力を求められていた。これは、戦略輸送ではなく戦術輸送であると、かなり重要な性能であった。そのため、「ファウラーフラップ」という出来る限りの空力的工夫があって、離着陸時の速度を下げる努力がなされていた。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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