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今回の研究の概要。(画像: 東北大学の発表資料より)[写真拡大]
ヒトの健康や寿命について研究する上でモデルとなる動物として、線虫が近年注目されている。研究の1つとして、食事の量と寿命との関係について、線虫を用いた分子生物学的な研究が行われている。東北大学の研究グループは7日、線虫において、摂食量が減ることで短命化する傾向が発見されたと発表した。この発見は、過度な食事制限が寿命を縮めかねないことを示唆するものである。
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線虫は、通常は餌を接触することが困難な高粘性環境においても、広く分布する動物である。一般的な動物の摂食量は、周囲の粘性などの環境要因に左右される。だが線虫はその緻密な口部構造を用いて餌の濃縮を行い効率的に接触するため、必ずしも摂食量と環境要因は相関がない。このような背景もあり、線虫の摂食過少と寿命や生存率の関係は重要な情報であるにもかかわらず、これまで明らかにされてこなかった。
そこで東北大学の研究グループは力学的解析の手法を用いて、周囲の環境の粘性に拠らない線虫の摂食量と生存率の関係を明らかにした。線虫を様々な粘性環境に置き、複数の測定手法で餌摂取量の定量計測を実施。その結果、線虫の周囲の粘性環境と摂食量、生存率とは必ずしも相関があるわけではないことが判明した。その一方で摂食量と生存率との間には普遍的な関係があることが示されたのである。
今回の研究成果は、生物の普遍的な基本原理を知るための優れた実験系である線虫によるものであるため、ヒトにも応用可能な可能性がある。つまり、ヒトの場合でもエネルギー摂取が過少である場合には、健康や寿命の観点から悪影響が出る可能性が示唆されたということである。
近年では外見上の理由や肥満による疾病予防の観点から、摂取量を制限しようとする人は一定数存在する。中には過度なカロリー制限を自らに課す人もいる。今回の成果はそんな風潮に一石を投じ、摂食と健康との関係性についての理解を深めるための一歩となることが期待される。
本研究の成果は6月25日付の「Journal of Experimental Biology」誌のオンライン版に掲載されている。
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