有機蓄電池の実用化につながる「導電性リレー機構」を考案 東北大

2020年5月19日 07:31

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有機分子材料表面での電荷移動を用いた導電性電極と充放電反応の導電性リレー機構の模式図。(画像: 東北大学の発表資料より)

有機分子材料表面での電荷移動を用いた導電性電極と充放電反応の導電性リレー機構の模式図。(画像: 東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 リチウムイオン電池をはじめとする蓄電池は、さらなる高性能化が求められている。蓄電池の電極材料としては、低環境負荷かつ軽量で多彩な材料設計が可能な、有機材料が期待されている。東北大学の研究グループは18日、有機材料を用いた蓄電池を高性能化することにより、実用化につながる技術を開発したと発表した。

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 有機材料を用いた電極は、従来の金属酸化物からなる電極よりも軽い元素で構成されるため、重量当たりのエネルギー密度が高くなる。したがって、より軽量性が求められる用途の蓄電池において、その応用が期待されてきた。

 だが有機材料の多くは絶縁性を示すため、電極として用いるには導電助剤を大量に混ぜる必要があり、実質的にはエネルギー密度が上がりにくく蓄電池への応用の課題となっていた。

 また、比較的導電性の高いポリマー材料や有機ラジカル塩なども知られてはいるが、いずれも実用化への課題は多い。分子量の大きい導電性ポリマーは、合成が複雑であり材料設計において制限が問題とされてきた。一方で有機ラジカル塩などの低分子系の材料は、多彩な材料設計がしやすいが充電状態によって導電性が変化するため、スムーズな充放電が行いにくい。

 そこで研究グループは、複数の低分子系有機材料を混ぜることで、電極の導電性を保つアプローチを試みた。今回の研究で用いられたのは、テトラチアフルバレンとテトラシアノキノジメタンと呼ばれる低分子有機材料である。

 これらの材料は単独であれば充電状態によっては導電性が低くなるが、両者の組み合わせによってそれを互いに補うことが可能となった。研究グループはこの効果を「導電性リレー機構」と呼んでいる。

 これらの材料を用いて作製された蓄電池は、充放電時間が10分程度の高速充放電が繰り返し可能であることが示された。また、電極材料自体の導電性が金属に匹敵する高さであるため、導電助剤を加える必要もない。今回の成果は有機蓄電池のさらなる高性能化につながることが期待される。

 本研究の成果は15日付の「ACS Applied Materials & Interfaces」誌オンライン版に掲載されている。

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