米ファイザーらが開発中の新型コロナワクチン 健康な人への臨床試験に成功

2020年8月15日 13:07

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 世界中で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチンの開発が進められている。米製薬会社ファイザーと独BioNTechが共同開発している新型コロナワクチン「BNT162b1」の第I/II相臨床試験の結果に関する論文が、英科学誌Natureに12日付で掲載されている。

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■実施された第I/II相臨床試験
 ワクチンなど医薬品が国の関連機関から認可を受けるためには、健康な人を対象とした第I相、少数の患者用の第II相、多数の患者用の第III相という、3つの段階の臨床試験が実施される。ファイザーとBioNTechが開発した新型コロナワクチン候補は今回、第I相と第II相とを同時に行う第I/II相臨床試験が実施されている。

 ファイザーらが開発中のワクチンは、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンの1種だ。mRNAとして知られる遺伝子のコードに基づいており、新型コロナウイルスと接触した際に免疫反応を促進する。研究グループは、4種類のBNT162 RNAワクチンに対し非臨床試験と臨床試験を実施した。

 第I/II相臨床試験は、18歳から55歳までの健康な被験者45名に対して実施された。 プラセボ対照二重盲検比較試験により、10~30マイクログラムのワクチンないしダミーのワクチンが28日間で2回投与されたという。その結果、BNT162b1ワクチンを投与した人は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した人よりも、1.9~4.6倍もの中和抗体が産生していた。

■2020年末までに1000万回投与可能に
 研究グループによると、4種類のワクチン候補のうちBNT 162b2ワクチンはBNT 162b1よりも効果が高かった。発熱や悪寒などの反応が数日確認されたものの、重篤な問題はなかったという。

 今後は、効果の高かったBNT 162b2ワクチンに対し第II/III相臨床試験が実施される。7月末に同臨床試験の認可を受け、18歳から85歳までの3万人の被験者に対し実施されるという。

 研究グループによると、2020年末まで1,000万回分、2021年末には12億回分以上のワクチンが製造可能になるという。開発されたワクチンは中国を除く国に配布される予定だとしている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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