ソフトバンクGと孫会長の天国と地獄 (13) 借入金の投資で、確実に儲かるのは「金主」!

2020年6月19日 06:55

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 ソフトバンク・ヴィジョン・ファンド(SVF)の、出資者の顔ぶれを眺めていて感じる違和感は何だろう。

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 出資者は概ね3つのグループに分けられる。最大の出資者がサウジアラビア(出資額450億ドル)の「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」と、アブダビ首長国(150億ドル)の「ムバダラ・インベストメント・カンパニー」という政府系ファンド(サウジ・アブダビファンド)で、合計金額は過半に近い約4.8兆円に及ぶ。

 次がファンドの勧進元であるソフトバンクグループ(SBG)で3.5兆円だ。この2者合計で約8.3兆円になり10兆円ファンド(実際は約10.5兆円)のシェアは79%になる。

 残りは日本の3大キャリアの一角を占めるソフトバンク(SB)の取引先であるアップル、シャープ、鴻海精密工業、クアルコムというスマホメーカーや、スマホ関連の大手部品メーカーと、日本の金融機関グループで、合計額が約2.2兆円でシェアは21%だ。

 どうしても拭えない違和感は、約4.8兆円を出資するサウジ・アブダビファンドに起因する。

 投資資金を借入金で賄うことは、通常あり得ない。借入金が必要になるのは自己資金が払底してしまい、追い詰められているというイメージが連動する。そんな状態であれば、借入金額に見合う有力な担保物件を用意出来ずに頓挫するのが一般的だ。

 金融機関が重視する”資金使途”としても、投資資金は据わりが悪い。博打のような行為に出資する稟議書を、うまくまとめる銀行員は貴重な存在だ。

 融資には金利が付きものであることも、投資と馴染まない大きな理由だ。

 投資対象が思惑を外れて元本割れを起こしてしまい塩漬けを決め込むにしても、期日になると支払いを求められる金利の負担は重い、等々の理由が重なり借入で投資を行うケースは稀だ。

 サウジ・アブダビファンドの出資金には7%の確定利回りが約束されている。一般的に、金利の支払いを約定して、金員の提供を受けることを”借入”という。SBGがサウジ・アブダビファンドから借入をしたことになる。

 アリババという莫大な含み益を抱えたSBGの資産背景を考えると、無粋に担保を求める必要は感じなかっただろうが、出資金に元本保証の約定が付されていることも、借入金という性格を補強するものだ。SBGは何があっても”びた一文値切りません”と宣言したことになる。

 ところが、この疑似借入行為には”期限の利益”の存在が語られていない。期限の利益とは、借入人が約定を履行する繰上げ返済を求められることはない、という借入人を保護するためのキモになる規定だ。

 通常ベンチャーキャピタルは運用期間に10年程度を見込んでいる。期限の利益が担保されていなければ、出資者の気ままな心変わりで求められる返還要求に対抗することが出来ない。ましてや、国家機関に準ずるファンドが相手となると国際問題にもなりかねないから、返還要求に抵抗することなどは不可能だ。

 どう見ても、条件の精査が行われないまま、目をつぶるようにして遮二無二仕上げた出資契約のように見えてしまう。サウジアラビアが参加したという箔を付けて10兆円ファンドを成立させるため、なりふり構っていられなかったのだろうか。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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