ヘルケア型J-REIT、拡充への道

2020年10月22日 17:08

印刷

購入された札幌の物件の1つ(画像: ブリッジ・シー・キャピタルの発表資料より)

購入された札幌の物件の1つ(画像: ブリッジ・シー・キャピタルの発表資料より)[写真拡大]

 現時点でJ-REIT市場に上場する銘柄数は、66。このうち老人ホーム等の「介護施設」を不動産の一部として組み入れている、ないしは組み入れ意向を示している銘柄は、2。介護施設を組み入れ不動産の主軸としているのは、「ヘルスケア&メディカル投資法人」「大和ハウスリート投資法人」の2銘柄。

【こちらも】シノケンGが歩み始めたJ-REIT組成への道程

 高齢化社会の進行に備え2012年12月5日の閣議で「好循環実現のための経済対策」の一環として、「ヘルスケアリートの上場等を通じたヘルスケア施設向けの資金供給の推進」が決定された。「総論」決定がお得意の閣議決定は、前記したように実績の積み重ねを促すにつながっていないのが現実である。

 が、時間の経過を勘案した時に期待したい動きが認められることも事実である。例えば東京中央区に本社を構える不動産ファンド運用会社に、ブリッジ・シー・キャピタルがある。直近、札幌市内のいわゆる「サ・高住」を2物件購入した(価格は未発表)。外食大手ゼンシーHD傘下の輝(札幌市)が運営するサ高住75戸、そして札幌地盤の元気な介護グループ(6社で介護施設:29カ所、介護サービス拠点60カ所)が運営するサ高住85戸である。

 横田大造社長は「ともに稼働率は9割を超えて推移しており、立地やオペレーションの効率性から安定的な運用ができると判断した」し、「介護施設という不動産の所有を移転させ、修繕をプロに任せることで介護事業者は運営に専念できる」とそのメリットを強調している。

 実は今回の2物件は2号ファンドでの取得。同社は2020年3月にシンガポールの大手新聞社:シンガポール・プレスHDと共同で、日本の高齢者施設向けの専用ファンドを組成している。1号ファンドでは介護会社大手のHITOWAケアサービスやチャーム・ケア・コーポレーションなどが運営する、介護付き有料老人ホームを3物件取得している

 巷間伝えられるように、介護業界は厳しい経営状況に晒されている。「8割が収支トントンか赤字」という指摘もある。「収支力が見通せる」ことが大前提になろう。

 だが不動産ファンド運用会社の目で「いける」と判断され、購入がなされることで資金を得て修繕等の改善が行われ化粧直しがなされることで、運営者が経営に専念できる⇔収支力の向上が図られることは事実。

 横田氏は、「引き続き投資案件を選定中であり、高齢者施設不動産への投資は継続していく」としている。

 こうした形で高齢者施設への不動産ファンド運用が進んでいく先には、ヘルスケア型J-REITの充実が期待できるし、期待したい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事