ガン治療でのナノ粒子のステルス性を向上 治療技術に期待 京大の研究

2020年6月2日 17:04

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ポリグリセロールで被覆したナノ粒⼦の⾎液中でのイメージ(画像: 京都大学の発表より)

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 極小サイズのマシン、ナノ粒子を使ったナノ医療。体内の有害物質に対してピンポイントかつ効果的に作用するだけでなく、副作用も少ないことから研究が進んでいる最先端分野であり、国内では特に不治の病とされるガン治療で進展している。

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 京都大学らの研究グループは1日、このナノ粒子を使ったガン治療において、粒子の表面装飾にポリグリセロールという高分子を使ったところ、マクロファージなどヒトの免疫系に見つからない免疫応答回避(ステルス)機能が向上したとの研究成果を発表した。ステルス機能の向上は、ナノ粒子に包まれる抗ガン剤を、目標となる臓器や器官に効率良く届ける確率を高められることを意味し、さらなる治療技術の向上に期待がかかる。

 ナノ粒子は、大きさがナノメートル(10億分の1)サイズの超微粒子だ。MRI(核磁気共鳴画像法)や、体内で薬が効果を発揮するよう計算して投与するドラッグ・デリバリー・システム(DDS)といった医療分野への応用が、急速に進む。

 一方、血中に投与したナノ粒子が、肝臓や膵臓など生体防御に関わる細胞内で白血球やその一種のマクロファージに捕らえられたり、表面材料が原因でアレルギー反応が起こったりすることが課題となっている。
 
 それらの問題は、ガン治療においても顕著。マクロファージによる捕食や免疫応答反応が回避されると考えられてきた、ポリエチレングリコール(PEG)と呼ばれる高分子で表面を覆ったナノ粒子でも、「ステルス性の著しい低下や過剰免疫応答などの問題が指摘されてきた」(京都大)という。事実、ステルス性については、生体内に導入したナノ粒子のうち、腫瘍(ガン)に到達した割合の中央値が0.7%という調査結果があり、ナノ医療研究の先行きを懸念する見方もある。

 そこで京都大は、ポリグリセロール(PG)という高分子を使い、新たな可能性を模索することにした。実験研究では、PGで被覆したナノ粒子と、PEGで被覆したナノ粒子について、タンパク質の表面吸着の有無とマクロファージの捕食の2点から、ステルス機能の比較検討を行った。

 その結果、PEGで被膜したナノ粒子は、多くのタンパク質が表面に吸着し、マクロファージによる捕食が確認されたのに対し、PGで被膜したナノ粒子は、タンパク質の表面吸着とマクロファージによる捕食はほとんど見られなかった。これらの結果を踏まえ研究グループは、「PGで被膜したナノ粒子は、ステルス機能の大きな向上が見込まれ、ガン組織への薬物送達効率が上がり、ガン治療効果も格段に良くなる」と論じた。

 さらに研究グループは、抗ガン剤を固定したナノ粒子に代わり、磁性や蛍光性ナノ粒子を用いることで、MRや光でガンを造影することも可能になると言及。ガンの検出や診断といった領域でも、パラダイムシフトの創出が可能になるという。今後はマウスなどの動物実験を行い、総合的な技術発展を目指す。(記事:小村海・記事一覧を見る

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