鳥居薬品の株価が見せた、急伸への素朴な疑問

2020年5月13日 17:10

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 断るまでもないが、「株価は買い方が勝ると上がり、売り方が勝ると下がる」のが原則。が、買い方が勝る需給動向の決まり方は一様ではない。諸々のサプライズがその背景となる。「収益の上方修正(上振れ)」などもその一つ。

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 昨年4月22日に2062円(昨年来安値)だった企業の株価が、1月29日時点で3845円(同高値)をつけた。86%の急伸である。本校作成中の時価は3000円出入りと調整中。企業名は、鳥居薬品。1872年というから1世紀半近く前に故鳥居徳兵衛氏によって、横浜市に設立された「洋薬輸入商:植野屋」がその前身。

 創業148年目となる中で鳥居薬品にとり最大のエポックメイキングとなった出来事は、1998年12月の日本たばこ産業(JT)による53.4%の株式取得「実質上の傘下入り」だったといえる。以来、「研究開発:JT」「製販:鳥居」体制で今日を迎えているが、前2019年12月期の決算はまさに「ビックリ仰天」という以外に言葉を知らない。

 18年12月期の「2.5%減収、21.2%営業減益」に対し前期は、「39.2%の減収、32億円の営業損失」と一段の下落計画でスタートした。それが1-6月期開示と同時に「34.8%の減収、7億円の営業損失」に。また1-9月期開示と並行し「31.7%の減収、7億円の営業利益」へ。そして年度末決算(2月6日)では「31.3%の減収、14億3000万円の営業利益」と、時間の経過とともに急変していった。

 そして2月6日には今期計画を「3.3%の減収、109.7%の営業増益(30億円)」とした。上方修正、今期計画にとやかく言うつもりはない。が、前期決算を読み込んでいくと、「なんとも足元/収益環境を読み切れない企業」の誹りが免れないという気を強くする。例えばこんな点である。

 *売り上げ減の大きな要因は19年1月の「抗HIV薬6品の販売権返還」によるものだが、返還に係る譲渡益406億1400万円が特利として入ってくることは計算しえたはず。

 *売上高減少により売上原価が111億4100万円減少し、販管費が減少すること。逆に中計でも掲げている「適正人員体制」整備のために実施した「割増退職金制度」も、「推定通りの応募で上回る特損計上はなかった」としている以上人件費減は想定できたはず。

 *今期の大幅営業増益に関してもアナリストの間には「JAK阻害剤(関節炎・リウマチ治療薬)やスギ花粉舌下錠への期待と、人員削減の通年寄与だけでは、説得力に乏しい」とする見方が強い。

 前期の営利改善基調+「今期110%近い営利増」なら株価も早々に整理場面を脱し切り返し入りしても不思議ではないが、アナリストの見方:IFIS目標平均株価は「時価」を「やや割安」と評価し3200円水準にとどまっている。

 急伸株価も、よくよく中味を検討する必要がある。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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