心不全の拡張不全に作用する超音波治療法を開発 世界初 早期応用に期待 東北大

2020年7月27日 12:08

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慢性心不全の拡張不全に対する超音波治療の作用機序(画像: 東北大学の発表より)

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 東北大学医学系研究科の下川宏明客員教授らの研究グループが、超音波を使い、心臓の硬直化によって血液を取り込む能力が低下する慢性心不全の拡張不全(HFpEF)に効果的な治療法を、世界で初めて開発したと発表した。薬物治療を中心に手掛ける従来の心不全治療と一線を画す革新的な治療法で、薬物投与に伴う副作用の低減を図る。患者を対象とした医療現場の早期応用が期待される。

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 超音波は、空気の振動サイクルが早すぎて人間の耳では聴こえない音を指す。光のように直進したり、衝突する物質によって通り抜けたりする性質があり、それらの性質を応用して治療効果をあげているのが、超音波治療だ。

 超音波治療は通常、超音波が人体を活性化させるメカニズムを活用し、治癒を図る。例えば、機械的振動で人工的に作られた超音波を腕や脚などにあてると、皮膚裏にある軟部組織が加温され、活性化する。加えて、靭帯や腱といった結合組織にも超音波エネルギーが吸収され、熱エネルギーへ変換される温熱効果が発生する。

 それらの細胞活性化や温熱効果は、さらに、血流を良くする血管拡張効果やマッサージ効果を生み出す。超音波治療は生体に対して直接的な治癒効果を発揮することから、肩こりや骨折、捻挫といった整形外科の分野で活用されている。

 他方、拡張不全は心臓の左室収縮力が保ているにもかかわらず、体組織の代謝に見合う血液を供給できない心不全症状の病態を意味する。心不全の患者全体のうち、3~6割に当たる症例とされる。高齢の女性に多く見られ、病態が進行すると高血圧症や心筋症、不整脈と言った症状が現れる。

 心不全患者の相当数を占めている一方、左室収縮力が低下する収縮不全と違い、明確な改善効果のある薬剤が開発されていないのが実情。拡張不全を引き起こし、病態形成に寄与しているとされるレニンーアンジオテンシンーアルドステロン(RAA)系の阻害薬においても、投与後の改善効果を証明できずにいる。

 そんな中、研究グループは今回、超音波治療の効能のうち血管拡張効果に着目し、HFpEFの治療法開発に生かすことにした。実験は、狭心症や心筋梗塞と言った虚血性心疾患において、超音波治療が血管内皮細胞の受容体を刺激し、既存の血管から新たな血管を作る血管新生を引き起こすことを証明した過去の研究を発展させる形で実施。

 実験研究は、人間の可聴域を超える20kHz以上の低出力パルス波超音波を、被験体のマウスにあてた。すると、超音波をあてた動物は、そうでない動物に比べ、左室拡張能の改善や、心不全の診断指標となるホルモン「BNP」の低下、心筋の肥大・繊維化の低減といった効果が見られたという。

 研究グループは、「超音波治療は未だ有効な治療法が確立されていないHFpEF患者に対し、有効な治療法となる」と論じた。

 本研究は、日本学術振興会科研費を使って実施。研究成果は、7月19日付で欧州心臓学科の学会誌であるCardiovascularResearch誌にオンライン掲載された。(記事:小村海・記事一覧を見る

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